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1 プロローグ 生徒会長はモテる
春、桜が満開の入学式で哀川ゆいは生徒会長に恋をしてしまった。
これが噂に聞いた一目惚れかもしれない、とゆいは思った。
春の心地よい風が生徒会長の黒い前髪をさらさらと揺らしていた。
背筋を伸ばし、堂々と祝辞を述べる生徒会長の声が、ゆいの胸の奥まで響いてきた。
その振動に、ゆいの心まで揺さぶられてしまっていた。
——けれど、小さな恋の芽が咲くことはないのだろう、とゆいは思った。
ゆいは入学した後に知った。
ゆいが恋に落ちたその相手、生徒会長はモテるらしい……