アクティブ・ソナーが聞こえる教室。
「仮は仮よ。で、本日はどう言ったご用件で?」
「えっ……えっと……失礼しました」
「……もしかして外の様子を窺うためだけに来たの?」
うっ、ここはやはり戦術的撤退を……うん? ちと待てよ。何だあの絵。
部屋の隅っこにあったそのキャンバスに描かれていたそれは、船の絵のように見受けられた。日が傾き、少し陰に隠れて良く分からないけど、船の絵である事は確かだった。
「文化祭提出作品」と大きく書かれていた。タイトルも良く分からなかった。
「ねぇ、その文化祭の作品てっ、どんな奴なの?」
「……私。文化祭に作品なんか出さないわよ?」
「いや、でも、ほら、あのキャンバスに「文化祭」てっ……」
彼女は黙り込んでキャンバスに彼女の理想の絵を描き進める。筆の先の色は赤色。いや、夕日に近い色でその手先は器用に動いていた。その先に描かれていた作品は夕日の海だった。
これも文化祭用だろうか? それとも、こっちが本命だろうか?
「その絵は?」
「この絵は暇潰しに描いているのよ。君には関係ないわ」
しかし、作風は、素人が言うのも何だがまるで、プロが描いたような感じだった。海と波の表現が凄くて海に反射する夕日の光りもまたふつくしい。
しかし、実際のところ暇潰し程度でこんな作品が簡単に出来上がってしまうのだろうか?
ピーン……ピーン……。
ん? 何だ? このソナー音。
このタイプの音は敵の潜水艦を探す時に放たれる所謂、アクティブ・ソナーと呼ばれる奴の音だ。音の方角から察するに波317潜が放ったのだろう。しかし、何に対して放った?
アクティブ・ソナーは敵の位置を知る事が出来ると言うメリットと、逆に自分の位置を教えてしまうと言うデメリットがある。
僕の目には廊下には周囲の敵影はなし。ただ、未だに人だかりが出来た廊下には活気がついていた。廊下が活気ついているのにも関わらず、この部屋は沈んでいる。
声も飛び交う事はあまりなく、ただ、絵を描く音だけが響いていた。インクを紙に筆で塗る音だけが響く。何とも寂しい部屋だ。
「今の音。何かしら」
「今の音と言うと?」
「何か、ピーンと言う感じの音よ」
「地獄耳ですか?」
おかしい、この音は他に聞こえる奴と言ったら宮本さんや、僕。そして姉ちゃんぐらいだろうに。何故聞こえたのだ。アクティブ・ソナーを。だが、放たれた場所までは分からまい。
何せ、この部屋には居ないからな。当たり前だけど。
ピーン……ピーン……ピ、ピーン……ピ、ピーン……。
何しているんだ? 波317潜の奴。これじゃあまるで、弾薬を抱えて撃ってくれと言わんばかりではないか! 今すぐ、その音を止めろ!
「さっきから、此処から見える中庭から音が聞こえるんだけど……知らないかしら」
「中庭?」
中庭に展開している艦は何だ?
僕は窓に近づき窓越しだが、中庭を一望する。そこに居たのは、浮上していた潜水艦だ。
何故浮上している!?




