女子が隣に居るんだが。
「やれやれ。あの時は本当に冷や汗を掻いたよ。まさか自ら掃海艇に突っ込むなんて」
「もう少し機動性能を上げられたり出来ないのかな?」
「無理言わないでくれ。風間。あれでも一応、旧式艦なんだ。これ以上は上げられない」
「ならいっそ、新造艦を建造したらどうだい?」
「ptが消えるから却下」
自由時間になり、皆が思い思いに泳ぐ中、僕は制服のままベンチみたいな腰を掛けるところで座っている。次、先生からいつ出撃命令が出るか分からないので警戒心だけは持つようにしている。
どこを見ているかと言われたら無論、掃海艇とその母艦である。
けっ、けっして女子を眺めてなどはいない。ほ、ほんとだよ?
「おーい、風間ー、こっち来いよー!」
「あぁ、今行くよ」
風間は彼に呼ばれてプールサイドからプールに入る。流石に飛び込みはしないか。するとピタッ、ピタッ、ピタッ、ピタッと何かが近づく音が左側から聞こえてきた。
音から察するにプールから上がったばかりであると想定。
誰だ?
「掃除お疲れ様ー。一人で何見てるのー?」
「一人は余計だ。何、いつでも掃海作業が出来るように掃海艇を見ながら待機しているだけだよ」
「ふーん」
そう言うと彼女は僕の座るベンチの隣へ座る。流石に距離は開けるよな。
彼女は確か西田伊都。力は確か……。
「にしても危なかったねー。後もうちょっとでぶつかる所だったねー」
「そんな臨場感なさそうに言われても・・・あれがAnotherなら死んでいたんだぞ」
「アナザー?てっ何ー?」
……oh
まさかのネタは通じないパターンですか。そうですか。
しかもあの時、ゴーグルじゃあなくてボールでしかも向かった奴が「まかせろー」だったら確実に死んでいた。間違いない。
「西田は泳がないのか?自由時間、後13分はあるよ」
「さっき泳ぎきって疲れちゃったんだよねー。少し休憩、休憩ー」
「あぁ、なるほど」
西田もそこそこ……いや何でもないです。掃海艇に集中するんだ。西田の方を振り向くんじゃあない。じゃないと来る。何がとは言わせない。
彼女の特徴としては……そうだな。茶髪のポニーテールが印象的かな。で、何かと喋った後は語尾に伸ばし棒をつける癖があると見た。今の会話でそう感じた。西田の能力なのだが、彼女の力は確か。
「ねぇー、悠馬君、ちょっといいかなー。今日の放課後」
「放課後?別に構わないけど。どうかしたの?」
「えっとね。実はptが結構ギリギリで放課後、模擬戦をしてほしいのー。ダメかなー?」
「悪いな。西田、実は僕もptは結構やりくりが大変なんだ」
「うーん。困ったなー」
こちらから見たら困っているような表情ではないが本人にとってはとても困っているのだろう。相手をしてやりたいがこっちも艦艇の不足やptの状態から考えると戦はあまり好ましくない。
クラスメイトの一人として彼女に助言をしてやりたいところだがいまいちこの場合、どんな言葉が適しているのかがピンとこない。
自称雑学王と言っている風間ならいい答えを出してくれるかも知れない。
僕は風間を呼ぼうと思ったがそれをさえぎるように彼女は言う。




