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3/7


■■

 クロが、謎の集団に連れて行かれてしまった。

 カナタとシロはその光景を見ているしかなかった。


 カナタはクロが人が変わったように、こんな心をえぐるようなことを初めて仲間から言われたため返す言葉がすぐに浮かばなかった。

 その言葉が思いのほかショックで問い変えすこともできず連れて行かれる。

 クロの言葉が嘘だと思いたい。おれらを逃がすために自らを犠牲にしているだけだと。

 本気で言っているのではないと思ったが、その真意を今確かめることはできない。

 確かめるために奴らを蹴散らすにしてもカナタは毒により脱力感が強く力ずくでクロを連れ戻すことは叶わない。

 己の力が足りない――。



 クロが手錠と目隠しをされ謎の部隊に大人しくついていく。

 何処へ連れて行かれるのか、場所が分からないように耳もイヤーマフで塞がれのが見える。


 謎の集団に負けてしまった、クロを奪われた後、カナタに喪失感が襲った。


「カナタ…………手錠が外せません。一度ホームに戻りましょう」シロがカナタに言うがカナタに反応はなかった。

 クロがおれに愛想つかしたのか?

 クロをコマだと確かに思っていた。

 だが何年も一緒にいて仲間だとも思っていた。

 コマだと思わなければ、思わなければと言い聞かせていた。

 実際、コマなのか仲間なのかおれたちの関係に名前はない、常に曖昧だった。


 たしかにクロの言うとおり目的のために、仲間が必要だった。

 でも、お前はそれを受け入れていたじゃないか。


 確かに有能だった、使えると思った、そう思っていたのは間違いない。

 出会ったのがクロでなければ、使えない奴だったら仲間になんてしなかっただろう。

 それをいま言うのか?

 おれよりも、あいつらの方がいいのか?

 思考の闇にハマる。 ネガティブなことしか考えられない。


「カナタ!!!しっかりしてください!! クロを取り返しましょう。今の俺の力では手錠が外せないので、一度ホームに戻ります。歩けますか?」シロが繰り返す。


「あ、ああ……」

 カナタは辛うじて返事を返した。


 クロが連れていかれた後、今のシロには頑丈そうな手錠は外せない、カナタとシロは重い身体を引きずって、一度ホームに戻った。

 工具を使い、外した。

 その間カナタは一言も話さなかった。



「カナタ、カナタ!!!カナタ、クロを取り返しましょう」

 クロを救出し、本音を聞こう。

 本当におれの前からいなくなりたければそうすればいい?

 覚悟を決めろ。

 言うとおりだ、クロに執着してはいけない。


「あ、ああ」

 だが、しょげていても仕方がない。

 クロを救う、そのことに頭をフル回転させた。

 今回は戦闘が目的じゃない、クロの救出。

 謎部隊について情報を集め、作戦を立てた。

 施設の場所と突き止め、クロの救出に向かったのだ。

 盗み出すのはお手の物だ。



 

■■

 クロは現在、謎の覆面部隊に拘束され乗り物で運ばれている。


 最後にオレが見た光景それは、謎の部隊に五感を遮断されるまでシロが叫び、這い蹲ってる姿だ。

 オレの方に、痛々しい体で進もうともがいていた。


 カナタはオレの罵倒に衝撃を受けたようで、放心状態だった。

 悪いことをしたと思う。


 でもあの状況は、おれが捕まりカナタとシロの安全を確保することが必要だった。

 もうカナタたちはこの村から逃げおおせただろうか、もし可能ならおれもこの集団から抜け出したいのだが、無理なら…………。



 どこかの建物に到着した後、身体を金属の台に縛られた。

 両手両足は動かぬように金属で台に固定されている――と気づいたときには手の甲から薬物を投与された。


(オレ、えっと……奴らについていって、……それからどうなったんだっけ?)

 記憶が途切れていて分からない。


 暴れ力を籠め脱出を試みていたが徐々にまるで酒を飲んでいるような感覚に陥る。

 強力な薬物の力で気持ち悪い、楽しい、ふわふわする、なにかの呪縛にかかったような気分だ。

 しばらくして目を開けていられず、眠りに落ちていった。



 秘密を守るためには理性が必要だ。ならば理性を狂わせてしまえばよいという考えだったようで、オレは自白剤を打たれた。



「この暗号を10分以内に解け」

 覆面男に暗号を解けと命令された。

 オレを捕えた理由はこの難解な暗号を解かせたかったらしい。


(あぁ……きもちわりィ……自白剤打たれちゃ思考スピードはマイナスだろ……。……こいつら馬鹿なのか?)

 そう思ったが、言わない。

 結局、ノロノロと指示された暗号を解いていくことはできた。

 オレにとってはこれを解いたとして、世の中がどうなってしまうのかはどうでもよかった。



 あれから何分何時間何日たったのだろうか。

 数日、活かされては命令され薬を打たれ、暗号を解かされる日々。

 オレは目の前に出される問題に思考も回らず勝手に腦から必要な答えだけ引き出され紙に書かれてゆく。

 その事実さえも認識できずに。

 ――――――――――■


 <数日後>

 カナタたちは、オレが自白剤が投与されている現場駆けつけ敵を蹴散らしてくれた。オレはカナタに抱えられて脱出した。

 まだ薬が抜けない状態のオレにカナタが話しかけてくる。


「クロ、お前は本音を聞きたい、ホントはどうしたいんだ?ホントに艦を降りたいのか?」

「お、、、れ、、」

 オレの気持ち? オレの本当の意思など示したことが無い。

 団長に迷惑になりたくなかった。オレは人を不幸にするんだ……。


 今回の事で悟った。

 異常者は白い目で見られるだけじゃない、実験動物にされるだけじゃない、周りにいる人も巻き込むのだと。

 オレが暗黒盗賊団にいてもいなくても、もうカナタが狙われてしまうのだろう。

 もともと盗賊は命を狙われる。

 それが一団体増えただけだ。

 そう開き直る自分と、オレのせいでカナタに迷惑がかかる申し訳なさでもう一緒にはいられない、出ていくべきだと考える自分がいる。

 正解はない。

 自分がどうしたいかだ。


「………オ………レ………だ、ん、ちょー…………と………」

 ……冒険したい。




 自分の本音など一度も言ったことがない口は、今回もきちんと意思従い空を切った。

 そう思っていたが、クロは薬が抜けていなかった。


 カナタはクロの意思をきちんと聞き入れた。


 カナタの口角が緩やかに優しく上がる。

 普段の粋のいい、わざとらしい人を喰ったようなワルモノ顔の笑みではなく、母の様だった。

「そうか」

 カナタの声が聞えた。


「もう大丈夫だ、休んどけ」

 だいじょうぶ、やすむ…いう言葉を頭の中で繰り返す。

 これは自白剤の効果なのだろうか、『大丈夫』その言葉の意味を理解したら、後はカナタにすべて任せていいのだと、何も心配も怖いこともないのだと、何を根拠になのだろう、安心できた。


『休む』も同様に理解したら眠気が襲ってきてクロは眠りに落ちた。

 安らかな寝顔だった。



1章END


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