うさぎ
昔々あるところに、可愛らしいうさぎがたくさんいる野原がありました。黒いうさぎや水玉模様のうさぎ、その他様々な見た目のうさぎが住んでいました。その中でも、たいそう可愛らしい白い、薄くピンクがかった毛を持つメスのうさぎが居て、そのうさぎは他のうさぎたちに愛されていました。その野原の周りには木々が生い茂る森がありました。うさぎたちはその森の中で遊んだりしながら、生きていました。
そんなある日、森に女の子がやってきました。銀髪の、長髪で、髪の毛を1つ結びで止めていました。うさぎたちは、その女の子のもとに近寄りました。身なりは固く、いかにも、お嬢様というふうな感じでした。
すると、女の子は突然うさぎたちに話し始めました。
「うさぎさん、こんにちは。とってもかわいいわね」
そう言って女の子は、うさぎたちを撫で始めました。
「うさぎさんはいいわよね〜、自由に生きられて。私なんて、お父様からは、男が良かったって言われるし、お母様には厳しく躾をされるし、私も自由に行きたいわ」
そう、女の子が話していると、不意に後ろから声をかけられました。
「なら、なってみるか?うさぎに」
女の子は慌てて振り返りました。そこに立っていたのは黒色の髪に丸眼鏡をかけた、少年が立っていました。
「貴方は、誰?」
「あ?俺?俺は弥生。魔法使いだ。」
「魔法使い?」
「ああ。もう一度聞く、うさぎになってみるか?」
その問いに、女の子は少し考えて、
「ええ。でも、誰かが変わりにいないときっとお父様たちが悲しむわ」
「そうか?じゃあ、代わりを用意すればいいんだな」
そう言って、少年は白い、ピンクがかった毛のうさぎを拾い上げて、言いました。
「お前とこのうさぎを入れ替える」
その答えにうさぎたちは怒りました。
しかし、少年は聞きませんでした。
「お前はどうしたいんだ?えーっと…」
「卯月そら」
「ああ、そらな。あ?卯月っておまっ、人間の中のトップと言っても差し支えないぐらいの会社じゃね?」
「うん。でも、お父様は跡継ぎが欲しかったって」
「はへ〜。人間も大変だなぁ。まあいいや。お前はどうする?」
「私は…。私は入れ替わりたい」
「その言葉に嘘はないな?戻りたくなったら俺に言え。」
そう言って少年は杖を取り出してうさぎと卯月そらの頭に当てました。すると、うさぎと卯月そらは入れ替わりました。外から見たら全くわかりません。
「ありがとう。これでもう、私は自由だわ」
「くくく。後悔するなよ」
そう意味ありげな言葉を残し、少年は森の中へと消えていきました。
「あいつが戻りたいっていうのが先か、うさぎが戻るのが先か」
今日は、4月の吉日。