14.プロローグ
雫はヒロインです。軽いギャグ回です。
夕飯を食べ、ゆったりとした時間が流れる。日付的には前に食べたのが昨日でも、何年も食べていなかった怜は猛烈に感動していた。そして、6年ぶりに見た雫をちらちらとみていた。しかし、話があると言っておいた手前、何も言わないわけにはいかないので、雫にダンジョンと封印の話をすることにした。
「さて、わが家の女神雫よ、俺は6年ぶりに雫と会ったわけだが、その間にダンジョンを攻略して神を連れてきた」
「…どこから突っ込めばいいのですか…?」
〈まぁ、そんなこと言われても信じないわよね〉
ラビリスが念話でそんなことを言ってきた。怜は、そんなわけないじゃないか、雫は自分がしていた研究を知っていたのだぞ?と考えながら何かを考えている雫から出る、次の言葉を待つ。
「とりあえず、神様は犬と狐のどちらですか?」
〈信じてる!?〉
なんと、雫は信じた。ラビリスは衝撃を受けた。そして中々惜しいことを言った。
「あー、神様は剣になってこの動物たちは神獣だ」
〈おかしいよね!?神が剣っておかしすぎだよね!?〉
自分が剣で神なのにおかしいとディスるラビリス。今の様子では、神としての威厳もなにも残っていない。むしろ神界にいる方のラビリスに全て忘れてきたのかもしれない。
「神様は剣になった…ペットじゃなくて神獣ですか…」
〈そう!正気を疑うよね!?〉
正気を疑う原因の剣であるラビリス。自分の神器をとことんディスっていることに果たして気づいているのか。
「ペット用のエサをと考えていましたが…神獣ならば一緒のごはんのほうが良いのでしょうか?あと、剣が神様ならば、剣に意識はあるのですか?」
〈そっち!?というか飼う予定だったんだ!?その前に論点違うよね!?クッソオオオ!届けこの思い!〉
遂に耐え切れずに叫びだすラビリス。しかし、この念話は所有者である怜にしか届かない。届かない思いを伝えるために人化すればいいのに、良いというまで人化しないでくれという怜の頼みを律義に聞いている。偉い。
「あぁ、ちなみに全員人化できるぞ」
「本当ですか!見たいです!」
「わかった。カンナ!コフィン!ラビリス!人化だ!」
待ってましたと言わんばかりに人化をする。ラビリスは遂に!といった様子だ。
「わかったの!わたしはフェンリルのカンナ!ご主人に助けてもらったの!」
「はいな!わては妖狐のコフィン、妹さんよろしゅうな!」
「わわわ、しゃべりました!可愛いですね!」
最初に神獣組が人化。中学校に入りたてか小学校6年生くらいの少女が元気いっぱい挨拶をする。耳がぴょこぴょこと動き、雫の目線は完全にくぎ付けになっている。そしてわずかに遅れて剣が光り、人の形に変わりだす。…よかった。服は作成されていた。
「はい、私がスーパープリティーガールこと、迷宮神ラビリスです」
「ラビリス、そのネタオワコン。滑ってる」
「そんなっ!?」
「ふふふ、神様だというから、どんな荘厳な人が来るかと思えば、可愛くて良い人ですね」
そこから雫に、怜とラビリスが知り得る情報を共有した。
やはり古代文明で魔法が栄えていたこと
人類は滅びかけて神々が封印をかけたこと
封印がもうすぐ解けること
そして、ラビリスから補足として、封印はあと1ヶ月で解け始め、そこから3日で完全に解けること。
更に、魔素は電波を通しにくくすることと、魔素があると電気に抵抗がかかることを知った。
つまり、ダンジョン内やスタンピートのような魔素が濃い空間では、今までの電気を使った機器は一切機能することがなくなるということだ。怜は、てっきり時空のダンジョンだから腕時計などの機械が動かないと思っていたら、魔素の影響だったようだ。
しかし、魔導具が存在するように魔力は電気と同じ利用方法ができる。魔力を直接注がなければいけないと思ったが、魔石が電池の役割をしてくれるため、時空のダンジョンで大量の魔石を得ていた怜にその心配はないようだった。
「つまり、お兄ちゃんは俺強え!のテンプレさんなんだね!すごいよ!…はっ!に、兄さんはすごいんですね!」
雫は大好きな展開が兄に起きていたと知ってつい興奮してしまったが、兄は「そんな雫もかわいい!」思うのみだ。特に気にせずそのまま話を続ける。
「そうだ、雫のために頑張ったからな!ってわけでこのスキルを見てくれ!『転身』!」
怜がスキルを使った途端、怜が光り、怜が2人に増えた。増えたように見えたのではなく、本当に増えていた。
「わ、兄さんが増えました!幻影ですか?」
怜は、残念ハズレだ、と言いたげにドヤ顔を我慢しながら質問に答える。
「「どっちも本物さ」」
「左の俺がオリジナル最強お兄ちゃんで…」
「右の俺が複製クソ雑魚お兄ちゃんだ!」
「…ふぇ?」
☆★☆
「つまり、イチさんは兄さんの変装、偽装、魂縛魔法、並列思考が条件で手に入ったスキルによって生まれた存在なんですね?」
そう、人々を先導し憧れになるという役割を行うときに必要になると考え、一番最初に取ったはいいが、誰もいないダンジョンで変装する意味など一切なく、両方とも未だにLv.1だった。だから、変装と偽装をSPを使ってLv. MAXにしたのだ。先ほど、面白そうなスキルが無いかなと習得可能スキル一覧を見ていたら新たに習得可能になっていた。ちなみに、エクストラスキルで必要SPは5万だった。
効果は、自身の魂を複製し、偽装と変装で自身の情報と姿を決定、そして並列思考で思考回路を補う魔法であり、肉体の基礎ステータスはコピーした本人に依存する。つまり、自分で言うように今のイチは怜の初期値と同じ、筋力17のクソ雑魚だ。ちなみにイチと言うのは怜が零だからレイの次のイチという極めて安易に考えた名前だ、雫が。だから怜もイチにも文句など一切ない。むしろイチになりたいまであった。
このスキルによって作り出された存在のステータスを上げるには、術者のCPとSPを使用する必要があり、常人では、CPとSPを使わないで余ることや、限界値になっても尚残ることなどない為、実質怜にしか使えないスキルだ。しかし、名前やステータスを偽っているわけではない為、鑑定で一切偽物だということはばれることはない。
「さあ!人を先導出来るような姿を考えてくれ!その姿で先導するから!」
「わ、わかりました!ではまずは髪色を……」
☆★☆
そして出来上がった双剣、黒ずくめの男キ〇ト。
「ふっ、スター〇ーストスト〇ーム!」
「きゃあ!すごいです!そのままですよ!兄さん!」
「ああ、これで先導…できるかあああ!写真撮られてSNSに晒されて終わるぞ!」
いきなり現れたモンスターにキ〇トが立ち向かっていったら、痛い人間か、なりきり超絶ガチ勢としか見られないだろう。しかし、ここに怜のステータスSを軽々突破し、多大なダメージを与える言葉が突き刺さる。
「でも目立たなければいけないんですよね?」
「うっ…」
「モンスターが溢れたら平和な日本なんてあっという間に滅亡ですよね…?」
「うっ…」
「兄さんがその格好でしてくれると嬉しいな…?」
「ぐっ…分かったよ!でもせめて顔まで寄せないで!」
「まぁそれくらいなら…」
そこから先、方針を決めた。結局、作り上げた姿は使わずに偽装と変装で行うことにした。よく考えれば怜の偽装を通るような鑑定持ちなんて、最初期から存在するはずがないのだから。だから、イチは魔道具の作成などの単純作業をすることになりそうだ。
流れ的にはこうだ。
封印解除の日、神界にいる方のラビリスが封印が解けたこと、世界の仕組みが変わったこと、ステータスについてと取得方法を神託というスキルで全世界に伝える。そして全世界に映像転写の魔法で空に映し、怜がモンスターを倒す姿を流す。地上にいるモンスターの討伐を、できるだけ派手に行いい、憧れや戦う意思を持ってもらうように動く。
ちなみに、過去の文明の時に存在した最強の英雄を、一定時間限定でラビリスが、残りの力を全て使って召喚したという説明で通す。もうラビリスが神様として登場する予定はないのだから。
目標を達成し次第、近くのダンジョンに突入するか、何かかっこいいこと言って転移で家に戻る。
自由に行き来できる転移魔法は残念ながら完成しなかったが、陣と陣を繋げる魔法陣を作ることができたため、登場する予定の場所にこっそりと魔法陣を設置にしなければいけなくなった。
今回は神獣と雫はお休みだ。
☆★☆
封印解除を知らせる地震が起きる、テレビからは速報、スマホからは避難しろと言うかのように音が鳴り響く。
「用意はいいな?」
「おっけー♪いっくよー!」
空間にヒビが入り、ラビリスの声が響く。
《聞こえますか?人間達よ……
ここまでで1章にするか悩みました。
読んでくださりありがとうございます。
次の更新は明日の20時です。




