4-3 ソルレーナ・フォン・ナトゥア
目が覚めた。
なんというか、浮遊感が全身に絡みついている。
ふむ。
なんか、安心するな、この空間。
ふぁぁ、眠くなってきた。
寝ようかな。
「んぐっ!?」
突然、強い力に体を押される。
わたたたたっ!
ぐいぐいぐい。
目の前が急に明るくなる。
どうやら外に出たらしい。
はああ?
と言うつもりだった、が。
「おぎゃあ」
……まじ?
目を開けてみた。
きれいな女性の顔のドアップ!
顔近いわっ!
という心の叫びもむなしく、私の口からは
「ほぎゃあ」
という声しか出ない。
視界にうつる手も、むちむちしてるし、小さいし。
まじぃ?
私、冗談抜きで赤子?
ないわー。
「見て、この子もう目が開いてるわ」
「本当だ。にしても、可愛らしい子だな」
どうやら、この二人、今世の私の両親らしい。
「名前はどうします?」
名前かー。
そういや転生する前、神様が名前をつけるだのなんだの言っていたが、何のことだろう?
「この子の名前は、ミ……」
お父さんが私の名前をつけようとしたその時。
「はァッ!」
お父さんが声をあげた。
ちょ、大丈夫ですかお父さん。
「今、神よりお言葉をいただいた!」
……神、より?
「この子の名前は……」
嫌な予感がする。
「ソルレーナだ!」
神様おぃぃぃぃ!!
絶対「塩」を元にしたに違いない名をおそらくあの神様につけてもらった。
……塩。塩、塩ね。
漢字が違うって。
まぁ別にいいんだけどさ。
にしても赤子ってダルい。
赤ちゃん用のオモチャをコロコロ転がしながら私は思う。
……ま、私今日で生後一か月なんだけど。
成長速すぎる気もするけど、気にしない。
それより今日は、生後一か月経ってお母さんの体調も安定したので、兄弟と面会することになっている。
なんでも、兄三人姉三人だとか。
私の前世の感覚からすると、大家族。
なんてことを思っていたら、私とお母さんがいる部屋のドアがノックされた。
「どうぞ」
お母さんがそう言うと、ドアが開き、ぞろぞろと人が入ってきた。
お父さんとその後ろの眼鏡をかけた人以外の注目は、私に集まっている。
「さあ皆、この子がソルレーナだ。自己紹介を」
お父さんが私を抱いてそう言う。
すると、子供達が自己紹介をはじめた。
まず、眼鏡の人が私に向けて一歩、前に出る。
「長男のゼルクだ。今年で十五になる」
無表情でそう言った。
このゼルクって人はどうやら母親似らしく、切れ長の目にすっと通った鼻筋の彼は、知的な雰囲気と同時に、なんとなく近より難いオーラを発している。
ゼルクさんはそう言うと後ろへ下がり、その後は次々と兄弟姉妹の自己紹介。
「長女のウルヴァよ。年は十六。よろしくね」
「次男のダンクだ。年は十四!」
「三男のシュルト、今年で十三。あぁ……っ、可愛いなぁ!」
「次女のミレーヌ! 今年でえっとぉ……十一才!」
「三女のエーデルよ。あなたより六つ年上の六才だから、覚えておくのね」
「以上が、お前の兄弟だよ、ソルレーナ」
「皆、仲良くしてね」
最後に、父と母が一言。
私の兄弟達に対する第一印象は、大人びていて優しそうなウルヴァさん、知的で賢そうなゼルクさん、なんか私にデレデレなシュルトさん、スポーツに長けていそうなダンクさん、ツンツンお嬢様のエーデルさん、明るくて元気いっぱいのミレーヌさん。
最後の二人は、中身の私は十二歳だから「さん」をつけることに違和感があるけど。
でも、皆イケメンor美少女だ。
……ここに私がいていいんだろうか。
「改めて、父親のブレイドだ」
「母のリリーユよ」
ふむ。
私、人の名前覚えるの、あんまり得意じゃないんだよね。
全員の名前、覚えられるかなあ。
「それじゃ皆、母上と父上は仕事をしているから、ソルレーナを頼むぞ」
「はい!」
父上と母上か。私もそれにならって、父上、母上、と呼ばせてもらおう。
兄弟間では主に兄様、姉様、と呼んでいるので、こちらもならわせてもらおう。
父上と母上は部屋を出、私はベッドに寝かされた。




