39.神崎雫の可憐なる一日 前編
閑話っぽいですが、ストーリーにつながっているため本編です。
side:神崎雫
「兄さん行ってきます…」
「おう、行ってらっしゃい」
スタンピードで学校が休みになり、今日は約1週間ぶりの学校です。すごく憂鬱な気分です…。
あ、決して学校が嫌いというわけではなくてですね、スタンピードで私たちがとても有名になってしまったことが問題なのです。
私の家から学校まで徒歩10分程で着きます。つまり、1キロも離れていないわけで…
「ねぇ、あれ神崎雫さんじゃない?ほら!氷雷姫の!」
「え?ほんとだわ!嘘!同い年だったの!?」
この通り、人通りが多いのです。そのため、いつにも増して視線が集まっていることを理解しました。
ええ、私の容姿が整っていることは自覚しています。毎日兄さんに可愛いと褒められ、学校では頻繁に告白されたら嫌でも気づきます。…まぁ、誰とも付き合ったことはありませんが。
いえ、高飛車ぶっているわけではなくてですね、兄さんがとても魅力的すぎるのです。自然と褒めたり話しかけたりと気遣いができて完璧かと思いきや、研究の時は何も視界に入らなかったりとまじめな部分もあって…っと、とにかく!兄さんが悪いのです!ええ!
…それはともかく、今までも遠巻きに眺められている視線は感じていたのですが、今日の視線の量は多すぎます。認識阻害のローブを被って登校したくなってきてしまいました…。
っと、この十字路に来たということはそろそろですね。通学路の半分を過ぎると、いつも通りダッダッダッと走ってこちらに向かってくる音が聞こえてきます。
「おっはよー!しずくー!いつのまにか有名人だねー!」
「おはようございます、美咲さん。ひそひそと話している声が多くて憂鬱な気分です…」
「はぁはぁ、美咲ちゃん走るの速いんだからもう少し手加減してよ!あ、おはようしずくちゃん!今日もすごい人気だねー…って、いつもとなんか違う?」
「おはようございます、優香さん。…インタビューのせいですよ」
「そうそれ!やっぱりしずくちゃんテレビに出てたんや!すごくカッコよかったよ!」
私が学校へ向かう時は明るい性格の、時々似非関西弁を使う美咲さんとそのストッパーのような、眼鏡をかけたいかにも真面目!という雰囲気の優香さんと合流します。この2人は私の数少ない友人であり、素で話すことができる相手でもあります。
無事で良かったーとかあれが凄かったーなどと色々な話をしているとあっという間に校門を過ぎ、教室に着き、扉を開けた瞬間にタタタタッという音と共に人影が飛び出してきます。
「しずしずー!おはよー!サイン頂戴!最新版で!」
「おはようございます、夏美さん。またですか?」
「うん!学校のアイドルしずしずのサインは持ってるけど冒険者しずしずのサインがないからね!」
「兄さんならまだしも、私のサインなんて何がいいのだか…」
そう言っても結局私はサインを書くのですが…こんなやり取りをしていても気兼ねなく話せる友人の1人です。美咲さんは1年生のころは違うクラスだったのですが、2年生になって同じクラスになった時に新学期から2,3日たった頃いきなりファンになりましたって突っ込んできました。
最初は怪しすぎて軽く避けていたのですが、懲りずに何度もやってきて昼などに話しているうちにいつの間にか仲良くなりました。
元々彼女はこの学校において順位など全てが二位、つまり私の1つ下だったのですが、自分は成績を見てはいつも上にいる私をライバル視しているのに一切相手にしないどころかどうでもいいような表情をしていた私が嫌いだったそうです。
ですが、1年生の最後辺りに私が美咲さんと優香さんに勉強を教えているところを目撃したときに、しばらくこっそり覗いていたら認識が激変したそうです。
いうのも恥ずかしいのですが、聞かれていた話というものが理想の男性というもので…その時に私が理想の男性の話からいつの間にか大好きな兄さんの話と変化した一部始終を聞いたらしく…ギャップ萌えしたと言われてしまいました。
その話を聞いてから認識が変わり、意図的に避けていたのもやめたらしく同じクラスになったことを機に話しかけられ、いつのまにか仲良くなっていました。
でも、あれは仕方がなかったのです。何でそんなに勉強ができるのかと聞かれて、ついつい勉強を教えてくれる兄さんの話と1位報告をした時のギャップの素晴らしさを話してしまったのですから…。
話が脱線してしまいました。何の話をしていましたっけ?えっと…
「神崎さん!これを読んでください!」
あぁ、これはいつものですね…。ですが、新学年になってからかなり時間が経った最近は減っていたのですが、インタビューの影響なのでしょうか?いえ…そんなミーハーな感じじゃなさそうですね…しかし答えは決まっていますが…。今はとりあえず何か言わなければいけませんね。
「ありがとうございます。時間ができ次第読ませていただきます」
「は、はい!」
そうこうしている間に、やっと先生がやってきてホームルームが始まりました。
☆★☆
「しずくちゃん!一緒に帰ろー!私がしずくちゃんの兄様の代わりに護衛を努めなければっ!しゅっしゅっ!」
終了のチャイムと共に美咲さんがやってきました。しかし、今日は先生に放課後職員室に来るようにと呼ばれてしまっているためまだ帰れません。
「ごめんなさい、進路のことで先生に呼ばれていて…まだ帰れません」
「なんですとぉ!じゃあとなっつとゆうかと待ってるよ!ね!」
「え?私はまだ何も言ってないよ?!いや、もちろんしずしずの事は待つけど!」
「私も待ってるね」
「はい、行ってきますね」
職員室までなんて目と鼻の先なのに、今日は何故か人がいっぱいいます。何故なのでしょうか?…はい、分かっていますよ。視線と会話内容からどう考えても原因は私みたいですね、幸い道を塞がれる事はないのでまるでモーセになった気分です。人の海よ割れろー……ごめんなさい。
はい、意外とすぐに職員室までたどり着くことが出来ました。しかし、なぜ職員室というだけでこんなにも緊張するのでしょうか?ダンジョン会館の奥の部屋と同じ気分です。とりあえず入らなければいけません…。
「…失礼します」
「あ、雫さん来たわね?こっちの相談室で話をするから付いてきてくれるかしら?」
「わかりました」
正直、進路の話をするとしか言われていません。やはり突然進路を変えたことがダメだったのでしょうか?
「雫さん、あなたは本当に進路を書いてある通りに変更するの?確かにこの前まで目指してた桜王学園はダンジョンによって廃校になってしまったけれど…」
桜王様はろうおうです。おうおうじゃないです。編集時に作者がおうおうと読んでもろうおうです!




