28 よくわかっていない高峰
ゆいと藤堂は生徒会室で高峰からの指導を受け、生徒総会に向けた資料作りに励んでいた。
ゆいは不慣れなパソコン操作に悪戦苦闘していたが、藤堂は手際よく作業を進めていた。
「藤堂くん、パソコン得意なんだね。すごいな……」
「得意、というわけではない。特に文書を作ることも初めて」
ゆいは藤堂の器用さに羨望のまなざしを向けた。
藤堂は思い出したように高峰に訊ねた。
「そういえば、二階先輩には衛藤先輩のこと、もうお話したんですか?」
「ああ、ばっちり。見事に騙されやがったぞ」
高峰は悪人面で高笑いした。
「だ、騙したって……?」
「『マサキに罷免を言い渡した』って言ってやったんだよ。もうあいつは生徒会に来ない、ともな。そしたら二階のヤツ、笑ってやがったぞ。気味わりぃな」
ゆいには、高峰が何を騙したのかがわからなかった。
「え、何も騙してなくないですか?」
「俺はたしかにマサキに罷免を『言い渡した』が、『した』わけじゃねぇ。いまんとこ、マサキは罷免すると俺に言われただけで、まだ副会長なんだよ。罷免するにも、教師に伝えねぇと認められないからな」
「ということは……二階先輩はマサキ先輩が罷免されたと勘違いしているってことですか?」
「ああ。これでしばらくアイツも大人しくしてるだろ」
高峰はくつくつと笑った。ゆいは眉をひそめた。
「高峰先輩は、本物の先輩のもつ腹黒さを引き継いだまま、あの呪われた生徒会長の姿で二階先輩を欺いたのですか?」
藤堂は興味深そうに訊いた。
「まあ、そうなるな」
「面従腹背、ですね。外では優等生だからこそ、成せる技です」
藤堂は感心したように、黒目を見開いていた。
「……お前、結構ズバズバ言うよな」
「ちなみに、高峰サンは二階さんのことご存知でしたか?」
ゆいは二階から口止めされているので、悟られぬようにそっと探りを入れてみた。
「まあな。一年のとき、俺とマサキは二階と同じクラスだったからな」
高峰は特に気にする様子もなく話していた。元クラスメイトが元クラスメイトを不信任にしたり、辞めさせるように仕向けたりしているというのに、ひどくドライだ、とゆいは思った。
「……どうして二階先輩はマサキ先輩を辞めさせようとしたんですかね?」
ゆいは敢えて訊いてみた。すると、高峰はきょとんとした。
「どうしてったって、マサキが気に食わなかったんだろ? ヤンキーみたいな見てくれが。あいつ、一年の時から何かとマサキにちょっかいだしてたからな。いい口実ができたってとこじゃねぇの? ああ、それにあいつ、俺のことも嫌いっぽいしな! 俺のせいでマサキがおかしくなったとか言ってたからな。まあ、間違いでもねぇけど」
ふははと笑う高峰に、ゆいは高峰が鈍感なひとだと思った。そして、ゆいは二階を少し気の毒に思った。
「高峰サン……」




