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奇想の艦隊  作者: 置草茅
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重巡洋艦鈴鹿、帰還。

 鈴鹿の船体が懐中電灯に照らされる。照らされた場所は船体だったので何かの壁かと、この時、警察官は「何にもないか」と判断し少しの間、その場を離れた。

 鈴鹿は緊急潜航を行った伊1208潜に対し無線通信を行った。船体の切れ目も帰還後に修理を行う事を通達。受信した伊1208潜はまだ補給を済ませていない波302と波314の補給任務に就く。


 鈴鹿は自力で監視カメラの目を逃れながら男子寮の隅っこに一旦停泊する。

 鈴鹿停泊の報告は近くを警戒していた波317が悠馬に伝達。


 悠馬は情報を受け取ると、時刻を確認。

 現在の時刻は22:32分。まだ寮が完全に閉まる時間帯ではないので悠馬は朝になる前に鈴鹿をスマホの軍港に戻す事を決めて、監視カメラの目を誤魔化しながら寮の玄関に向かって、男子寮の隅に向かう。


 向かってみるとそこには艦橋だけ浮上している波317が居た。波317は艦橋にある探照灯で停泊中の鈴鹿を照らす。鈴鹿を発見した悠馬は近寄って損傷の具合を確認した。

 損傷具合は船体に無数の切れ目と折れたマスト。マストの先端部分は三番砲塔の上に横たわり、甲板も焼け焦げた跡がきっちりと残っていた。


 このような状況の為、鈴鹿は最大速度が13kmにまで減少。スクリューも1基狂っており、使い物にならないぐらい破損していた。

 悠馬はスマホをズボンポケットから取り出してスマホの中の軍港へタッチ一つで帰還させる。

 鈴鹿帰還後、損傷の度合いが激しいのを先ほど確認した悠馬はいつも通りの素振りで自分の部屋に戻りそして1枚のA4サイズの白紙を取り出した。


 続いてシャーペン芯を筆箱から取り出した。

 今、彼がやろうとしているのは現在構想中の鈴鹿改装案の原案を書き記す事である。悠馬には改装の際、二つの選択肢があった。

 

 一つは損傷が激しい後部マストがある艦尾一帯の武装や装備品を全て撤去した後、平らになった後部甲板には飛行甲板を設けて艦隊の護衛航空重巡洋艦と化する計画。

 外観は最上型の航空巡洋艦時代に近い。


 二つ目は後部甲板の主砲を全て艦首よりによせて尚且つ艦橋をアイランド型に更新。後部マストを撤去し煙突も空母型に改装。全通式飛行甲板を備えた本格的な航空重巡洋艦にする計画。


 二つ目の案は悠馬のモットーである大艦巨砲主義に反する可能性があった。しかし、悠馬は装備していた砲塔を全て利根型のように艦首に添えて火力は改造前と同様にし尚且つ航空機と言う新たな火力を手にすると言う構想である。

 しかし、問題はあった。一つ目の案はptは安価ではあるが砲戦能力は落ちていざと言うときにその力を充分に発揮できない可能性。


 二つ目の案はもっと深刻で火力は充分だがptが高く、完成後は中々戦闘に簡単に投入できず、結局、主力重巡洋艦は和泉、松島、厳島、橋立の4隻のみになる可能性。

 また艦首よりに主砲が集中しているため、此処を集中的に破壊されたらだたの動くいい的になるのではないかと言う不安があった。

 悠馬は就寝時間である23時まで結局決まらず、明日、風間に来てもらい二人で考える事になった。


 今現在、一番の有力候補は一番目の案だった。

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