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悪役令嬢な私の妹はヒロインな上に歌姫である  作者: 蓮宮 アラタ
序章 こうして全てははじまった。
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閑話 「女神さま 2」

 不思議な女の子が唄う歌は、強力な力を持っているらしい。


 僕を包むように渦巻いていた赤黒いモヤは消え始め、だんだん僕は激痛が和らいでいくのを感じた。


 それに比例するようにして、女の子の顔色が悪くなっていくのは身体に負担がかかっているからだろうか。


 少しずつ、けれど確かに呪いは浄化され、やがて僕の身体から全てのモヤが消失した。

 呪いが完璧に浄化されたのだ。


 女の子は僕の呪いが完全に浄化されたのを見届けると、満足したように微笑んで瞼を閉じた。

 途端にフラリとその身体が崩れ落ちそうになって──



「っ!」



 僕は慌てて女の子が地面に倒れる前にその身体を支えた。

 女の子は目に見えて顔色が悪くなっている。明らかに体調が悪い証拠だ。


 これはもしかして、僕の呪いを解くために相当無茶をしたのではないだろうか。急いで誰かにみせないと。


 近くに誰かいないかと周囲を見渡したところで、崩れた建物の残骸が広がる廊下からこちらへとやってくる人影が見えた。


 長身の女性はキョロキョロと誰かを探すように視線をめぐらせ、そしてこちらへと向いた。

 そして目を大きく見開くと走って向かってくる。



「ロジエル!」



 僕の事が目に入っていないのか、長身の女性は僕から女の子──ロジエルという名らしい──を取り上げると、その身に抱き抱えた。

 素早くロジエルの身体を確かめると、女性は緊迫した表情で呟いた。


 女性はロジエルをその場に横たえると、何らかの魔術を行使し始めた。



「不味いわ……生命力の源である魔力も体力も尽きてしまっている。このままでは……」



 やはり。僕の懸念は当たっていたらしい。

 ロジエルという女の子が唄っていたあの歌からはとても強大な力を感じた。

 とても普通の者では扱いきれぬであろう力のこもった歌。

 それをこの小さな身体で唄っていたのだ。

 負担も相当かかったはずだ。


 今度は僕が助けなきゃ。


 ロジエルのおかげで呪いは浄化され、魔力も回復していた。

 すぐさま竜化をとき、人の姿に戻ると長身の女性に声をかけた。



「その子、大丈夫なの?」



 ロジエルを介抱していた女性が、初めてこちらに気づいたように僕を見る。

 そして、僕の姿を見て驚いたように目を見開いた。



「あなた、もしかしてシルヴィアの息子の……イェルカ?」



 その言葉に今度は僕が驚いた。



「僕の母さんを知っているんですか?」



 よくよく見てみれば、女性の容貌は母さんにそっくりだった。

 違うところといえば、目が金色であることくらいだ。



「私はオリヴィア。このルテナ神殿の長をしているわ。シルヴィアとは双子で、あの子は私の双子の妹よ。……あなたはもしかして竜化できるの?」

「うん、さっきまでここにいた竜が僕だよ。呪いにかかってて、その呪いをロジエルが解いてくれたの」

「そう、だったの。だからロジエルはあんな必死に……。私はなんてことを。妹の子を殺そうとしていたなんて……」



 呆然としたようにその女性、オリヴィア様は呟いた。

 僕も目の前の女性が母さんの双子の姉であることはさすがに驚いたが、今はそれよりも先にしなければならないことがある。



「僕のことはいいんです。今はロジエルを、この子の処置を急いだ方がいいと思います」

「そうだったわね。今、ある程度の処置は施したわ。でもいつまでもつか……」



 こうしている間にもロジエルの呼吸は浅くなっている。あまり良くない兆候だ。


 僕は即座に判断するとロジエルの頬に手を当て、そこから自分の生気を分け与えた。

 竜族の生気エネルギーは特殊で、人の体の働きを手助けする一種の治癒効果がある。


 少しずつ注ぐように生気を与えると、ロジエルの呼吸は落ち着きはじめ、頬に赤みが戻ってきた。

 これで暫くはもってくれるはずだ。

 あとは安静にできる場所に運ばなければ。



「この子の家はどこですか。僕が竜化して運びます」

「え? ええ、イグニシア公爵家よ。確か馬車がまだあったから妹のロシェルカが近くにいるはずだわ。御者に知らせてそちらに任せた方がいいわね。……それよりあなたは私と共に国王の元へ。事の次第を報告しなければならないわ。あなたは当事者だから」



 オリヴィア様の硬い声音に僕は覚悟した。

 国王……おじさんのことか。

 確かに、今回は呪いによる激痛で記憶が定かではないが結界を破ったり、神殿を壊したような気がする。


 騒ぎを起こしたのは僕だ。その責任は取らねばならないし、すぐに報告に行かなければならないことは分かる。


 けれど僕はロジエルからどうしても離れたくはなかった。

 この紫色の髪も、今は閉じている銀色の眼も。ロジエルの全てに魅入られていた。


 ロジエルに触ってみたい。艶やかな髪に触りたい。赤みをさした頬に触ってみたい。

 この子が欲しい。


 ──この子が欲しい?


 その瞬間、僕は父さんや母さんが言っていたことを完全に理解した。


 この子は、ロジエルは。

 この小さな僕の女神さまは。

 僕のつがいなんだ。


 欲しい。この子の全てがほしい。

 この子に関する全てを独占したくてたまらない。

 ここまで独占欲に支配されることなんて初めてのことだった。


 間違いない。この子は僕のつがいだ。

 そう確かに直感した。僕の中に宿る竜族としての感覚が告げている。

「この子が僕のつがいだ」と。


 この子が、ロジエルが欲しい。

 求め、両親を見て憧れた僕の伴侶。

 ついに見つけたのだ。絶対に離すものか。


 だったら、まずすべきことは。

 確実にこの子を手に入れるために、すべきことは。


 僕はオリヴィア様に目を合わせて、告げた。



「分かりました。僕、国王さまの所に行きます」


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