窓際クランの反省会
ごめんなさい。別作品を読んでたら間に合いませんでした。
読んでたのは『目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい』です。
面白かった。
三人は帰ってきてクランハウスにある食堂に集まっていた。
そこで今日の反省と明日への対策を立てていた。
「思ったより強かったな。ミニシーワーム」
「・・・でも、勝てなくはなさそうだった」
「そうね」
おそらくダメージは入っていた。
盾で攻撃を受ける分にはほとんどダメージがなかった。
つまり、あのまま何時間か戦い続けていれば勝てたと思う。
確証はないが。
「相手へのダメージを大きくできたらいいんだけどな」
しかし、一匹狩るのに一時間とかかけていたらわざわざダンジョンで稼ごうとする意味がない。
それだったら外で壁の修理をしていた方がずっといいだろう。
「・・・弱い魔法でごめんなさい」
「いや、俺も全然ダメージ与えれてなかったし」
「・・・それでも、ユーリは攻撃を全部防いでくれた」
レイラは俯いてそんなことを言った。
かなり落ち込んでいるらしい。
ユーリとしても、ぽろっと言ったことでここまでレイラが落ち込むとおもわず、オロオロしていた。
どうしていいかわからなくなって、周りを見回しているとフィーの大剣が目に入った。
そして、一つの案が浮かんだ。
「そうだ。フィーの武器を変えるのはどうだ?」
戦闘ができなくなったのは、フィーの大剣をユーリが避けたことがきっかけだった。
フィーが短剣とかの取り扱いのきく武器に変えれば戦闘の継続がしやすいかもしれない。
さっき大剣を振った時ふらふらしていたし。
「フィーは軽戦士向きだと思うから。大剣じゃなくて、短剣とかに持ち替えたらどうだ?」
「(キッ)」
「ひぃ。ごめんなさい」
「あ。ごめんなさい。ちょっと素振りしてくるわ」
フィーはバツの悪そうな顔をした後、そう言って、部屋を出て行ってしまった。
ユーリはなぜかわからないが地雷を踏み抜いてしまったらしい。
フィーの出て行った扉を見つめていた。
「なんだったんだ?」
「・・・フィーの使ってる大剣はフィーのお母さんが昔使っていたもの」
レイラはフィーの出て行った扉を見つめながらそう言った。
フィーの母親は名の知れた大剣使いだったらしい。
そして、『紅の獅子』のクランマスターだったが、三年前、事故で亡くなっていた。
その事故が原因で『紅の獅子』は最下位に転落してしまい。現在の状況に至るらしい。
「・・・フィーは大剣使いだった前クランマスターの様に強くなりたいんだと思う」
「そうだったんだ。悪いこと言ったな」
ユーリは扉の方を見た。
しかし、今追いかけて謝るのも何か違う気がした。
大剣の話を聞いたことも言っていいかわからないし。
「・・・後で謝れば許してもらえる。多分」
「多分かよ」
ユーリはレイラの発言に苦笑いをした。
レイラは少し考えた後、全部教えた方がいいと決め、数度うなづいてからユーリに行った。
「・・・『紅の獅子』には代々受け継がれてきていた召喚獣がいた」
「え?」
唐突に始まった話にユーリは目を白黒させた。
レイラはその様子を横目に話を続けた。
「・・・フィーはその召喚獣を継承する予定だったけど、一緒に居なくなった。流石に召喚獣を呼ぶことは拒まないと思うけど、無理強いはしないでほしい」
「わかった」
神妙にうなずいた。
武器だけではなく、召喚獣にも地雷が潜んでいたらしい。
ユーリは気分を変えるように言った。
「よし。明日の作戦を考えよう」
フィーのためにも、より良い作戦を考え始めた。
***
フィーは一人中庭で素振りをしていた。
一振りするたびに体は前後にゆらゆら動く。
うまくいかないことに苛立ちを覚えていた。
「こんなんじゃ。もっと、お母さんみたいに」
理想の動きに近づけようとするが、体力がないこともあり、ドンドンイメージと実際の動きがずれていく。
「あ」
ついには握力が無くなり、すっぽ抜けて、大剣から手を離してしまった。
ガランガランと音を立てて転がる大剣を見ながらフィーは涙を流した。
どうしてうまくいかないのか。
どうして自分は母親の才能を継げなかったのか。
どうして母親は死んでしまったのか。
どうして。どうして。どうして。
(考えても仕方ない。今はもっと強くならなきゃ)
フィーは涙を拭って立ち上った。
そして、大剣をに近づき、大剣を拾おうとした。
「痛っ」
左の手のひらに傷があった。
おそらくさっき大検がすっぽ抜けた時に切ったのであろう。
痛くて剣が握れないというほどでもないが、消毒もせずに化膿したりしたら笑えない。
消毒だけはしようと、一旦クランハウスの中に戻った。
自分の部屋に傷薬を取りに向かう途中で、先ほど三人で作戦会議をした食堂の前を通った時、中から声が聞こえてきた。
「あの二人、まだおしゃべりしてるんだ」
かなり長い間素振りをしていたため、あれからかなり時間が経っていた。
しかし、二人はまだ話をしているようだ。
少し胸がちくりと痛んだ。
「別に、声をかけるくらいは普通」
誰もいない場所でフィーはそう呟くと、扉に手をかけた。
しかし、中から聞こえてきた声を聞いて、立ち止まってしまった。
「・・・フィーの大剣を活かすためにはこの陣形が一番」
「でも、これだと、ミニシーワームを結構吹き飛ばす必要があるけど、大丈夫か?俺は少し危険になっても大丈夫だぞ?」
「・・・魔力は少し余分に使うことになるけど、問題ない」
「おぉ。流石だな」
「・・・もっと、褒めると良い」
「じゃあ、そのあとは、フィーの邪魔にならないようにこの位置に移動して・・・」
フィーは扉の前で固まってしまった。
中から聞こえてきたのは楽しい話し声ではなかった。
真剣な作戦会議だった。
二人はずっと明日の連携のについて考えてくれていた。
(二人とも、それもわたしのために)
フィーは逃げるようにその場を去って、再び素振りを再開した。
手のひらの痛みは全く気にならなくなっていた。