13.エピローグ
これで一章終了です。
「…し…ん……主人……ご主人!」
怜は、自分を呼ぶ声が聞いた。ここ数年一緒に過ごしてきたかわいらしい声だ。徐々に覚醒する意識、目を開くと自分の顔を覗く4つの目があった。
「ご主人!良かった!」
「ご主人のだら!」
「よお…100階層、誰一人欠けることなく勝てたな…」
話を聞くと、あれから動ける者は居なく、まず、無事呪いが解呪されたコフィンが意識を取り戻し、怜にひたすら回復魔法をかけ続けてくれていたらしい。邪王龍のオーラには回復効果を低下させるというものもあったらしく、近接で多少瘴気に当てられていた怜は、かなりの時間回復魔法をかけてもらっていたようだ。
まだ起きないほうが良いと心配する二人を説得し、起き上がり特大サイズの魔石とドロップアイテム、宝箱の中身を全てアイテムボックスに回収してから最後の扉をくぐる。
そこにあったのは光輝くクリスタルのような球体。きっとダンジョンが魔力の循環装置であったときからある動力源、ダンジョンコアだろう。怜はそれを手に取る。
「っ!?」
直後、怜の中にクリスタルから飛び出した光が吸収され、頭上から無機質な声が響く。
【時空のダンジョンのダンジョンコアの吸収を確認。ダンジョンが攻略されたことを確認しました。攻略特典に魔法書:時空魔法 不死鳥の霊薬 安置石が与えられます。このダンジョンはおよそ240時間後に崩壊します】
手に現れる本と薬と謎の石。
「『鑑定』」
魔法書:時空魔法
この本を読み、理解することでエクストラスキル:時空魔法を習得する。回数制限はないがルーン語で書かれている。
不死鳥の霊薬
四獣:フェニックスがその魔力と神力を込めた霊薬。少量かけるだけで死したものの魂を呼び寄せ、生き返らせる。効果時間:死後1時間
品質:最高級
レア度:神話級
安置石
ダンジョンの魔物生成能力を利用した石。ダンジョンを攻略すると、必ず手に入れることができる。この石を設置した周囲にモンスターが入れなくなる。効果は、攻略したダンジョンの難易度と使用者の力量に依存する。召喚獣、テイムモンスター、眷属に効果はない。効果と範囲は反比例する。
レア度:伝説級
軽く振動を始めるダンジョン。きっと崩壊の前触れだろう。どうやって脱出しようかと考えていると、突然光が差し込み怜たちを飲み込んだ。
☆★☆
「攻略おめでとう!まさか本当に攻略してしまうなんて思ってもいなかったよ!」
わざわざ作ったのか、ご丁寧にクラッカーを打ち鳴らして祝福してくれているラビリス。様子を見ていたのなら知っていると思うが、カンナとコフィンを紹介することにした。
「ああ、でも一年長くかかっちまった。攻略できたのはこの二人の…ってお前らなにしているんだ?」
「何って神の御前だよ!?」
「わてらは神さんが生み出してくれたさかい!」
いざ紹介しようと二人のほうを見たら、カンナとコフィンが揃ってラビリスに平伏していた。怜が不敬なだけで、神様に会ったならばこの反応が本当は正しいのだろう。最低でも昔は平伏するのが常識だったが、怜にとってラビリスは親しみやすい友人のような認識だった。
「いやいや、君たちは私に創られた存在ではないし、滅亡の原因となるダンジョンを攻略してくれた恩人?さ♪ぜひ平伏なんてせずに立ち上がって英雄の顔を見せてくれないかい?」
「「…はい」」
「うんうん、最期に英雄が見られて良かった♪」
2人は立ちあがり、何とかといった感じで顔を上げる。…しかし、怜には聞き流せない言葉が聞こえた。最期とはどういうことだろうか。一体、ラビリスは何を隠しているのだろうか。
「最期とはどういうことだ?」
その言葉にラビリスはバツが悪そうな顔になった。
「あー。えっとね、最初から説明するね?」
「…ああ」
「君が封印解除までのタイムリミットを刻んだものだと思っていたものは、実は私の神核を完全に解放するまでのカウントダウンだったの。それと同時に結界も壊れる。そもそも神核とは、人々の願いから生まれるものであり神のもととなるもの。鍛冶を行うドワーフの願いから生まれた神核は鍛冶神となり、海の幸や平和を願われて生まれた神核は海神となった。さて、私はどんな願いから生まれたでしょう?」
ラビリスは迷宮神だ。自分でそう言っていた。つまり、迷宮、今でいうとダンジョンが関係している。即ち、そういうことだろう。
「…ダンジョンの恐怖やモンスターへの恐れへの助けを求める願い」
「そう、私は滅びゆく人々が願った、未来を繋げるための希望から生まれた。さて、太古の時代に神々が命を賭してかけた封印、その言葉には語弊があったのだよ。神々が賭したのは命ではなく神核だったのさ。」
神核を触媒にして魔法を発動したのだろうか?それとも、封印の魔法が神核すら耐えれないような術だったのだろうか?どちらにせよ、神々が封印と共にほろんだのは事実だろう。
「私の役目は人々が存続できる未来を創ること、即ち君さ。君の存在が人々が存続できる未来そのものなのだよ。そして、今私は神核を使い封印の効果を調整している。信仰なんて君1人しかいない弱小神の力ではそれが精いっぱいさ。だから封印が解けるときは神核が効果を失くす時なんだ。だから、私は消える。役目を全うしてね♪」
神格は触媒に使っているようだ。だから死とは違う、消滅をするのだろう。そして、多分神様の力の源は信仰心なのだろう。確かに怜は、ラビリスに感謝し信仰していた。
「それと、君がダンジョンで手に入れた神器は神核を分け与えることで創られている。だから神は神器を1つしか創れない。こんな弱小神の神器だけど、これから先使ってくれないかな?」
神器:零
迷宮神ラビリスが創った神器。一人の英雄へとなり得る人物のために創られた。
スキル:不壊 形状変化
レア度:神話級
俺が一番振りやすい大きさ、重さの剣を与えられる。封印を挑戦して消える。それがラビリスの役目、使命なのだろう。この力を手に入れられたこともまだ世界が崩壊していないこともラビリスのおかげなのだろう。
だから気に食わない。死ぬことで役目を全うする?世界のために死ぬ?それで満足なのか?それを認めていいのか?そんなの本人が認めても俺が否定する!
「なあラビリス」
「…なぁに?」
「お前、無理しているだろ」
「……何のことかな?」
「本当は消えたくないだろ」
「そんなことないよ、だって、それが私の存在理由だもん」
あぁ、確かにそうだろう。そのために願われ、そのために生まれた。じゃあなんでそんなに無理をした表情で笑っているんだよ…
「本当にそれでいいのか?役目を聞いているんじゃなくお前の気持ちを聞いているんだ。答えろ!」
「…りだよ…」
ラビリスが何かをこたえる。しかし、残念ながら聞こえてこない。怜は聞き返す。
「…あ?」
「無理だよ!そんな選択肢はないもん!無理なこと言わないでよ!封印を調節しなきゃ…私がやらなきゃ世界は滅びるんだよ!?」
堰が壊れたようにラビリスの本音が聞こえてくる。人の願いを叶えたい神様としての矜持と、生きたいという女の子としての感情がぶつかっているのだろう。まだラビリスの叫びは続く。
「もう神は私しかいないの!叶わない理想なんて言わないでよ!そうさ、まだ存在していたいさ!見たことのない景色を見に行きたいし人の料理を食べてみたい!したいことなんて山ほどあるさ!無茶なこと言わないでよ!ありもしない希望を掲げないでよ!」
「…お前の気持ちはよくわかった」
「…なら最期は笑顔でお別れしようよ。地上に送ってあげるからさ…」
ラビリスは顔をうつ向かせた後、無理に笑顔をつくる。そうさ、ラビリスは神だ。だが、神以前に一人の女の子なんだ。誰にも気づかれず、誰にも悟られることなくただ一人で消滅していく少女。そんな少女一人救えずにラビリスが願う人々の憬れになどなれるはずがないだろう。
並列思考を使いルーン語を組み立てる。ヒントはあった。手掛かりはたくさん転がっていた。アイテムボックスからあるアイテムを取り出し、三分の二程度を神器零にかける。不死鳥の霊薬、一滴で魂を復元させる薬。ならば魂の複製にはこれくらいでいいだろう。
ラビリスは言った。神器は神核を分け与えて創っていると。それと同時に神は神核から生まれるとも。
怜はにやりと笑い言い放った。
「ラビリス!一緒に世界を楽しもうぜ?『魂縛』『転写』!」
「…え?なにを…?…あれ…?」
神器ラビリス
意識を持った剣、インテリジェントソード。迷宮神ラビリスが創り出した神器に、迷宮神ラビリスが宿っている。
スキル:不壊 形状変化 念話 人化
レア度:神話級
ラビリスは、怜が使った魔法によって起きた効果に驚きで顔を上げた。きっとラビリスは混乱しているだろう。突如意識が二つに分かれたのだから。
「さあラビリス。消滅したいのならこの剣はここに置いていこう。封印の維持可能時間が二倍に増えるぞ?よかったな、猶予が増えるぞ?だが、もし消えたくないのならついてこい!お前はどちらを選択する?」
ラビリスは大きな瞳を開き、大粒の涙をその両目から溢れさせる。
「君は…本当に天才だよ…。答えなんかとっくに一つしかないに決まっているじゃないか…」
「私を…私を一緒に連れて行って!」
剣がラビリスの姿になり、抱き着いてくる。
「任せておけ!」
「ってことで仲間になったぞ二人とも?」
神獣二人組の動きが停止している。お、動き出した。カンナは飛び込んできてコフィンは抱き着いてきた。
「ご主人!神様を救えるなんてさすがだよ!」
「…うぅ…も、もう…まったく…わてのご主人は、やくちゃんないお人やなぁ…!」
しばらくそうした後、落ち着いてきたためラビリスにお願いをする。
「じゃあそろそろ元の場所に戻してもらってもいいか?」
「了解♪まかせた!元祖私!」
「おうとも!がんばれよ!新生私!」
ラビリスの一人芝居に付き合ってから光に包まれる。
転移する前と同じ景色、しかしレベルアップしたからこそ分かる。空間に亀裂が入り、その空間からどんどん魔力が漏れていることが。
☆★☆
6年ぶりのわが家。待ち焦がれた、待ちわびた家に着き、つい声を思いっきり声を上げてしまう。
「ただいま!雫!」
「おかえりなさい、兄さん。少し遅かったですね」
「雫!愛しているぞ!」
「き、きき急に何ですか!」
「いや、久しぶりの雫がうれしくてね!」
「久しぶりって朝以来じゃないですか…ってその犬と狐は…かわいいっ!どど、どうしたんですか!?」
「飼うことになったから。撫でていいぞ!それと、話しておきたいことがあるからあとで時間をつくってくれるか?まぁとりあえずご飯が食べたい!行くぞ!」
「あ、ちょ!手を洗ってくださいね!…はいはい、わかりましたよ、兄さん。」
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次の更新は明日の20時です。
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