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10.人化と妖狐

猫耳派です。先日も猫カフェに行きました。

「やれ!カンナ!刺した剣に向かって雷を落とせ!」

「わんっ!」


 辿り着いた50階層、怜は種族進化したことにより、わずか半年でここまでたどり着いていた。そして今、50階層のボスであるシーサーペントの討伐に成功した。

 種族進化の影響か、レベルアップに必要な経験値の量が膨大になっており、加えて経験値をカンナとの眷属化の影響によって、半分ずつ取得している状態であったため、早熟のパッシブスキルを持っている怜でも、未だレベルは20にも満たなかった。代わりにカンナは成体になっていたが。


 カンナは成体になった事で、背中に怜を乗せられるほどの大きさにになり、移動の時は基本的にカンナの背中に乗って移動していた。移動時間短縮と種族進化による能力上昇により、攻略スピードは格段に上がっていた。…ちなみに隠密神のローブは、着るとカンナにすら視認されなくなったことに加えて、近距離戦の技術を磨くため封印された。


 そしてカンナはもう一つ、特殊スキルを身につけていた。カンナの身体が光り、徐々に形を変化させていく。


「ふぅ、ご主人、ここで折り返し?」

「そうだぞ、あと半分だ!そしたら…」

「雫に会える…なの!」

「その通りだ!」


 怜の目の前には、スカートにポロシャツのような洋服を着た活発そうな少女が立っていた。そう、カンナは成体になると同時に人化のスキルを身につけていた。…人と違って犬耳は付いているが。犬耳がぴくぴくと動く。可愛い。

 成体と同時に身につけた、この特殊なスキルで人の姿になれることが、神の遣いたる神獣と言われる所以らしい。…犬尻尾は出ているが。興奮して尻尾がぶんぶんと揺れる。愛らしい。


 ちなみに、亜人とは、種族進化した結果の種族であり、物語の中でよくある亜人差別や奴隷化は一切存在しなかった。むしろ、レベル500の高みに登った者たちとして尊敬すらされていた。だから、神獣についている耳と尻尾は強者の証として扱われていたため、見かけで弱くみられるということはほとんどない。


 カンナは、人型の時にはそのまま怜としゃべり、獣体系の時は念話で会話するようになっていた。しかし、基本的には人型の時しか喋っていない。


 ついでに、普通に会話できるようになったことで、暇つぶしがてら色々と話を聞くことができた。神獣は、幼体に記憶を、うっすらと継承する能力があり、カンナもその例にもれずに、過去の文化や常識について知っていることが多かった。しかし前世の自分の名前、契約者の名前は記憶から消失することになっており、個人情報は知ることができなかった。


 それでも、昔は日常的にあった魔道具や、危険なダンジョンが固まっている地帯があったことなど、様々なことを知ることができた。


 それと、カンナがこのダンジョンにいた理由だが、曰く、神獣は多数おり、封印直前まで魔物の数を減らすことで、封印の成功率を高めていたらしい。その中でも時空のダンジョンは、中の時間と外の時間の差が大きすぎた。そのため、フェンリルともう一体の神獣が命をかけてモンスターを間引いていたとのこと。


 ちなみに、封印の解除と共にダンジョン内に、前世の朧気な記憶と共に転生したため、戦闘力が絶望的な状況で耐え忍んでいた。いくらラビリスが急げばいいことがあるかもしれないと言ったとはいえ、大器晩成型のフェンリルがモンスターに殺される前に怜が間に合い、助かったのは奇跡的であった。


 余談だが、もう一体の神獣はかなり上の階層を担当していたため、もう既に息絶えているかもしれない。しかし、隠れるなどして耐え忍び、生きている可能性もある。もしかしたらまだ間に合うかもしれない。怜は、下層に神獣がいることに淡い期待を持って進んでいた。


☆★☆


「うげっ…51階層はまだ水場かよ…」

「20階層ごとに仕様が変わるのは昔のままなの、だからあと10階層行ったら火山だよ!」

「火山階層は鉱石が取れて、難易度が上がるほど魔力を含むため上位鉱石が取れる…だったか?」

「そうなの!しかもご主人の錬金術師のスキルと魔力操作の組み合わせで、効率よく集められるからいいと思う!」

「じゃあこのめんどくさい水場を攻略するか…せーのっ!『『雷撃』』!」


——眷属:カンナのレベルが上昇しました——

——眷属:カンナのレベルが上昇しました——

——眷属:カンナのレベルが上昇しました——


「っし、あとは宝箱とドロップを回収して階段を探すぞ~」

「この水場の階層はわたしとご主人で雷魔法撃つだけで終わるからね!最初に言いだした時は魔力の無駄になるとしか思わなかったよ!」

「いや、魔力操作でかなり魔力込めてやっとだからな?しかもルーン語完全理解してるんだぞ!?お前の雷属性が強すぎるんだからな?おれ人間!お前神獣!」


 ルーン語を理解し、ルーン言語スキルをLv. MAXで習得ている怜は、自分の魔法の威力は、もはやチートの域だと感じていた。実際に、ハイヒューマンであるのにエルフに勝る威力に、独自の派生、合成、新生と新たな魔法形態を作り出していた。

 しかし、そこは流石神獣。神の獣と書いて神獣だ、文字通り生物としての格が違うのだろう。そうして怜は、加速度的に量が多くなってきた必要経験値と、既に同程度といってもいい能力を持つカンナの成長率の高さに期待を持ちながら攻略を進めた。


☆★☆


「さて、この80階層のボスは俺の予想通りなら不死者の王のようなモンスターだと思う。そして、俺の神聖魔法はLv. MAXだ。どういうことかわかるな?」

「一撃?」


 そう。一撃で決める。スケルトンなどどうでもいいが、無限に溢れるゾンビの腐臭にドラゴンゾンビの毒にと、苦痛しかないフロアだった。攻略速度は過去最高速だろう。宝箱だけ片っ端から開け、鑑定もせずにアイテムボックスに放り込んできた。


 さてやるぞ!とボス部屋に入ると、いたのはエルダーリッチ。今までのどの相手よりも魔力が渦巻き、威圧感があった。しかし怜は、そんなこと知ったこっちゃないと安倍晴明もびっくりな退魔の気持ちと、聖魔法である浄化の魔法に、魔力操作で最大限に魔力を注ぎ込んだ。部屋を包み込む圧倒的な光量、溢れる神聖力、エルダーリッチがいたとは思えないほど清浄になった部屋をでて、こんなところは二度とごめんだと81階層に転がり込む。


 そこは幻想的な世界であった。青空が広がり、木々が生い茂り、川のせせらぎが聞こえる。遠くでは頭が鷲で体が動物のモンスターが縄張り争いなのかスピード勝負をしているだけなのか、敵対しているはずのモンスターが殺し合いではなく、スピードなどを競い合っていた。

 

 怜は、遠くに見えるその姿を見て鑑定を使わずともその正体がわかった。


「…幻獣グリフォン。」


 そうつぶやいたのは怜か、それともカンナか。まるで楽園に迷い込んだ二人の遭難者のような気分だった。そんな時、カンナがハッとして顔を上げ言う。


「…この気配、そしてわずかに漂う魔法の残滓…ご主人!何かおかしいと思ったの!この階層は!穏やかで気を抜くと休みたくなる感じ!間違いない!いるの!この階層にもう一体の神獣、妖狐が!」


 妖狐。伝説の妖怪であり尻尾の数が増えるほど強力になり、最終的には9尾になることで有名だ。妖狐という名前通りの存在ならば、妖術や幻術を使いこの状況を作りだしているのだろう。魔力を探知し、周囲全体に漂う魔法の残滓である魔力をたどり、気配が濃い方へ向かっていく。


 しばらく歩き、中央付近に近づいてくるとそこには確かにいた。美しい金の毛並みを持った巨大なキツネが。最大の特徴は9本の尻尾、つまり妖狐としての強大な力の持ち主であろう。


〈汝、名はなんと申す?〉


 唐突に脳内に響く声。これは念話だろうか、カンナから何度か使われたことがある。強大な雰囲気を感じながらも答える。


「俺は神崎怜。そしてこっちが相棒のフェンリルのカンナです。神獣妖狐様ですか?」

〈いかにも。して、怜よ。丁度よいところであった。〉

「どういうことですか?」

〈ここから先のモンスターはさらに強力だ。封印が解除され、モンスターが外に放出されてしまえば世界の誰にも太刀打ちできない。そのことだけは避けなければならないだろうと考え、私の最期に生命力を魔力に変換して魔法を放ったのだ。もっとも、今目の前にここまで来たモンスターを討伐できる強者が存在しておるが。〉


 妖狐はけらけらと笑う。旧世界で封印が完了するまで戦い抜き、新世界で封印が解けると同時に世界のため、文字通り命を懸けたのだ。怜は目の前の存在に敬意を払って会話をする。


「つまり、ここから先の階層のモンスターが居りていかないように幻術で留めていたと。しかし、このダンジョンを攻略できる可能性を持つ存在である俺が今現れた。単刀直入に聞きます。何を頼みたいのですか?」

〈ふははははは、そこまでわかってしまうか。率直に言おう、我の仔であるこの子を頼みたい。どうだ?〉


 そこには、可愛らしい狐が顔を出していた。妖狐を頼まれる、カンナに続いて二体目の神獣だ。そして、頼まれることはつまり、怜の眷属にするということだ。例え、生命力を魔力に変えたおかげでこれほどの威力が出せるのだとしても、今このフロア全体にかけられているこの魔法だけでも、妖狐の有用性は計り知れない。それに加え、決定的なことが決め手になった。それは…


「任せてください!狐み…妖狐を眷属にして立派な神獣にします!」


 そう。怜は、狐耳がとてつもなく好きなのだ。金の毛並、そしてぴんと立った狐耳。妖狐を眷属にすることに反対の二文字は存在していなかった。


 しかし、大きな問題に直面する。カンナの時はうまくいったが…ここで発生した難題。即ち、妖狐の名前だ。疲れていたのか感じた印象のみで命名してしまった。


「狐、コンコン…んん…よし。コフィン、どうだ?」

「かうっ!」

「よし!いくぞ!『眷属化:コフィン』!」


名前:コフィン

 種族:妖狐

 状態:神崎怜の眷属

 Lv:33

 HP:33000/33000

 MP:66000/66000

 筋 力:D

 防 御:D

 魔 防:A+

 知 力:A+

 精神力:S

 生命力:B-

 速 度:B-

 会 心:A+

   運:S

固有スキル:妖術

  スキル:聖魔法:Lv.7 幻魔法:Lv. MAX


 妖狐は生粋の魔法型のようだ。だとすれば、汎用型とでも呼べる存在であるフェンリルよりも魔法の威力が強くなる可能性もある。


 さあ、ダンジョンもあと少しだ。独りから始まったこのダンジョンの攻略も今や2人と1匹。にぎやかになってきた。そして、制限時間までのこり二年。時間はある。あせらずゆっくりと攻略していこうと心に決めた。


読んでくださりありがとうございます。


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