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おやぢ的 不思議ばなし【鶴亀奇譚】  作者: OKKUN
島太郎 凸凹水産と出会う
25/31



 食事が終わり、島太郎と乙太が事務所に戻ると そこにはもう 居酒屋のマスターの姿はありませんでした。


 社長一人がソファーに座っています。

 そして テーブルの上には分厚い書類が置いてありました。


 一体何が始まるのでしょうか。



 社長が おもむろに話しだしました。


「詳しいことは こちらに書いてあります。後ほどよくお読みいただき、わからないことはお聞きくださりませ。


 うちの仕事は いわゆる マグロ船です。まあ マグロ船とはいうものの、マグロ以外の魚も扱っておりますが」



 マグロ船。どこかで記憶があります。


 しかし詳しいことは 思い出せません。

 

 社長が話す内容は、おおよそ次のようなものでした。



 仕事は四日後から始まり、それまでは寮に待機。

 さらにその四日後に出航するための準備が始まります。


 食糧やさまざまな生活用品、漁に必要な道具や備品を積み込み、船内を掃除するのです。



 また正社員も出勤してきます。


 正社員は いろんな資格を持っている人が多く、船の状態や 計器類のチェックを行います。



 これが 出港前日の昼まで続きます。


 そして その後は全員参加のミーティング。

 こんな流れです。



 漁の間は、社長と数名の事務員だけが会社に残ります。

 副社長の鮃太も含め ほとんどの人員が 会社をはなれるのです。


 そして それと入れ替わりに、一人の男が会社にやってきて、事務仕事や 寮の管理の責任者となるそうです。



 出航して 漁場につくまでは、船の中で待機状態です。


 しかし それでも、わずかながら給料は支払われます。


 漁場から 帰って来るときも 同じです。



 漁場は 近い所では、台湾冲。

 インド洋や太平洋、更に 遠く大西洋に及ぶこともあります。



 季節やさまざまな情報で 漁場は決まるのです。


 漁場に着くと、たちまちのうちに 仕事が始まります。


 船を操縦する人、漁をする人、そして雑用係と分かれ、さらにメンバーが三班に編成されます。

 その三班のうち、二班が交代で 二十四時間操業するのです。



 休日は 月に一度 数日間、近くの港に入港し その時に給料の一部が 前借りできます。


 ただ 給料が赤字の場合は、前借りも下船もできず 船内で虫のようにひたすら、次の出港を待つことになるそうです。


 社長の話が終わりました。しかし 尚も何か話たげです。



 「社長、何か?」

 島太郎がいぶかしげに訊ねると 社長は鮃太がそうであったように、優しく島太郎を諭したのでした。



「兄さん、生きていくということは、良いことばかりでござりません。苦しいこと、辛いことも ござります。

 それを乗り越えられるのは、自らの努力しかありません。


 兄さん、あたくしは 兄さんが将来的に 凸凹水産を支えてくださる人材となられる気がいたします。


 くらさず、惨めにならず、前向きに生きていただきとうござります」



 実に不思議な感覚でした。



 金がある時は うわべだけでちやほやされていた島太郎でした。


 けれど、一文無しになった今、どうして こんなにも優しく接してくれるのか、不思議な不思議な感覚でした。



 

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