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奇想の艦隊  作者: 置草茅
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下手したら人身事故になっていた。

 掃海作業中にある男子生徒がプールサイドから飛び込もうとしていた。

 あれは……小倉こくら雄二ゆうじか。何やってんだ?それを取り押さえているのは彼とよく一緒にいる、坂井さかい英二えいじか。いや、ほんとに何やってるんだ?

 あっ、今小倉が坂井を押しのけて飛び込みやがった!その先には第七号掃海艇が……。


「おッ、おい!今飛び込んだ奴!そこで何やってんだ!そこに第七号掃海艇がいるぞ!」


 僕の声が届かないのか、彼はクロールで第七号の前方ちょい左舷よりに向かう。下手したら衝突もなりかねない。畜生、戦闘でもないのに貴重な艦艇を傷つけたくはねぇ!


「おい!聞こえないのか!掃海艇がそこに居るんだよ!」


 何度も叫ぶが周囲の皆が僕に気づくだけで当の本人はまったく気がつかない。泳いでいるときてっあんなに声が聞こえないものなのか?まずい。第七号まで残り7mをきったぞ!

 すると坂井がプールサイドから飛び込み小倉の下へ向かう。現在第七号の速度は30km前後。正面衝突すればかなり痛い。しかも潜ればスクリューがあたり多少なりども傷を負うだろう。


「第七号!後進一杯!後進しつつ左舷へ旋回!回避しろ!」


 第七号は号令の下後進する後進する際の速度は一気に13kmほど遅くなるがそれでも小倉の方が早く衝突する可能性がある。しかも小倉は血迷ったのか後進する第七号の船底へ潜った!何やってんだ!船にはスクリューがあるんだぞ!?だが恐らくまだ巻き込まれていないだろう。


「第七号!そのまま後進しつづけよ!右舷へ旋回!急げ!」


 後進し続け右舷へ旋回した。しかし右舷へ旋回した先に居たのは掃海作業に従事していた第九号だった。しかも運の悪い事に第九号も気がついていないのかそのまま直進。

今度は第九号が七号と衝突する脅威と小倉が誤って第九号に体当たりする危険が増えた。


「第九号!右舷へ旋回!急速にだ!いいか?急速にだ!旋回する際、何かに当たらないよう注意せよ!」


 第九号は急いで右舷へ旋回。これにより第九号と第七号の衝突は回避できた。

 後は小倉だ。第九号は恐らく最大速度である44kmを発揮し回避したのだろう。そんな中、プールの中は水流が酷く荒れて下手したら第七号のスクリューに……。

 皆が、先生がその場で様子を窺っていると第七号の左舷6mぐらいの所で頭が浮かぶ。

 その時、僕の脳裏には「まさか!本当に巻き込まれた!?」と思った。


 が、頭が浮かんでから数秒後。顔を出した彼はある物を持っていた。彼のゴーグルである。

 小倉は泳いでいるときにゴーグルが取れてしまいそのまま行方不明だったが掃海艇が作業を始めて数分後、水流に流されたのか第七号の船底に引っかかっていたと後日話してくれた。

 まったくヤムチャしやがって。

 危うく人身事故を起こしてしまうところだったじゃあないか。


 彼は第七号から離れてプールサイドへ上がると先生に注意を受けたがその後は何事もなかった。僕の脳裏にはある言葉が浮かんでいた。それは。


 Anotherなら死んでた。

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