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私、会議中はお静かにって言ったよね!

 さて、しばらくしてオレたちは、村の中央付近の広場に集合していた。どうやらソンは村人全てをここに集めたらしい。


 見回すと、バグって地面に埋まったはずなのに、どこからか湧いてきた青髪のイケメンバグ・リー。白髪の老人ロウ・ガイ。オタク大男のロリコン・シンシ。パンをくわえながら忙しなく足踏みしている女子高生ジョシ・コーセー。仲良く談笑している女騎士のオンナ・キシと、女神官のオンナ・シンカン姉妹。そして村人A、B、Cのトリオ。いつものメンバーが勢揃いだ。

 ……うん、こうして見るとなかなか地獄絵図である。




 村人どもの前に、村長のソンが進み出た。

 そして……


「えーっ、ごほんごほん!」


 おい、咳払いがうるせえぞジジイ!


「あー、みなさんこんにちは。今日みなさんにお集まりいただいたのは他でもない。村のこれからについて話し合おうと思いまして」


 さすがに村人どもの前では口調が穏やかになるな……気に食わないやつだ。


「話し合うことなんぞないじゃろ。ワシゃ帰るぞ」


 ロウがそんなことをほざき始めてどこかに行こうとした。それを慌てて村人ABCが引き留める。


「むらのことなら村長にきくといいぞ!」


「武器はそうびしないと意味がないぞ!」


「むらの近くの森に強いまものが住み着いてしまった……! 誰かなんとかしてくれないものだろうか……!」


 こいつらほんとそれしか言わないな。


「うるさいわい!」


 とキレるロウだったが、今回ばかりはオレもロウに同意するぜ。


「まあまあ、落ち着いて聞いてください……近々この村に魔王四天王が攻めてくるそうです」


 ソンはひとまずロウのことは放っておいて、重々しい口調で続けた。すると、村人どもは案の定ざわつき始めた。


「魔王四天王だと!?」


「いっけなーい! 大変大変! そんなのが攻めてきたら遅刻しちゃーう!」


「ふん、魔王四天王なんぞ恐るるに足らず! 私が成敗してくれる!」


「キシ姉さんに敵う相手じゃありませんよ!」


「デュフフ、来週末のイベントが中止にならないといいのでゴザルが……」


 ……うん。いちいちそちらを向かなくても誰がどんなこと言ってるのかだいたい分かってしまうのが恐ろしい。


「静粛に!」


 ソンが声を張り上げて場を鎮めようとするが、村人どもは相変わらずザワザワと好き勝手に話し合って(?)いる。


「この村はいったいどうなって縺励∪縺?s縺?? 譚代′縺ェ縺上↑縺」縺溘i蜍???ァ倥′窶ヲ窶ヲ」


「私、絶体絶命の大ピンチ!? 私の華の高校生活はどうなっちゃうの!? 次回『魔王四天王襲来!』お楽しみにっ!」


「くっ……私は村ひとつも守れないというのか……」


「大変! バグさんがバクって……よーし、みゅーじっく、すたーてぃん! ……ズッチャッズッチャッ♪」


「デュフフ……イベントが楽しみでゴザル。今のうちにライブ映像を見てコールの練習をしておくでゴザルよ!」


「えーい、離れんか! 老人をいたわれ! 非常識じゃぞ!」


「むらのことなら村長にきくといいぞ!」


「武器はそうびしないと意味がないぞ!」


「むらの近くの森に強いまものが住み着いてしまった……! 誰かなんとかしてくれないものだろうか……!」


 ……その様子を眺めるソンの眉間に深々とシワが刻まれていくのをオレはどこか他人事のように眺めていた。あー、あれは相当怒っているぞ……?



「お前らうるせぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!」


 ――ゴゴゴゴッ!


 ソンがオレの鼓膜が破けそうになるほどめちゃくちゃ大きな声で一喝すると、なんと地響きが起こった。やばくね? 村長さんやばくね? どうなってんのあれ。


 しかし、そのお陰で村人は綺麗に黙った。あの頑固老人のロウまで黙ったのはさすがに笑うしかない。


「全く毎度毎度お前らは好き勝手やりおって……村長をなんじゃと思っておる!?」


 うん、好き勝手やってるなアイツらは。全くもって同意だ。

 ソンの剣幕に押されてか、誰も何も答えない。


「いや答えろよ!」


 ソンさん。キャラがブレてませんか?


「村長さんは村長さんじゃない?」


 いや、ジョシ・コーセーさんごもっともです。


「……まあよい。悪いニュースばかりでは無い。……それより前に勇者様が現れるらしいのじゃ」




「な、なんだってー!?」


「いっけなーい! 大変大変! 私、ジョシ・コーセー! どこにでもいる普通の女子高生なんだけど、ついにこの村にも勇者様が来ることになったんだって!」


「ついにこの時が来たのか……私が勇者と旅に出る時が……!」


「ついに……ついになんですね……!」


「デュフフ、幼女勇者希望でゴザル」


「勇者だと? ワシには関係ないことじゃな」


「むらのことなら村長にきくといいぞ!」


「武器はそうびしないと意味がないぞ!」


「むらの近くの森に強いまものが住み着いてしまった……! 誰かなんとかしてくれないものだろうか……!」



「だからうるせぇつってんだろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」


 ――ゴゴゴゴッ!


 ……全く。学習能力のない奴らだ。村人たちがうるさすぎてさっきからオレが一言も喋れていない。どうしてくれるんだ?


「勇者様がいらっしゃれば、魔王四天王を倒すことも可能です」


 ソンは先程の剣幕とは打って変わって落ち着いた口調になって続けた。


「そして……前から話していたとおり……オンナ姉妹は、勇者様とパーティーを組んで旅に出る役目があります……準備をしておくように」


「あぁ!」


「はいっ!」


 おいちょっと待てよ……? てことは? あの二人は村からいなくなってしまうということか? あの優しい女神官ちゃんも? もうあの美味しいおにぎりを食べることも出来なくなっちゃうの? 嘘だろ? オレ密かにあの子のこと……好きになってたのに! ていうかこの世界唯一の割とまとも枠だったのに!


「うぁぁぁぁぁぁぁぁうそだぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」


 村中に、幼女の断末魔の叫びが響き渡った。


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