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木春菊  作者: 檸檬
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しろとくろ

うさぎと入れ替わった卯月そら、卯月そらと入れ替わったうさぎはどうなるのか。

 うさぎの卯月そらは、もとの卯月そらの記憶をたどって家に帰りました。

 帰ってただいまというよりも早く、

「そら!どこに行っていたんだ!たった今この国の王子がそらを探していたというのに!」

 と、父親に怒鳴られました。"うさぎ"はただ謝ることしかできませんでした。

「はあ。もういい。お前は部屋に閉じこもってろ」

 "うさぎ"はそれに従い部屋に入りました。何故か本能的に逆らってはいけないと判断したのです。愛されている気がしない、うさぎの頃は愛されていたのに。そう思いました。

 しばらくして、ドアがノックされました。うさぎはどうぞ、と言いました。入ってきたのは女の人でした。一人は緑の着物を着た若い女性。もう一人は、銀髪の少し歳をとった女性でした。

「はじめまして、そらさん。私は王室の召使いの、和歌子わかこです。王子が是非お城へ来てほしいとのことで、お迎えに来ました。」

「そら?こんなチャンスはもうないわよ?行ってきなさいよ〜」

 銀髪の女性は猫撫で声で、言いました。

 うさぎは人の気持ちにとても敏感です。"うさぎ"はとてつもない嫌悪感に襲われました。この銀髪の女性は信用できないと思ったのです。

「そらさん?どうなさいますか?」

 和歌子がもう一度聞き返してきたので"うさぎ"は首を縦に振りました。少しもこの家にいたくありませんでした。

 お城はものすごく豪華で、"うさぎ"はとても驚きました。シャンデリアに、赤いカーペット、大きな階段…"うさぎ"の他にもたくさんの女の子がいました。

 階段の上の方に赤い豪華な服を着た男の子がいました。きっと王子様なのでしょう。王子の名前はシロトと言いました。兄がいたようですが、10歳になった頃にいなくなってしまい、次男であるにもかかわらず王室を継ぐことになったことを伝えました。

 王子様は、この中で一番優しくて、気配りのできる女の子と結婚したいと言いました。そのために、一ヵ月ほど、城で暮らしてもらうと言い、女の子それぞれに部屋と召使いを一人与えました。

 "うさぎ"はというと和歌子が召使いとして身の回りの世話をしてくれることになり、内心ほっとしていました。ですが、和歌子もメイド、普段の仕事に加え"うさぎ"の世話もしなくてはならないので大変そうだなと"うさぎ"は思いました。

 その時、メイド長が女の子、メイド全員の集合をかけました。メイド長の名前は樹音じゅねと言いました。

「皆さん、ようこそおいでなさいました。私はメイド長の樹音でございます。メイドたるもの常に完璧である必要があります。奥様になるもの夫に忠誠を誓い、夫に尽くすものです。この中からシロト様の奥様にふさわしくなれるように、メイド一同一丸となって、お支えいたします」

 そういうとメイド長はすぐに全員に仕事内容の書かれた紙を渡し帰っていきました。"うさぎ"がもらった紙には「中庭の手入れ」と書かれていました。

 中庭には白い花弁の花が花壇に植えられていました。


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 その頃、卯月そらはというと、うさぎたちと遊んで居ました。

「ねえねえ、黒うさぎさん。あなたなんて言うの?」

 と、一羽の黒いうさぎに話しかけていました。そのうさぎはクロトと言いました。クロトはそらに言いました。

「お前はあくまで、人間だ。うさぎじゃない。そのことを忘れるな」

 少し怒っているような、悲しんでいるような言い方でした。

「ごめんね、クロト。私の身勝手なお願いをしてしまって。でも、もう帰りたくないの。怖いの」

 そう怯えたように話すそらにクロトは何も言えませんでした。

 それからクロトは他のうさぎたちと話し合いました。話し合って話し合って話し合った結果、そらを暖かく迎え入れようと決めました。

 かつて、クロトがそうしてもらったように。

 そらは、たくさんのうさぎたちと遊び始めました。シロ、黄色、ピンク、ベージュ…様々な色のうさぎがいました。皆そらに良くしてくれました。

 ただ一羽、真っ白なうさぎを除いては。その一羽は他のうさぎからも嫌われているようでした。

 そらは近づいていき、話しかけました。

「どうかしたの?大丈夫?」

 白いうさぎは答えません。

「ねぇってば〜」

 うさぎは自分の名前は忘れた、関わらないでくれと言いました。

「そ〜ね〜。あなた、白いうさぎだからシロトとかどう?」

 そう聞きました。白いうさぎは答えません。ですが、顔がこわばったことだけはわかりました。

「ねぇってば〜。」

 白いうさぎは遠くの方へ行ってしまいました。何故か寂しそうな表情をしながら。

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