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窓際クランの再挑戦

 次の日、午前中はそれぞれのバイト先に向かい、昨日同様に訓練階層に来ていた。


「アルバイトももうすぐ終わりね」

「・・・とりあえず、私は店長には今週いっぱいで辞める予定と伝えてきた」

「大丈夫なのか?」


 ユーリは簡単に仕事を辞めると言った二人に、少し不腰不安そうに声をかけた。

 ユーリが就職活動に苦労した様にこの町の仕事は丁稚製で簡単にやめたりはできない様になっている。


「大丈夫よ。もともと、パーティを組むまでって話で仕事させてもらってたし」

「・・・アルバイトといっても親戚のお手伝いの様なもの」


 どうやら、彼女らは今までのツテを使って仕事をしていたらしい。

 よそ者のユーリとしてはなんとも羨ましい限りだ。


 そんな話をしながら訓練階層をしばらく歩いていると、ミニシーワームを発見した。

 季節的に、一層を使うパーティーがいないため、訓練階層のミニシーワームが多く、すぐ見つけられるようになっているらしい。


 ミニシーワームを見つけると、ユーリは構えを取り、フィーとレイラの前に立った。

 三人は昨日以上に緊張している様子だった。


「じゃあ、訓練通りのフォーメーションで行こう」


 そう、今日は昨日とは違い、作戦を考えてきていた。

 行き当たりばったりの昨日と違う。

 勝算は十分あるが、その分気にしなければいけないこと、やるべきことが増える。

 フィーはぎゅっと大剣を握った。

 フィーも自分の杖を心持ち強く握っていた。

 その手のひらにはジンワリと汗が滲んでいた。


「わかったわ」

「・・・問題ない。ユーリこそ、ミスをしないようにね」

「わかってる。じゃ、行きますか」


 ユーリはミニシーワームへ向かって駆け出し、先制の突きを一撃入れた。

 剣は少しミニシーワームに刺さった。

 ダメージはそれほどない様だったが、痛みはあったらしく、ミニシーワームは激昂したように鳴き声をあげた。


「来いよ!」


 ミニシーワームに向かって挑発をかましながらユーリは距離をとった。

 ミニシーワームが体当たりの体制に入ったのを見て、盾を前にして踏み込んだ。


「うりゃ」


 シーワームの体当たりとタイミングを合わせるようにして、ユーリのシールドバッシュが決まった。

 ユーリはミニシーワームの攻撃によって後ろに転び、ミニシーワームはユーリのシールドバッシュでかなりの距離を飛ばされた。


「よっし。レイラ」

「・・・『アイスボール』」


 ミニシーワームの反動で転がりながら、レイラに合図を出した。

 レイラがタイミングを合わせるように『アイスボール』を放ち、ユーリのシールドバッシュで体制が崩れているミニシーワームへと飛んで行った。


『アイスボール』を受けたミニシーワームはさらに遠くへと吹き飛んだ。

 その上、連続攻撃で軽いスタン状態になっているようだ。


「・・・フィー。お願い」

「!わ、わかったわ。やぁぁぁ」


 フィーは大剣を右側に振りかぶるように持ってミニシーワームに向かって走り出した。

 走りながら、今朝ユーリとフィーに言われたアドバイスを思い出していた。


 ーーー


『ねぇ、フィー。大剣を縦にふるんじゃなくて横に薙ぎ払うことってできる?』

『?別にできるけど、どうして?』

『・・・その方が相手に当たりやすい。地面に当てて大剣を傷めることもない』

『!なるほど、そうね』


 ーーー


(大剣はふるんじゃなくて薙ぎ払うように使う)


 フィーはまだ大剣を十分に使いこなせていない。

 そうでなくても、華奢で体重が軽い少女が大剣のの様な重い武器を扱うのだ。

 剣筋を立てることも地面に当てる前に止めることもできない。

 じゃあ、いっそのことブンブン振り回す方が効果的、三人はそういう結論に至った。


 フィーは、ミニシーワームの前まで走り込んで大剣を振るった。

 しかし、少し距離が遠く、シーワームには少しかすっただけで、有効打とはならなかった。


 切り傷をつけられたシーワームは怒りのあまり咆哮し、フィーに向かって体当たりを仕掛けた。

 フィーは振り抜いた大剣に体重が持っていかれ、ふらついており、ミニシーワームの攻撃を避けることはできなかった。


 ーーー


『それから、なぎ払った後、大剣はそのまま振り切っちゃってくれ』

『どうしてよ?それじゃあ、私が無防備になっちゃうじゃない』

『大丈夫。だって・・・』


 ーーー


 ミニシーワームとフィーの間に大剣を追いかけるようにしてユーリが割り込み、ミニシーワームの体当たりを受け止めた。


「フィーには指いっぽんふれさせねーよ」

「・・・ミニシーワームに、指はない」

「そうじゃねーよ!そんなことわかってるよ!!というか、わかってよ!!!」

「・・・ちゃんとわかってる。ちょっとしたジョーク」

「マジかよ」

「あははは」


 フィーが笑い、ユーリはレイラのセリフにがっくりと肩を落とした。

 肝心のミニシーワームは走ってきた勢いのままシールドバッシュを決めたこともあり、ミニシーワームは少し後退し、三人との間に距離ができた。

 そこにレイラが後ろから、追いついてきて、戦闘開始状態と同じ状態に戻った。


「よし。問題ない。このまま続けられそうだ」

「・・・むしろ、少し余裕がある」

「そうね」


 三人はミニシーワームを前にわらいあった。

 いい雰囲気で戦闘ができていた。


「よし!このまま倒し切ろう」

「「うん!」」


 数分後、ミニシーワームを三人だけで倒しきることができた。

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