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モフモフが大好きな僕は、異世界で最高のモフモフを探す旅をする。  作者: 夢奏 舞P
はじめてのモフモフ編
12/24

第12話 入口

 荷馬車に乗り、僕たちはケゾールのアジトを見つけるため草原を探索をする。黒装束は、ずっと西の方からやってくるという話なのだが、見渡す限り草原があるだけで、建物すら見当たらない。


「なあ、フィオラ。アジトは遠いの?」


「そんなに遠くはないと思うニャ。でも、ここまで何もないと、場所の見当がつかないのニャ」


「考えられるのは、ここからすこし北西に進んだところにある小さな森ですかね。でも、そこはわたしたちも足を踏み入れていますので、アジトがあれば、すぐわかるのですが……」


「地下……って線はないか?」


「森は水脈が通っているので、掘ればすぐに水が湧き出てきます。恐らく、森には無いでしょう。あるとすれば、平地か山ですね。でも、山は見当たらないので……」


 メリルは、そう言って森の可能性を否定した。と、なると、考えらる場所は限られる。


「なら、平地で怪しい場所を探せばいいってことか」


「柔人、頭がキレるのニャ」嬉しそうに


 しかし、平地で怪しい場所なんて、そんな簡単に見つかるのだろうか。


「柔人さぁ~ん、これ、怪しくないですか?」


 突然、ペスが叫んだ。ペスは、草むらの上に立ち、下を指差していた。ペスの足元を見てみると、直径3メートルほどの円盤状の石で出来たプレートが敷かれていた。中央には、人を大の字にしたような窪みがあった。それだけなら、遺跡のようなもので済んだのだが、頭から縦に伸びたモヒカンのような窪みを見つけた瞬間、怪しさが倍増した。


「確かに……怪しいな」


「すっごく怪しいのニャ」


 メリルが口を開く。


「ケゾールソサエティーの入り口だったりしないか?」


「ここは私も調べたのですが、何もありませんでした。このプレートはびくともしません。それに、このプレートはこの辺一帯に散らばっています」


「物は試しだ。もう一度動かしてみよう」


 プレートの端の方を持って動かそうとする。だが、びくともしない。「手伝うニャ」と、フィオラが加勢し、その後、ペスとメリルもそれに続いた。だが、プレートはびくともしない。


「回すのも……ダメ。持ち上げるのも……ダメ。押しても……ダメ……」ただ、疲れるだけだった。


「あーもう限界ですー」ペスは、そう言うと、疲れたのか、プレートの上に大の字に寝転がった。その時、なぜかペスの体はプレートの窪みにしっかりハマった。その瞬間、突然プレートが光を発し、ゆっくりと反時計回りに回転を始めた。


「な、なんですかこれはいったい!」ペスは驚いた声を上げ、プレートから飛び降りた。


 ──まさか、これがトリガーだったのか!?


 怪しいプレートは、ゆっくりと回転しながら隆起して、円柱状の入口が出現した。入口をのぞくと、下に降りる階段が長々と続く。壁には光る石のようなものが埋め込まれており、通路を薄い緑色に照らしていた。


「探しても、見つからないわけだ……。その人型に入るのは、我々も試した。しかし、何も起こらなかったのだ。おそらくは、毛を剃った者にしか反応しないのだろう。」


「ケゾールソサエティーのやつらなら毛が無いから自由に行き来できるわけか……ペス! よくやった!」


「た、たまたまですよ」


「そうだな。たまたまだ」


「そんな、柔人さん……」


 以外と簡単に入口が見つかったのには驚いた。だが、こんな偶然はそうそうないだろう。僕らは、警戒しながら地下への階段を降りて行った。


 中は洞窟のようだった。壁は人工物だが、その他は自然の洞窟だ。壁はただ、明かりを灯すためだけに置かれているような具合だった。


「この石、自然に発光しているのか?」


「蛍光石ニャ。大気の汚れた空気を食べて綺麗な空気を出す石ニャ。その過程で、発光するのニャ」


 どういう原理だかは知らないが、すごくエコロジーな代物だと感心した。たしかに、いろいろとガスが溜まりそうな洞窟の中なのに嫌な臭いがしない。逆に深呼吸をしたくなるような澄んだ空気だ。


 奥へと進む。ジグザグに曲がった通路だ。曲がり角に、敵が潜んでいないか心配だ。だが、そういう不安は、だいたい的中するのが世の理だ。


 ────ジャキーン! ジャキーン!


 物音が聞こえた。金属が擦れながらぶつかる音。この音には聞き覚えがある。ハサミの音だ。なにか嫌な予感がする……。


「誰かくるニャ」


 フィオラの声を聞いた僕らは、足を止めた。


「ここで誰かといったら、当然ソサエティーの奴等だな」


 メリルは、そう言って黒装束の中のサーベルを握りしめる。


 フィオラとメリルは警戒を強めた。しばらくして、通路の角を曲がった辺りに人影が見えた。ハサミの音を立てながら、ゆっくりと角を曲がり、姿を現した。


 その姿は、黒装束を纏い、両手に植木ばさみのようなものを持ったケゾールソサエティーの男だった。


「お前たち、毛はきちんと剃ってますか? きちんと剃らないと、怠惰になってしまいますよ」


 ────ジャキーン! ジャキーン!


「そ……剃ってます! 剃ってますよぉ!」


 ペスは、慌てて黒装束を脱ぎ、肌を見せる。


「あなたは、素晴らしい信仰心ですねぇ。けど……何か、臭い毛の臭いがするですよ……クンクンッ! とっても怠惰な……毛の臭いが!」


 黒装束の男の目が緑色に光った。壁の光を反射したのだろうか、その目はとても不気味だった。


「そこのお前とお前、黒装束を脱ぎなさい! とても臭いがプンプンします!」


 黒装束の男は、フィオラとメリルを指差した。


 ──しまった! 二人は毛を剃っていない……このままじゃ……。


 それを見ていたペスは、黒装束の男の目の前に立ち、低い姿勢で声を上げた。


「いえ、この方たちは、ケゾールに入信したいと申し出たケゾール崇拝者です。怠惰な毛を剃り、務めに励む所存でここへ来ました」


 ペスは、その場をうまくごまかした。だが……。


「ほう……新しい信者か。ちょうど良い。このわたし、『ハサミのジョー』が、そなたたち二人を浄化してやります! このハサミでええぇぇ!」


 やはり、この場で刈るつもりだ。黒装束の男は、服を脱ぎ、姿を現した。ぱっと見、狼ではない。やけに筋肉質な体付き、黒と黄色のまだらなトサカ。僕はそんな動物を知っている。そう……彼は……チーターだ!


 ────ジャキーン!


 ハサミの音が洞窟内に響き渡る。その瞬間、ジョーは、地面を蹴り、跳躍する。壁を蹴り、天井を蹴り、洞窟内を跳弾のように飛び回る。そして、メリルめがけて飛びかかってきた。


「ものすごい毛の臭い! ここまでくると悪臭です。ですが、安心してください……今から浄化しますからね!」


 さすがに速すぎて、僕には反応ができなかった。メリルは黒装束を剥ぎ取られ、フサフサな毛をむき出しにした。ジョーのハサミは、その毛めがけて、襲いかかる。


 ────ドフッ!


 その時だ! フィオラが機転を利かせてメリルを突き飛ばした。間一髪、フサフサな毛が刈り取られるのを防いだ。


「何事ですか! 私の神聖な無駄毛浄化を邪魔するなんて……あなた、本当にケゾールの信者なのですか?」


 ジョーの言葉は、フィオラに向けられた。


「そんなつもりはなかったニャ。何も食べていなくて、倒れそうになったのニャ。食べ物を食べたら、その養分が毛に吸収されるニャ。怠惰な毛を育たないようにするために、なるべく食べなかったのニャ」


 よくわからない理屈だが、ケゾールソサエティーを信じ込ませるには十分だった。だが、それもただの時間稼ぎに過ぎない。フィオラはこっちを見て、何とかしろというような眼差しをこちらに向けてきた。


「なんと! それほどまでに! そうか……じゃあ、お前を先に浄化してさしあげよう。その呪いから、今、解放してやる」


 ────ジャキーン!


 ジョーは、鋭いハサミを振り上げた。


 ──まずい! このままでは、二人のモフモフが犠牲になってしまう!!


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