窓際クランの新人戦2
アルフレッドもルナも予想外の展開に手をきつく握った。
「いや、三人で十匹のビッククラブを相手にするのは無理ですよ!攻撃を受けながら倒すにしても、三体くらいまでが限界です!」
ルナは少し腰を浮かせて食い入るように水晶板はを見つめる。観客も同意見なのだろう、ハラハラする気持ちでユーリたちの行くへを見守っていた。
一方、映像の中では、モンスターを釣ってきたフィーが大きな盾を構えたユーリとハイタッチをしながらすれ違った。
ユーリが大きくて赤い盾を構えると、赤い波のようなものが盾から放射状に広がった。その波は攻撃ではないようで、ビッククラブは傷ついてはいないようだが、ビッククラブの意識はユーリに向かったようだ。
そこまできて、アルフレッドはユーリたちのやりたいことを理解した。そして、彼らが問題なくあのビッククラブを倒すであろうことも。
「そうか、あの盾にはモンスターを引きつける効果があるのか」
「なんですか?それは」
アルフレッドのつぶやきにルナは質問をぶつけた。
アルフレッドはどかりと浮かせていた腰を椅子に下ろしながら言った。
「ダンジョン産の装備の中にはなぜかモンスターを引きつける効果を持つものがある。そんな効果邪魔だと思ったが、こういう風に使えるんだな」
アルフレッドは感心したようにうなづいていた。しかし、ルナはまだわかっていないようで、驚きに目を見張った。
「え!?モンスターを引きつけるんですか!?じゃあ、あの男の子が危ないんじゃ!?」
「大丈夫だ。見てみろ」
ビッククラブたちがユーリのいるところにたどり着き、ユーリに向かって攻撃を始めた。ユーリは少しずつ後退しているが、確実に攻撃を防いでいた。
「おそらく、この盾の、ユーリだったか?こいつは土属性の中でも防御特化の召喚獣を引いたんだろう。それなら、ちゃんとした装備を整えれば、同位階のモンスターでも二、三十匹は相手できる。十匹なら余裕を持って相手できるだろう。まあ、その分攻撃力は全然なんだがな」
ルナは驚きで目を見張った。土属性は外れ属性。そんな印象を持っていた彼女にとって、そんなすごいことができるとは思ってなかったのだ。
「そうなんですか!?でも攻撃できないんじゃダメなんじゃ・・・」
「それは見てればわかる」
ユーリたちのパーティを見ていると、後ろの魔術師が合図を出した。それを見てユーリがうなづくとビッククラブの一体をよりを使ってきようにフィーとレイラの目の前へと動かした。
フィーはそのビッククラブに攻撃を加え、ビッククラブの意識をユーリから自分へと向けさせた。そして、数回攻撃をしながら攻撃を避けていると、魔術師のレイラの火魔法がビッククラブにぶつかり、その火魔法がとどめとなり、ビッククラブは力尽きた。
ビッククラブが倒れたことをユーリが確認すると、次のビッククラブをフィーたちの前へと誘導した。
そんな手順を繰り返し、全く危険を感じさせない手際で誘い出した十匹のビッククラブを倒してしまった。
ルナはあっけにとられた表情でその様子を見つめていた。
アルフレッドは深くうなづきながら言った。
「彼らが一気に位階を上げた理由がわかったな」
「そうですね。この効率でモンスターをかれれば・・・おっと?ここで探索者ギルドから情報がきました。どうやら、釣り戦法というそうです」
ルナはスタッフからメモを受け取った。そのメモの中には釣り戦法のやり方や注意点などが書かれていた。
それをルナが読み上げると、アルフレッドは感心したように大きくうなづいた。
「なるほど、釣り戦法ね。よく考えるもんだ」
アルフレッドは心底感心していた。自分では考えつかなかったことを新人探索者が考えたのだ。当然といえば当然だ。これで今まで不利だと言われていた土属性の探索者への見方が変わるかもしれない。
そして、画面越しにユーリを見つめた。アルティナがライバルといったのがこのユーリだ。調べてみれば土属性の上、大きな盾を持ったチキン野郎で、レッドチキンとか言われているとわかった。最初はどんな道化がアルティナを騙しているのかと思ったが、これならアルティナが注目して当然だ。
(できればうちのクランに欲しいところだが)
画面の向こうで仲間と楽しげにモンスターを狩る彼はきっと一人ではクランを移動しないだろう。そして、パーティ三人のうちの一人は『紅の獅子』の前クランマスター の一人娘のフィーだ。『金色の麒麟』に入れるには少し問題がある。アルフレッドは残念に思いつつも微笑ましい気持ちでユーリたちを見つめた。
「この戦法で優勝を狙えますか?」
アルフレッドはそう言われてハッとした顔をした。完全に大会と関係ないことを考えていた。そのため、苦笑いをしながらルナの方を見た。
「優勝か。うーん。難しいと思うな」
アルフレッドは腕を組んで難しそうな顔をした。
「何故ですか?」
「見てればわかると思うけど、大型個体を狩る方が断然効率がいい」
アルティナは二体目のジャイアントシーホースを倒して、三体目の大型個体部屋を確認しているところだった。ポイントもユーリたちとアルティナの間ではかなり点差が開いている。
「たしかに。ちょっと残念ですが、仕方ないですねそれでは他のパーティも見ていきましょう!」
「そうだな」
水晶板の映し出す映像は別のパーティに切り替わり、観客の注目は別のパーティに移っていった。
しかし、ルナもアルフレッドもまだ波乱が待っていそうな気がしていた。探索者のカンというやつだ。立場上落ち着いているように見せていたが、ワクワクした気持ちは抑えきれていなかった。
戦闘シーンを誰視点で描くか悩みましたが、ユーリ視点だと今までにもあったのと同じ感じになりそうだったので実況席視点で書いて見ました。
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