大沢さんの相談事。
「相談てっ何かな。大沢さん」
向こうは少し戸惑っているのか会話の中で途切れる事が多い。けど話している内容は分かった。どうやら能力大会でクラスの数人以上が生き残る事が決まった事で自分が生き残れるかどうか不安になっていると言う事だった。
それは、誰もが抱く不安だろう。その不安を少しでも薄くする為に僕が今までにない大規模な艦隊を今用意しているところだ。
「で、私、その、生き残る事に対して、自信がなくて、どうしたらいい……のかな」
どうしたらいいのかな。僕も初参戦な訳だから生き残るコツなんて勿論知るはずがない。それに仮に教えたところで生存率は上がるかも知れないが必ず生き残れる保障はどこにもないのだ。
きっと今頃、皆、どうやって自分だけは助かるか考えているんじゃあないだろうか。能力大会で僕らのクラスが取った方針は「たとえどんな手段を用いても生き残る事」だし。その為には味方であるクラスメイトを見捨てても構わない。と考えている奴も少数だと思うが居るだろう。
僕は少しの間考える。そして閃く。少しの間、生存率を高める方法を。
「必ず生き残れる……と言う訳じゃあないけど、大沢さんに一隻か二隻。駆逐艦を手配しよう」
手配する駆逐艦は現在設計中の駆逐艦で姉妹艦を十一隻予定しているタイプの奴だ。これに追加を加えて十二隻か十三隻に増やすのもありかと考えている。
駆逐艦が護衛に就けば多少なりとも生存率は上がるだろう。それに自分に自信がなければ敵が現れた時にその護衛に就く駆逐艦に向かわせたら更に生存率は上がる。
最も、その駆逐艦が生還して戦列に復帰すればの話だが。
「いいんですか。二隻も……その、私なんかに」
「構わないさ。大沢さんも大切なクラスメイトじゃあないか」
「あ、あの……その、ありがとうございます!私、頑張ってこの能力大会を生き残ろうと思います!」
「うん。頑張ってね」
「生き残る」この言葉に少しなりとも自信がついたのか彼女の今まで小声で話していたのが嘘のように晴れて大きく音量が上がった。護衛が居るのと居ないのではこれほどまでに差が大きいのか。
僕は駆逐艦と言う艦種が居た事に少しばかり感謝した。
軽巡洋艦や重巡洋艦みたいな大型艦ではこのような任務はあまり全うできないだろう。僕はただ、心の中で駆逐艦と言う存在に感謝した。
「大沢さんを守る駆逐艦が二隻できたら実物を見せてあげるよ。その時。また電話するね」
「はい!ありがとうございます!では、完成するその時まで。失礼しました」
プチッと電話が切れる音が耳元でした。完成するその時まで……か。
駆逐艦の基本的な建造時間はざっくりと三十分から一時間。本型は重武装且つ大型艦なので一時間二十分は要する。そしてまだ完成したのは六番艦までしか出来ていない。
さてと。ドッグを一つ増やそうかな。




