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おやぢ的 不思議ばなし【鶴亀奇譚】  作者: OKKUN
島太郎 『居酒屋 竜宮』にて
19/31



 店の引き戸を開け 中に入ると そこは実に不思議な空間でした。



 ── チントンシャン チントンシャン テテテテテ ──


 静かに 優しく 三味線の音色が流れています。


 しかしスピーカーなど どこにも見当たりません。



 ビルに挟まれた せまい空間のどこに、こんなスペースがあるのかと思われる ゆっくりとした店内は カウンター席のみです。


 カウンター席の一番奥には 大きな水槽があり 魚たちが 優雅に泳いでいます。



「ねえ、不思議でしょう。表からは 全く想像できないでしょ。

 私も面接に来たときは びっくりしたんだから。さあ 座りましょう」


 「やあ いらっしゃい!姫子ちゃん。

 初日から同伴かい。なかなかやるね」


 マスターらしき その男は、がっしりとした体格で ギョロっとした大きな目、そしてまるで竜のような立派なひげを 蓄えています。



 『マスター、実はね……』

 と 姫子と呼ばれた女性は、今までのいきさつについて、説明します。


「ああ、そうでしたか。どうもありがとうございます。見ての通り うちは居酒屋でして お酒は無料にはできません。

 しかし、自慢の料理がありますので こちらをサービスさせていただきましょう。

 姫子ちゃん、今日は店のことは いいから、君も楽しみなさい」



 気がつくといつの間にやら、二人の前に 徳利に入ったお酒とお猪口がならんでいます。



 二人はお互いに自己紹介をして、出会いに乾杯しました。



 彼女の名前は、おと 姫子ひめこ

 島太郎より 三つ年下です。



「さあ、まずは活き造りから お楽しみください」



 まな板の上には、いつ用意したのが、鯛、平目、伊勢海老、あわびが乗っています。



 いきなり三味線の音色が静かなものから、にぎやかな太三味線のそれへと変わりました。



 何から何までが不思議です。まるで手品か魔法のようです。それとも夢なのでしょうか。


 島太郎は自分の頬をつねってみました。


 「痛てぇーっ」


 やはり 現実のようです。



 ──ベベンベベン ベンベベン ベンベンベン──


 太三味線の音曲にあわせて、マスターの刺身包丁が動きます。


 無駄のない 見事な動きです。


 まるで包丁が舞い踊っているようです。


 たちまちの内に 活け造りが完成しました。



「な、なんて旨いんだ。それに このプリプリ感。こんなの初めてだ」




 島太郎は 今まで 金に任せてさまざまな高級料理を食べてきました。

 しかし、今 口にしている活け造りは どの料理よりも美味しく、気品ただよう、この世のものとは思えない不思議な味わいと 食感を感じさせます。



 

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