軽い忠告。
「私の名前は、今中川風で力の名前は「指定した場所に大小異なる爆発を自然に起こす」と言う物よ。威力は自由に操作できるみたい」
「自然に……ですか」
確かに何の前触れもなく指定された場所は爆発していたような気がする。少し遠い所から見ていたからよく分からないけど、確かにそうだ。
だが、別次元を潜航する潜水艦にはあまり意味のない力かも知れない。と、言うか今後、潜水艦に力を入れれば案外、楽勝に勝てるのではないだろうか。
そんな風に感じてきた。今回の戦闘で潜水艦がいかに強力かと言う事が良く分かった気がする。
能力大会も水上艦艇にこだわらず、別次元に潜む潜水艦にこそ力を入れて偵察任務や哨戒任務に限定せず攻撃に全力を注げば、クラスメイトの被害を出来るだけ最小限に食い止める事が出来るかも知れない。
「ところで今中先輩……それとも川風先輩ですかね?」
「正直。どっちもあまり呼ばれたくはないけど、そうね。今中でいいわよ」
「分かりました。今中先輩。すこし話があります」
「あら、何かしら」
今中先輩はコーヒーを飲みながらゆっくりと優しい口調で僕の話に乗ってくれた。僕は今回、出来れば潜水艦をこの戦いに投入したくはなかったが、周辺に潜水艦した居なかったのでそれを投入せざるを得なかった。普通は機密のベールに包まれるべき潜水艦が昼の間に、人が確認出来る場所に浮上してしまったのだ。
波300型は見つかってもその高速性能でカバーできるだろう。しかし、今中先輩を浮上時に捕らえた潜水艦。食料水分補給潜水母艦の八番艦。伊1308潜の存在を秘匿せねば。
「今中先輩を捕らえたあの「潜水艦」は他の潜水艦とは違って秘密のベールが多いのです。そこで、今中先輩には今後。今日。あの場で見た光景を全て、今、忘れてほしいのですが」
「潜水艦……あぁ、あの船体が少し大きめの艦の事ね。因みにもし私が喋ったら……」
今中先輩がこっちへ少し近づいて脅しと言うより誘惑に近い仕草で僕に耳に向かって小さく。周囲に漏れない程度に話かけて来た。勿論。先輩にとって初めて見る化け物だから依頼人である姉ちゃんに話したくなる気持ちは分からないでもない。
だが、あれは本来は秘匿兵器。艦隊も秘匿大型輸送潜水艦隊とまだクラスメイト。風間にさえ教えていない代物だ。簡単に情報が漏れてしまってはこちらが困る。
「喋ってしまったら、常に先輩や姉ちゃんを監視している「新型」偵察潜水艦による通報とその餌食になる事を覚悟して下さい。これは……ある意味。忠告です」
勿論。この新型偵察潜水艦の存在についても姉ちゃんには内緒と言う方針で話はついた。僕が少しきつめに「忠告です」と言うと今中先輩は「冗談よ。冗談」とクスッと笑って、友達と会話をしている時のような軽い口調で話した。




