煙からの脱出。
警報が鳴り響く中、悠馬は駆け出しで自室へ向かう。だが、自室の方向から白い煙が立ちこめて来た。まずい。波327潜は派手にやらかしたようだ。
実戦経験が少ないためこのような事態を招いたのかもしれない。成程。これがある意味、戦場か。
部屋から次々と駆け出し外へ逃げる男子生徒達。白い煙は寮の中を着実に充満させてゆき黒い煙が砕け散った防弾ガラスがあった窓から吐き出すようにあふれ出る。二階、三階の男子生徒達も口にハンカチやタオルを当てて駆け出しで出て行く。
魚雷の威力は大きく、この時放たれた魚雷は通常サイズよりも火薬の量が多く一旦着弾してしまえば周囲に散弾するように中には小型爆弾が収納されていた。
予定通り爆発し炸裂した。波327潜は慌てて窓からその場を後にした。煙の中、魚雷を放ち命中させるには中々高難易度の技術が求められる。
潜水艦用対艦、対空レーダーも一応搭載されていたがそれも一応でとても優秀とは言えない。
一方、女性もこの騒動の中に入り込むようにして男子達が逃げ惑う中、ベランダから隣の女子寮の近くへ着地。普通の人間では考えられないような運動神経でこの場の危機を切り抜けた。
「煙が濃くなって来たな」
悠馬は白い煙が濃くなる自室へ向かっていたが部屋の中に侵入する事さえ危険なこの状況下。設計図を炎の魔の手より救出する事を諦めて同じ男子寮で暮らす仲間の救出に向かった。
悠馬の目では白い煙によって他の男子生徒の行方が分からない。そこで付近に潜航中の潜水艦。波317潜の協力の下、捜索作業に入る事にした。
波317潜は先頭に立ち、浮上航行を取りながら索敵レーダーとソナーを頼りに人命救助に励む。ソナーでの探索方法としては相手の足音で判断する。部屋に閉じこもっている相手は次元レーダーによる捜索で探し出す。この次元レーダーは相手に照準するための装置ではなく、相手を見つけ出すための装置として搭載され、これが本来の正しい使い道であった。
数分が経過。ソナーと索敵レーダーの双方に反応を探知。波317潜は現場へと急行した。そこにはヨレヨレで歩く一人の男子生徒の影が薄っすらとではあるが確認出来た。
悠馬は近くの開けっ放しになっている教室へ相手の手を肩に乗せてその部屋へ入る。部屋の番号までは見ていなかった。
Q何故その部屋へ入ったのですか? A扉が開けっ放しの部屋があったからさ。
「む……このベランダ。しっかりと鍵が掛かっているな。だが、内側から開けられるようだし、問題はないか」
僕はその男子生徒と一緒にベランダへ何とか出た。部屋にはまだ充満していないとは言え早めに此処から脱出しないとね。廊下は……もう煙で一杯です。散弾恐るべし。
僕は弱りきっている男子生徒を一旦、ベランダに横たわらせてスマホの画面を操作し食料水分潜水補給母艦を呼び出す。一番大きい潜水艦はこれしかいないからなぁ。




