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窓際クランの成り上がり〜チートは使えないけど、仲間と一緒に頑張ります〜  作者: 砂糖 多労
第五章

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窓際クランの報酬分配

 あの後、到着した三人娘は数人のギルド職員を連れていた。

 ギルド職員もあたりに散らばるマッドフィッシュの数にあっけにとられ、「こんな数のマッドフィッシュは見たことがない」と言っていた。

 モンスターハウス四つ分のマッドフィッシュだ。普通見ることはないだろう。


 結局ユーリと救援に来たギルド職員でマッドフィッシュの魔石を取り出した。

 アルティナはユーリが魔石を取るのを止めようとしたが、ユーリにパーティの秘密に関係することなので、できればユーリが活躍したことを黙っていてほしいと言ったことから、いいセリフが思いつかず、止めることはできなかった。

 それならアルティナ自身も手伝おうとしたが、一匹目にマッドフィッシュの魔石を真っ二つにしてしまい、ギルド職員にやんわりと止められてしまった。魔石は貴重な輸出資源のため、あまり乱暴に扱われると困るのだ。

 そのあと、アルティナはおとなしく三人娘にお世話されていた。


 結局、帰ってきた時には日はどっぷりと沈んでいて、探索者ギルドの酒場は探索を終えた探索者で賑わっていた。

 しかし、三人娘が席を探すと一つのテーブルにいた探索者が席を譲ってくれた。

 アルティナは苦笑いしながら席を譲ってくれた探索者の飲み代を払っていた。その様子を見るに、こういうことはいつものことらしい。

 まあ、今日の探索の様子を見る感じ、別の探索者に飲み代程度は払っても痛くもかゆくもないだろうが。


 三人娘は席に着くと、手早く報酬を数え、五つの袋に分けた。

 そして、その中で一番小さい袋をユーリに向かって差し出した。


「はい。これがあんたの分ね」

「あれ?いいのか?最後はへばったからてっきりもらえないものかと」


 ユーリは本当に驚いていた。聞いた話だと、荷物持ちはほとんどが無給で働くらしい。

 報酬は位階が上がること。そんな考えが常識らしい。

 その上、結局最後はへばってしまい、帰りはギルド職員さんに有料で荷物を運んでもらった。

 ちなみに料金はアルティナが払った。彼女にとっては魔石採集が手伝えなかった罪滅ぼしのつもりなんだろう。律儀だなと思いながらもユーリは苦笑いしてその好意を受け取った。ユーリも今にもベットに入りたいくらいヘトヘトだったのだ。


 そんな理由もあり、ユーリの取り分はないと思っていたが、小さな小袋を渡された。

 中身が全て銅貨だとしても、二、三日分の食費にはなる量だ。さっき仕分けるところを見ていた感じ、金貨や銀貨も入っていた。


 アルティナの取り巻きの少女はプイッとそっぽを向きながら小袋をユーリに押し付けた。


「最後はダメダメでしたけど、途中までは頑張ってましたからね。そう言うのを評価しないとアルティナ様が怒るので」

「へー。ありがと」


 いやいやという雰囲気を出してはいるが、本気で嫌がっているわけではないようで、その頬は少し赤くなっていた。

 彼女は気を取り直すように机の上にある一番大きな袋を重そうに持ち上げてアルティナへと渡した。


「これがアルティナ様の分です!」

「ありがとう」


 アルティナは笑顔でその袋を受け取った。取り巻きたちはその笑顔を見てキャーキャーと喜びの声を上げた。

 手渡した少女などは一番近くにいたためか、放心して一歩も動けない状態になっていた。


 その様子を見てユーリが苦笑いをしていると、アルティナは報酬の入った袋を持ったままユーリの方へと歩いてきた。そして、アルティナはユーリに向かって報酬の袋を突き出した。


「これはユーリにあげよう」


 ユーリは一瞬ぽかんとした顔をした後、袋をアルティナの方へと押し返した。


「いや、訳がわからん。アルの取り分だろ?もらえねぇよ」


 アルティナは少し考え事をするように顎に人差し指を当てた後、何かを思いついたような顔をした。


「そうだな。じゃあ、情報料ということにしておこうか。マッドフィッシュの情報とか、とても役立った」

「・・・そんなん銅貨1枚くらいで十分だよ」


 ユーリが頑なに拒もうとするが、アルティナも折れるつもりはないようで、報酬の押し付け合いが始まった。

 三人娘も、どっちをどう止めていいかわからずオロオロと様子を見ていた。


「僕にはそれくらいの価値があったってだけだよ。それに、そうだな」


 アルティナは机の上に報酬袋を置いて、装備をつけ始めた。


「もらいすぎだと思ったら、今度の新人戦で返してもらおうかな」

「新人戦で?」


 完全装備になったアルティナは挑戦的な顔で笑った。


「僕に勝つくらいの戦果を出すんだろ?それがお釣りとしてもらうよ。それとも、その程度の成果も出せないかい?ユーリ」


 ユーリは驚きに目を向いた。アルティナはそんなことをいうようなやつだとは思っていなかったからだ。だが、こんなことを言うくらいには打ち解けられたと言うことだろう。

 ユーリは嬉しそうに笑ったあと、いつものように自信満々にニヤリと笑った。


「足りないくらいだよ。でも、不足分は負けといてやるよ。アル」


 アルティナはにこりと優しく笑うと、踵を返した。


「はは。楽しみにしてるよ」


 そう言い残してアルティナは立ち去っていった。

 三人娘は我に帰るとそれぞれ自分の分の報酬だけを持って、慌ててアルティナの後を追っていった。

このアルティナの取り巻きAは少し気に入ってるので、そのうちネームドキャラとして再登場するかもしれません。


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