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30.後藤梓という者

短いです。

side:後藤梓


「…次。…まだまだ、まだ弱い。」


 まだ弱い、モンスターも自分も。こんな実力じゃ勝てない、倒せない。あのグリフォンを、ヒュドラを、サラマンダーを殺すことができない。まだ、故郷を、家族を、友達を焼き尽くしたあいつらを滅ぼすことができない!


 足りない…全然足りない!質も量も何もかも!


 数も!


 時間も!


 レベルも!

 全部足りない!


 獣風情じゃ、オーク程度じゃ私の足元にも及ばない。相手にすらならない!オークの次はオーガ、お前たちだ…私の経験値になれ…。


…確かにオーガは強い、獣よりもオークよりも断然強い。だけど、あいつらよりは弱い。この程度なら、宝箱から出たこの短剣で充分切ることが、殺すことができる、できてしまう。


 私は、襲い掛からんとする多数のオーガの腕を、足を、首を切りながら問いかける。


「ねぇ、あいつらは、お前たちオーガの何倍強い?」


 オーガは答えない、答えられない。言葉を知らないから答える方法がないから?答えを知らないから?どれも当たりで全部違う。そう、答える前には、全てのオーガの首が飛んでいるから。


 オーガは、連携など一切気にせずに、次々と減る同胞の仇を討たんとばかりに私の方へどんどん突っ込んでくるだけだ。こいつらはただの脳筋にしか思えない。脳筋の単体相手なら負ける要素が一切ない。


「ねぇ、私はあと何体倒せば、何回レベルアップすればあいつらより強くなれるの?」


 果てしない道、遠すぎる目標だとしても私は強くならなければならない。


「強くなる、強くなるって何?レベルが上がる?技術が上がる?違う!あいつらを、あいつらのレベルを越えることだ!」


 確かにまた次々とレベルアップしている。脳内に響く無機質な声、これで確かにあいつらに一歩近づいた。だけど、全然足りない。


 まだ、もっと、いっぱい、経験を、レベルを、経験値を。


 今の私の実力はオーガと互角だ。いや、所詮オーガ程度と互角なのだ。


 あいつは、サラマンダーは火をはいていた。

 グリフォンは空を飛んだ。

 ヒュドラは毒を吐いた。

 

 今の私に必要なのは避け、追いつく速度と敵を掻っ切る力、ならば速度と筋力に今手に入れたポイントを振ろう。


 さっきまでは少し強かった、今は互角、もうすぐ格下になるオーガ。でも弱い、オーガも私も、まだまだ弱い。


 もっと強い敵を、経験値を、武器を、スキルを、技能を、寄越せ!


☆★☆


 ダンジョンが世界に現れた日、あの日全てが変わった。あの日私は、お父さんと港にいた。船でドライブしてくれるという私のお願いを聞いてくれて、内陸の方にある私たちの家からはるばる港に来た。先にお昼を食べようという話になって、

 お店に向かおうとした時……私の運命が変わった。


 地面が揺れた、地震が起きた。地震は中々止まらず、5分は続いていた。そして、何かが砕けるような音とともに、声が響いてきた。


 封印、ダンジョン、ステータス、荒唐無稽としか思えないそんな話の途中に、突如、何の前触れもなく、目の前に巨大なトカゲのようなバケモノが現れた。

 そのバケモノは私を食べようとして……私を突き飛ばしたお父さんを食い殺した。

 それどころか、内陸の方へ火を吹きながらゆっくりと向かい始めた。突き飛ばされた私は、その光景を最後に気を失ってしまった。


 気がついた時には全てが終わっていた。気絶していた私が起きた時には既に自衛隊の船で助けられた後だった。

 …違う。私だけ、助かったのだ。


 お母さんも、お姉ちゃんも、そして私の目の前でお父さんも殺された。町のみんなも全員殺されたのだ。

 トカゲのようなバケモノのせいで港は壊滅、船は炎上。逃げる手段すら存在を許されなかった。


 北海道は、10分間で滅びた。たった10分間で全て燃やされた。畑も船も建物も、そして人も全部が炎に包まれた。

 きっとあのバケモノも、英雄ジークムントなら倒せただろう。でも、たった10分でいきなり現れたバケモノを全て殺すのは絶対に無理だ。彼でも北海道が壊滅するのを防ぐのには間に合わなかったと思う。


 あそこは、私の故郷は北海道なのだ。例え燃えていても跡形もなくとも故郷なのだ。北海道は本州からも近いのだから、万が一のためにあのバケモノを殺せる存在がいなければならない。


現れる?いや、なる。

誰が?私が。


 私がトカゲを、ヘビを、トリ頭を、殺す……。


 …結局あの後、私は私を助けてくれた自衛隊のお姉さんに引き取られた。あなたしか助けることができなくてごめんなさいと言われたが、違う。あいつらは誰も生かすつもりはなかった。私が助かっただけでも奇跡なのだ。

 一瞬だけつながった救援要請を受けて北海道に近づくと、一人だけ息がある人を確認したようだった。ただ唯一の生き残りそれが私。あの悪魔共を殺すための人間。


 冒険者制度ができるまでの3ヶ月間は、体力をつけるために走っていた。


 しかし私は中学3年生だったから、冒険者は年齢制限でダメだと言われてしまった。でも、神奈川で特例として1人の中学3年生が冒険者になったと知らせが回ってきて、私についた称号という情報を交換条件に出したら、同じく特例として許可が出た。


 最初は、毎日ダンジョン登っていた。だけど、それはお姉さんに禁止されてしまったから人が一番来る土曜日を休みにして、1回1回を長く潜り始めた。


 5階層のスライム、核を切るだけの作業だった。


 10階層のゴブリン、臭いだけの雑魚だった。


 15階層のオーク、ギリギリの戦いだった。そこで実感した。私の限界はたった15階層だったんだ、しかもここはまだ初級ダンジョンだというのに。ここが初級なら、あいつらが、あいつらに、あいつらを殺すにはどこまで登らなければいけない?


 あと何回、何体、何度レベルアップをしなければいけない?


 レベルで追いつくことができないのならばまずは技術を磨こう、雑魚相手に技術を。格上とのレベルの差を、技術で埋められるように。


 次はレベルを上げよう。装備は宝箱から出たものがある。だから、技術では届かない高みへと登るために、レベルを上げよう。防御はいらない。あいつらの攻撃は、食らった時点で負けだ。魔法はまだ要らない。MPがもっと増えてからでいい。


 小柄だけど、それを生かして短剣を使おう。スピードとパワーで急所を叩けばいい。


 オークはもう超えている、オーガは今超えた。



 次は誰だ?次は何だ?次の敵は…どこだ!

読んでくださりありがとうございます。

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