30 強かな高峰生徒会長
生徒総会当日。
ゆいは生徒たちが体育館に入ってきている様子を、舞台裏から覗いていた。
生徒たちはゆいと藤堂が作成した資料を片手に持ち、ぺらぺらと中をみていた。
「みんな資料見てくれてる……」
ゆいは自分が話す機会はないので、選挙演説のときほどは緊張していなかった。
「——これは一体どういうことですか?!」
突如、長い黒髪を左右に大きく振って女子生徒が舞台に上がってきた。
「に、二階先輩?」
二階はゆいたちが作った資料を強く握りしめ、高峰を睨みつけた。
「校則の変更って、一体どういうこと?」
迫る二階に、高峰は動じることなく舞台裏へ誘導した。
「見ての通りだよ、二階さん。さあ、もうすぐ生徒総会が始まるから、自分の席に戻ろう?」
そうあしらう高峰を、二階は再びキッと睨んだ。
「ここに挙がってる変更する校則一覧、ほとんど衛藤が破ってるものじゃない! この校則がなくなれば、衛藤は校則破りをしてないから、副会長に戻っても問題がないとでも言いたいの?」
「どういうことかな、二階さん。マサキは戻るも何も、いまでも副会長だけど?」
高峰は目を細めて薄く笑っていた。
ゆいにはそれが張り付けたように冷たく見えて、ぞっとした。
開会間近の騒ぎに、舞台裏では不穏な空気が流れた。
「……どういうこと? マサキを罷免したんじゃないの?」
「僕はそう言ってみただけだよ。話したでしょう? 本当に罷免したわけじゃない」
高峰はまっすぐな黒い前髪の間から、瞳だけを二階に向けていた。
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ゆいは呆然とした二階を舞台裏にあった椅子に座らせ、自分の持ち場へと向かった。
生徒総会はつつがなく進行していた。
高峰は何事もなかったかのように、ゆいが初めて見たときと同じ落ち着きで、生徒に校則の変更を訴えていた。話しているなかで、緩急をつけたり声色を変えたりし、生徒たちを自分の話に惹きつけていた。
以前までのゆいならば、そんな高峰に魅入っていたが、今ではとても冷静に彼を見ている、とゆいは気づいた。むしろ、粗暴ではありながらも素直である本当の高峰のほうが、近くにいて心地よいとさえ思った。
——ガラガラガラ
不意に体育館の入り口の扉が開いて、一人の生徒が入ってきた。
光を浴びた金髪がきらきらと光って、存在感を際立たせていた。
「異議あり!」
金髪の男子生徒がそう叫ぶと、全校生徒が後ろを向き、彼に注目した。
「ま、マサキ先輩……!」
金髪の男子生徒は大股で舞台まで歩き、片手を舞台に乗せ、ひょいと身軽に登った。
その異様な姿に、生徒たちはどよめき始めた。
「質疑応答はこの後の時間にお願いします」
高峰がマサキにそう言うと、マサキは高峰が持つマイクを奪い、全校生徒の前にでた。
「いくら厳しくても、校則はあるべきだ。校則の変更はすべきではない!」
改造した制服を身にまとい、金髪をなびかせる彼は、誰がどう見ても校則違反者であり、彼の発言との矛盾に、全校生徒はいっそうざわめいた。




