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窓際クランのユーリの秘密

 二人を見送ったあと、リュウとユーリは執務室に戻って酒を飲んでいた。

 酒は度数の強いもので、喉を焼くような感触を残して体の中に落ちていった

 リュウは机にグラスを置いて言った。


「お前は本当に面白いやつだな」

「さっきのミスのことは忘れてください」


 ユーリは苦笑いをしながら答えた。

 リュウは大きく声を上げながら笑った。


「さっきのギルド規約のことだけじゃねぇさ。まあ、それもゼロではねぇけどな」


 リュウは大げさに手を広げながら言った。


「さっきのタンカといい、交渉の内容といい年齢を偽ってんじゃねぇかと思ったぜ?」


 リュウは鋭いことを言った。

 精神年齢はリュウより年上かもしれない。

 リュウはそんなことを酒と一緒に飲み込んだ。


「さっきの交渉とかはレイラと一緒に考えたので、たまたま上手く言って良かったですよ。ほとんどレイラの手柄です」


 チビチビと酒を飲むユーリに一瞥して、リュウはグラスを傾けた。


「・・・まぁ、いいさ。そういうことにしたいなら、そういうことにしておこう。俺たちも脛に傷のあるやつばっかだからな」


 グラスの中の氷をカラカラと玩びながらリュウは言った。

 クランメンバーのことを考えているのかもしれない。その瞳は優しい光を灯していた。


 リュウはぐっとグラスに入った酒を飲み干した。

 そして、机の上にグラスを置いた後、言った。


「ユーリ。お前、うちに来ねえか?」


 リュウの提案にユーリは驚きに目を見張った。

 危うくグラスを取り落としそうになった。

 こんなたかそうなグラス、割ったらいくら請求されるか・・・。


 ユーリはそっとグラスを机の上においた


「・・・唐突ですね。このクランに見合う実力を見せれたとは思っていないんですが」

「金庫を華麗に取り返したじゃねえか」


 リュウは可笑しそうに笑った。

 ユーリは認めるか一瞬悩んだか、笛の時点であそこにいたことはバレているし、認めてしまうことにした。


「それくらいは簡単にできるでしょ?」

「あの地下室の壁に大穴を開けたのはお前だろ?」

「・・・なんのことでしょう?」


 ユーリは一瞬で肝が冷えた。

 一番知られたくないことをこのタイミングで指摘されるとは思っていなかった。

 リュウはユーリの目をじっと見つめながら言った。


「俺の知らない出入り口があったんだ。流石に気づくさ」


 ニヤリと笑うリュウの顔をユーリは見返した。

 ユーリはうまく顔を作れたかわからなかった。

 階段のようにして、もともとあったかのように見せかけたが、バレていたとは。

 しかし、こちらは認めるわけにはいかない。


「もしかしたら、リュウさんの知らない隠し通路を作ってる人がいたのかも」

「あの地下室の壁は王城の金庫と同じ素材だったんだよ。加工するのは俺でも無理だ」

「・・・」


 ユーリは黙ってしまった。

 それが悪手だとはわかっていたが、手がなかった。


 顔を下げてで黙り込んだユーリを見て、リュウは息を吐きながら告げた。


「まぁ、いいさ。勧誘の返事は気向いたらしてくれ。待っててやるよ」


 ユーリは恐る恐る顔を上げて、リュウの方を見た。

 リュウは自分のグラスに酒を注いでいるところだった。


「聞かないんですね。何も」

「言えることなのか?」


 リュウは言うか言わないかではなく、言えるかどうかを聞いてきた。

 聞いたら自分もやばいことになるとわかっていたんだろう。

 もしかしたら、このクランにはユーリのような存在が他にいるのかもしれない。


「・・・言えませんね」

「じゃあ、きかねぇよ。利益のでないことは好きじゃない」


 ワインを手酌で注ぎながら、リュウは話した。

 ユーリはリュウの様子にさすが大手クランのクランマスターだなと思った。


 胸をなでおろすユーリを見て、リュウは優しく笑い、酒の瓶を突き出してきた。

 気づかぬうちにユーリのグラスはカラになっていた。


「まぁ、お前らはおもしれえから、今回の事は漏らさないようにしてやるよ。なんかあったら言ってみろ。まともに答えるかはわからないけどな」

「ありがとうございます」


 ユーリは深々と頭を下げながら自分のグラスを差し出した。

 リュウは無言でユーリの盃に酒をつぎ、自分の盃をかざしてきた。

 ユーリはその盃に自分の盃をぶつけ、二人は盃の中の酒を飲み干した。

こういうワルで顔怖いだけど優しいキャラは好きです。

リュウさんはこれからもちょくちょく出てくるかもしれません。


最近じわりじわりとブックマークが伸びてきているので、嬉しくて予想外に執筆が捗っています。おかげさまで若干寝不足です。

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