2 予想外の告白
新学期、初めて袖を通した制服はまだ硬くて、ゆいは心身ともに居心地の悪さを感じていた。
初めてのホームルームの時間は自己紹介から始まり、ゆいから始まった。
「哀川ゆい、です。えっと……」
クラスメイトの視線が集まり、ゆいの膝はゆれていた。
「あの……」
ゆいは何を話そうか考えていたわけではないけれど、頭のなかのものがぶっとんだ気がした。しかし、何かを言わなければ、と言葉を必死に探した。
「あの、入学式で会長に一目惚れしました! 会長がすごくかっこよかったです!!」
やってしまった——
クラス中がざわざわとして、クラスメイトがゆいを見る目は完全に正常なものではなかった。
ゆいはあがり症なところがあり、緊張してしまうと、思っていることをぺらぺらと話してしまう癖がある。これはゆいの大きな悩みである。
ゆいは後に引くことも、当然、押すこともできずに突っ立っていた。
「うわ、最初からすごいキャラをぶちかましたな! 生徒会長って、たしかモテるってきいたけど、がんばれ!」
隣の席の男の子が机をたたいて大笑いしていた。
「えと、その、そんなつもりはなかったのですが……」
ゆいは恥ずかしさでおかしくなりそうだったが、なんとか自己紹介を終えた。
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入学してから一か月が過ぎた。
もう高校生活が終わってしまったとゆいは覚悟をしていた。けれど、初日からアブナイ人だったゆいは、なんとかクラスに馴染むことができた。
「そういえばさ、ゆいが初日に『好き宣言』した生徒会長さん、すごくモテるらしいね」
「『好き宣言』だなんてやめてよー。もうあれは過去の話なんだから……」
ゆいは紅潮する頬をセーターの袖でぐっと隠した。
「で、ゆいはどうするの?」
ゆいの友達、サラはゆいの耳元で悪戯っぽくきいた。
「どうって、どういうこと?」
「ふふふ、ゆいは会長と同じ生徒会に立候補しないの?」
「り、立候補ぉ??」
驚いて大きな声を出してしまったゆいに、クラスメイト数名が寄ってきた。
「なに? ゆい、立候補するの? 会長さんを追いかけて?」
「書記の役職は一年生でも立候補できるらしいね」
「わ、私は立候補なんてできないよ。緊張しいだし、人前に出るなんてムリ」
ゆいは両手をぶんぶんと降って否定する。