窓際クランの鉄砲玉
ノックをしようとしているフィーを止めるため、レイラは駆け出そうとしていた。
しかし、それをユーリが羽交い締めにして止めた。
「・・・!待って、フィー!!」
「ダメだ。もう間に合わない!」
ユーリが小屋から見えない位置に引き込んだ。
それとほぼ同時にフィーは小屋の扉をドンドンと強くノックした。
「ちょっと!三馬鹿!!いるのはわかってるんだから!!出てきなさいよ!!!」
「誰だようっせえな!ってお前は!」
「アンタたちよくも、もがが」
ノックをするフィーを見てチンピラ三人はニヤリと笑い、フィーに手を伸ばした。
多勢に無勢でフィーはすぐに三人がかりで押さえつけられて捕まった。
「へへ。今日はついてるぜ。まさに、飛んで火に入る夏の虫ってやつだな」
「さすがアニキ!」
「アニキー。こいつどうしましょう?」
じたばたと暴れるフィーを押さえつけながらチンピラたちは話をしていた。
ひょろ長は周りをぐるりと見回し、目撃者がいないことを確認した。
ここはスラムの入り口だし、肥料屋の発する悪臭で人がほとんど近づかない。
目撃者がいないことにひょろ長はニヤリと笑った。
「地下室に運んでおけ」
「「へい!アニキ」」
三人はフィーを担いで小屋の中に入っていった。
バタンと扉が閉じて付近に静寂が戻ってきた。
「・・・!どうして止めたの!」
「勝てっこない。あいつらも短い間とはいえ探索者をしてたんだろ?」
「そうだけど!それでも三人居れば負けなかったかもしれないのに!」
「三人いても結果は一緒だ!」
「でも!!」
「レイラ!!」
ユーリはレイラの肩に手を置いて瞳をじっと覗き込んだ。
そして、諭すように告げた。
「落ち着いてくれ。今は時間がないんだ」
「時間が・・・ない?」
「そうだ。フィーが捕まった。あいつらはチンピラだ。何をするかわからない」
レイラの顔が真っ青になった。
そしてまた小屋に向かって走り出そうとした。
「フィ、フィー!!」
「だから待てって。無策で飛び込んでもフィーの二の舞だ」
再び小屋へと向かおうとしたレイラを羽交い締めにして捕まえた。
それでもジリジリと小屋に向かっていっていた。
「じゃあ、どうしたら!!」
「俺が騒ぎを起こして、あいつらを手一杯にしておく。そのうちに衛兵を呼んできてくれ」
目的を与えたことで、レイラがおとなしくなった。
そして、ユーリの方を向き直って、質問をした。
「衛兵?」
「もう事件は起こってる。フィーがあの三バカに攫われたって説明すれば動いてくれるだろ」
「わ、わかった」
そう言ってレイラは走り去った。
かなり焦っていた様で、何度かつまづいて転びそうになっていた。
「まぁ、すぐには動いてくれないだろうけどな」
ユーリはレイラにはああ言ったが、衛兵がそんなにすぐに動いてくれるはずがないと思っていた。
さっきのレイラの話から考えて、証拠もないのにすぐ動いてくれるとは思えない。
パニック状態のレイラは簡単に騙されてくれたが。
レイラの後ろ姿を見送った後、ユーリは一度小屋を見て、近くにあった看板を殴りつけた。
「くそ!」
ユーリはこの状況が全て自分のせいだと思っていた。
フィーがついてきているのに気づいていれば。
フィーの様子をちゃんと見ていれば。
もっと言えば、出る前にちゃんと話し合っておけば今みたいな状況は回避できたはずだ。
「フィー。絶対助けるからな」
ユーリは小屋を見つめながら、強い意志を込めて呟いた。
何か使えるものはないかとあたりを見回していると、山積みにされた地竜のフンが目に入った。
※ボツネタ
フィーが捕まった後のシーン
「そうだ。フィーが捕まった。あいつらはチンピラだ。何をするかわからない。エロ同人みたいに!」
「・・・えろ、どうじん?」
「あ、いえなんでもありません」
没理由:雰囲気が崩れるから