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2.迷宮神ラビリス

 気づくと怜は、白い世界にいた。辺りには何も…ん?見間違いか…?んんっ、見間違いではなかったようだ…。


 怜はとてつもなく困惑し、混乱した。そう。なぜか、なぜか目の前に全裸の少女がいた。

「※☆♪$¥#〒々?」

「あー、この星の人?」

(ふるふる)


 怜は地球上の言語なら全て習得している。だから、言語が通じない時点でこの全裸の少女の正体を幾つかに絞った。

 もしも地球人ではないとすると、別の星から来た未だ知らない言語を操る宇宙人が存在したか、それともまだ会った事がないはるか昔にいたとされる神と…神!?と、そこまで考えた後に極めて冷静に…はなれずに少女へと問いかける。


「もしかしてお前神か!?」

(こくこく)

「神かよ!って反応できるってことは俺の言葉通じてるよな!?」

「あー、バレちゃった?素晴らしい洞察力、10点プラス♪」

「点?…で、お前が最初に喋った言葉が、昔世界に魔物が溢れていた時に使われていた古代言語でいいのか?」

「ザッツライト!その通りだよ神崎怜くん!10点プラス♪」


 怜の頭には「さっきから点数ってなんなんだ?」という疑問がわいてくる。しかし、それよりも気になることが1つあり…。

「とりあえず…今まで俺が着ていたやつで悪いけど、これで隠してくれ…」


 そう、自称神様は今全裸なのだ。確かに神の像は全裸なものが多い。神は造形から完璧だから裸を晒すことに羞恥心を抱かないなどとよく言うが、確かにそういわれるだけのプロポーションを誇っていた。

 しかし誰に見られても恥ずかしくない美を誇っていたとしても、怜が見てどう思うかは別問題であった。


「おお!紳士的!プラス100点!」


 怜は「おいおい、服を渡しただけでめちゃくちゃ点数を貰えたぞ…」と内心思ったが、怜がオーパーツについて調べた時に時折逸話が残っていた存在が神様なら、怜にとって悪い事にはならないだろうと考えそのまま話を続けることにした。


「それで、神様が俺を呼び出した理由はなんだ?俺はてっきり、あのタイマーはゼロになった時に神様が復活して魔力の封印も解けるタイムリミットだと思っていたんだが…もしかして神様は復活直前の状態で、周りに見えるこの白いものが結界なのか?」

「おお、極めて冷静!だがその答えは惜しいね!プラス5点だよ!」


 惜しいと言われ、もしかしたら結界が壊れた衝撃ですでに世界が…とか、まさか神様が施した再封印に俺が巻き込まれたりしたのか…など考えたが、「そしたら俺の雫(妹)はどうなるんだ…」と考え、それはないし絶対にあり得てはならない事だなと考え、即座に否定した。


 そう。この男、起こり得る可能性に妹に危害が加わる条件が付いただけでその選択肢を排除するほどの重度のシスコンなのだ。その偏った思考で考え、導き出された答えは…と答える直前でラビリスが言う。


「今は、私が実体以外を完全に取り戻した時であり結界を徐々に解除していく直前だよ。そうしないと…」

「…滅びるから…か。」

「そう♪プラス50点だ♪」

 

 世界が滅びるという話なのにラビリスは心底嬉しそうに、はにかむように笑って答える。

 昔、モンスターとの戦いが身近にあった人々でさえ滅びかけた時に神々が封印を行ったのだ。その時に封印された魔力の量は計り知れないだろう。封印を徐々に解いていくことは、現在のような魔力が存在しない世界が滅びないための最低限の条件ともいえた。


「ちなみに私は最も新しき神。ダンジョンの神、ラビリスって言うの♪」

「ラビリス…ラビリンスから取った迷宮神ってとこか?」

「正解♪プラス10点♪」

「その点数ってのは…いったいなんなんだ?」

「これはね…えーっと…スタートダッシュキャンペーン?事前登録?あ!βテストのボーナスポイント!」


 ラビリスが言っていることを考える。全てゲームに関係しているし言っている事はわかるが、ポイントとどんな関係性があるかが分からなかった。

 怜自身、雫と一緒に見ていたダンジョンが出るようなアニメを見て、その本を読んでハマり、雫とやるために買ったゲームにハマり…といつの間にかサブカルチャーについてはかなり詳しくなっていた。しかし、それらの共通点というと…あ…


「チートが貰えるのか…?」

「惜しいけど外れ!マイナス5点!」

「答えは…最初に能力値を付与できる点数だよ♪」


 そこまで言われれば頭の回転の速い怜に結論を導き出すことは容易であった。

「つまり、能力値…ステータスが見える。そしてその付与のボーナスポイントが増えているのか。」

「あたりだ♪さて…」

「っ!?」


 今までの柔らかい雰囲気はなりを潜め、厳かな雰囲気に変わる。もし最初からこの雰囲気に当てられていたら出会った直後に神であることに気づいただろう神々しい雰囲気、覇気、神気。


 ラビリスは言う。怜が優れている点を。


「神崎怜16歳。誕生日は2月29日、趣味は妹と遊ぶ事。家族構成は現在妹と2人で何よりも妹を優先。

過去に神童と呼ばれ、その時行っていた研究により我々の古代語とルーン語を解き明かした。素晴らしい…最高だよ!怜くん!君以上に適性を持つ者は居ないよ!」


 ラビリスが告げる。自分と妹以外の誰もが信じなかった衝撃の真実を。


「この平和な世界はもうすぐ崩壊する!そこからは物語のような世界が始まる!」


 ラビリスは問う。これからの道と、特別である怜にこれからの選択肢を。


「君には二つの選択肢がある!1つ目は結界が崩れる日までそのまま過ごす。2つ目は他より先にダンジョンへ潜る!2つ目の選択肢では私がサポートを努めよう!」


 怜は考える。これは怜が妹を一番に考えるということさえ知っている神からの提案だ。とても魅力的な提案だがやはり疑問が残る…。であれば質問するのみ。


「そこまでして俺に何を求める?」

「君に求めることはただ1つ!人々の先導者になることさ!今の時代、結界が緩んできた事による影響か、人々は創作の中で本能的にダンジョンが、魔力が、魔法があった世界を思い出し創作として楽しんでいる。

 しかし!突然異形が現れた世界で一体何人が現実に対応できようか!何人がモンスターと戦えようか!

 きっとこの世界の人々は逃げ惑い、蹂躙され、敗北するだろう!だがこの世界は…この世界の人々は最初の一人が…つまり君が現れたら、太刀打ちできなかった相手に対抗する術を示したら立ち上がるだろう!参戦するだろう!そして人々は想うだろう。それから力を求め、渇望する!」


「もっと強い武器を!


 もっと強力なステータスを!


 もっと高度な魔法を!


 願うだろう!

 求めるだろう!

 憧れるだろう!


 そう!君は人々の憧れになって欲しい!」


「しかし…」

「しかし、有名人となったら平穏が崩れる…かい?」

 その通りだった。怜は、他人よりずっと有名になるというリスクを知っている。


 もし有名になっても自分が追いかけ回されるのは良い。だが、きっと強者に向けられる言葉は感謝だけではないだろう。そしてその矛先が雫に向かうなど絶対に許せることではない。


「なぜ助ける術があるのに助けてくれなかった、もしお前がもっと早く来ていれば助かった!」


 なんの保護もされていない鋭い言葉の刃が容赦なく襲い掛かるだろう。

 自分に言われてもただ流せばいい。しかし、「お前の兄のせいだ。」「妹を返してほしくば戦力になれ。」などと、雫に何かがある可能性は消さなければならない。なぜなら、妹が最優先だから。


 この話に乗れば力が手に入り、世界が変わっても雫をモンスターから守れるだろう。しかし、人からは守ることができなくなってしまう。だから…

「だから残念だけ「そんな問題は簡単に解決するよ?」」

「え?」


 怜の葛藤を、出した答えをあっさりと切り捨て道を示す。

「君が読んだ文献を!君がその目で見た壁画を思い出してみよ!あれらは真実!すべては現実だ!今までの空想はこれからの現実となる!」


 言われて怜は思い出す。壁画を、文献を、オーパーツを。多数の異形、応戦する人々…そして…

「「…魔法」」

「魔法を使えるようになる方法は2つだ。1つ目は位階…いや、レベルアップによるスキルポイントでの取得。2つ目はルーン語の解読による魔法の作成」

「ちなみに、ルーン語を完全理解した者の魔法とスキルポイントで取得した魔法は理解したものの方が威力などに約2倍の差が出る。しかし、理解できるものの方が少ない」

「なん「どうしてかわからないって感じだね!答えは簡単さ、理解できないからだよ。」」


 自分の疑問を読んでいるかのように解決し、説き伏せるラビリス。そして、理解できないと言われたルーン語についても自分で考えてみる。

 …答えは簡単だった。確かに理解しようとしないのではなくできないのだ。


 確かに怜は理解した。しかし、神童と呼ばれ、天才と囃された本物である怜をもってしてもあれだけの時間がかかったものを唯の人間が理解することは実質的に不可能だったのだ。


「そう♪だからこの役割はすでに理解している君にしかできない。さあ、どうする?」


 確信した笑みで問う。

 …ああそうだ、怜の答えは一つだった。その通りだった。ラビリスの予想通りの。

「やるさ、妹を守れる手段が増えるのならなんだってな」

 その言葉を聞き満足そうな顔になるラビリス。ならば次は手順だと説明を続ける。


「さあ、最初はポイントを振ろうか♪君の初期ポイントは10万175ポイントだよ♪」


「…は?」


「ステータスポイント、スキルポイントそれぞれ10万175ポイント♪いっぱいだね!」


 思わず言葉を失う。だが、それは聞き間違いではないと主張するかのようにラビリスは言葉を繰り返した。

 怜は「175はさっきの点数だろ?」と理解できるが、残りの10万の出どころは一切分からなかった。せめてもの悪あがきに聞いてみる。


「…もしかして、最低でも1000ポイントからの交換とかか?」

「ん?火魔法レベル1で10ポイントだよ?ステータスも1ポイントで1上がるよ?」

「ちなみに初期の筋力のステータスは…?」

「君は…17かな?」

「ダメじゃねぇか!貰いすぎだろ!配点教えろよ!」

「えっと、初期値で5ポイント、さっきまでで175ポイント、マジックアイテム初起動者特典で5ポイント、ルーン語初完全解読者特典で99990ポイントかな?」

「たか!ルーン語たか!ポイントの九割九分九厘占めてるし!」


「まぁまぁ、私の後に続いて、ステータスオープン♪」

「ステータスオープン…」


名前:神崎 怜 職業:(未選択)

 種族:人間

 LV:1

 HP:100/100

 MP:0/0

 筋 力:G

 防 御:G

 魔 防:G

 知 力:B-

 精神力:E

 生命力:E

 速 度:G

 器 用:C+

 会 心:E

   運:D

 CP:100175

 SP:100175

固有スキル:完全記憶

  スキル:言語理解:Lv. MAX ルーン言語:Lv. MAX 限界突破:Lv.3


「本当にポイント大量だし…。限界突破ってなんだ?」


限界突破

 使用するとLv.×5分間全能力値が1段階上昇。クールタイム24時間。


 取得条件:限界を超えて一つの作業に取り組む。(24時間以上一つのことに取り組み、目標を達成で取得)


「過労かよ!」

「ラビリス、ステータスに数値じゃなく英語で表記されているのはなぜ?」

「それはね♪種族によって限界が違うからよ♪

 例えば、人間の筋力は限界で10000だとしたら、10000になった時点でステータスはS表記。だけど、例えばミノタウロスの筋力の限界が100000だとすると100000でS表記になります!つまり、限界までどれ位近づいたかを示すのがステータスなのよ♪

 ちなみに、平均型の人間の場合、51~100がF、101~200がEのように、1段階上げるには50,100,200と倍ずつ増えていくから覚えておくといいわよ」

「あ、スキルレベルは使いまくるか初期スキルだと次のLv.×10でレベルを上げられて、最大でLv.10ね」

「ほう…ありがとう。試しに能力を上げてみるよ」


 怜は方針を決めた。膨大なポイントがあっても基礎を大切にすると。

 基本ができないのなら発展させることなど不可能。そのことを世界で一番理解しているだろう怜は、ステータスに振り回されない戦いをするために、技術が身につくまで段階を分け、上げすぎないことを決意する。

(まずは全部Fに上げようか。筋力は…っと、33ポイントでFか…確かに筋力は17って言われたな…。んじゃ、他も上げて…あー、魔法なんて存在しなかったから魔防は0だったのか。)

(…よし…って残りのポイントは100028もあるよ…。)

(…もう全部Eにしちまおう!)


名前:神崎 怜 職業:(未選択)

 種族:人間

 LV:1

 HP:100/100

 MP:500/500

 筋 力:E

 防 御:E

 魔 防:E

 知 力:B-

 精神力:E

 生命力:E

 速 度:E

 器 用:C+

 会 心:E

   運:D

 CP:99128

 SP:100175

固有スキル:完全記憶

  スキル:言語理解:Lv. MAX ルーン言語:Lv. MAX 限界突破:Lv.3



読んでくださりありがとうございます。


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