業者は爺さん。
結局、亥月、詠月、萩月はその場から一旦戦線離脱し僕は思いっきり天理さんの部屋のドアを閉めた。追跡してくる蜂は何匹かがドアにぶち当たった。
僕は天理さんの部屋の前に居る女子達を亥月、詠月、萩月護衛の下、一旦は女子寮の玄関兼下駄箱へ避難させた。ついでに蜂の巣の情報を収集中であった二隻の駆逐艦。薄雲、笠雲はその場にて作戦を続行。援軍が来るまでその場で待機するように命じた。
発砲は未だにしていないので二隻に対し蜂は興味を示さずその上空をうろうろしているだけで危害は一切向こうからは加えてこようとはしなかった。
三隻の対空戦闘も一時的に止み蜂達はその巨大な巣の中へと消えて臨場感は少し薄れた。だがこのまま放置する訳にもいかないだろう。そこで、僕はこの手の業者さんを呼ぶ事にしたのだ。
いやぁ。人脈が広いてっ便利だね。数十分が立った頃。その業者さんが小型トラックに乗ってやって来た。荷台には専用の服とマスク。機材はなし。
「久しいのぉ。元気にしてとったかぁ? 悠馬?」
「元気だよ。稲熊爺さんこそ体調は大丈夫?」
「この通り元気さ。さて、遠くからその例の蜂の巣を見てくるかのぉ。物が届くまでのぉ」
爺さん。その怪しい物みたいな言い方。やめてください。勘違いされるじゃあないですか。
爺さんがしばらく蜂の巣を見て「こりゃ、取らんといけないのぉ」みたいな事を言っている間にその例の物は届く。それは蜂の巣を除去するために使う専用の機材達であった。
で、何故、その専用の機材が先の秘密基地建設に貢献した一等大型高速武装輸送艦の二隻の荷台にきっちりと積まれている。実はこの輸送艦は爺さんの業務用の輸送艦なのだ。
今話すととてつもなく先の話で少し長いから後に語るがこの一等大型高速武装輸送艦は先の同型艦とは少し外観が違う。
輸送に特化させるため武装を全て降ろし以前に武装があった場所は機材や荷物を載せるための専用スペースと化した。甲板に大きな機材を乗せる時のために大型移動式クレーンを1基。広々とした後部甲板に搭載していてこのクレーンは礼文型掃海母艦に積まれている物とほぼ同じ性能を誇る。
二隻はその基地建設より後に爺さんの依頼により建造され艦名は爺さんが名づけた。僕が前に呼称した名前は「第110号艦」及び「第111号艦」である。
現在、二隻は「美姫」「縁姫」とデカデカと白く船体に書かれていた。漢字が前に書かれていてその隣にカタカナで書かれている。
因みにどうでもいい情報だが二隻が爺さんの下で活躍しているのは知っていたが艦名はこの日初めて知った。姫と来たか。
心の奥底で僕は「愛媛」を期待していたけど、ふと考えてみたら媛違いだったぜ。多分、艦名はオリジナルだろう。




