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惑星の魔法使い  作者: モQ
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第81話 俺は働き過ぎ

 モンスターの大発生。それがどんな物なのかは詳しくは知らない。


 10年ぐらい前に、狐族の村のある大森林の奥から大量のモンスターが押し寄せた。その時に、マスターさんやペタの父親のアニさん、それに騎士団が町を守るために奮闘した。前の騎士総長さんっていうのはその時やられたとか。


 まあ俺が聞いたのはそれぐらいだ。それがまた起こるかもしれない。うそん。




「可能性があるんじゃねえか。ってぐらいだ」


 マスターさんが険しい顔のまま言う。その兆候があるって事だろう。と言えばやっぱりアレしかない。


「俺らが襲われたスライムと関係あるんすか?」


「そういう事だな。俺もちょいと外にいる連中にも聞いて回った。前回の大発生の前にも似たような事があったんだ。まあ今回の程はデカくなかったがな」


 マスターさんの言いぶりだと、関係性があるかは分かっていないのか。


「だがスライムだけじゃないらしくてなあ。モンスターが集団化したり強力な奴の目撃例が増えてきているそうだ」


 手紙をピラピラさせながらマスターさんが言う。細目長さん、結構、色々調べてんだな。やっぱりケチなだけじゃないな。あの人は黙って働くタイプだ。偉いな。いや、だけどマズいぞ。


「えっと、もしじゃあ、今それが起きたら騎士団がアレだから」


「おう、10年前と同じ規模だったら、町はもたんな」


 マスターさんサラっと結論づけた。やばいじゃないか。


 ちょっと待てよ、町がやられるレベルなら、この狸族の村も当然やられるし、森の中にある狐族の村なんか一瞬じゃないのか?おいおいおい、マジでやばいぞ。全員ウチの部屋に避難……出来る訳ないな。立って寝るとしても何人、入れるんだって話だし、食料ももたない。となると、やっぱり皆、町に避難か?って町ももたないって言ってるじゃないか、あ、駄目だ。終わりですよこれ。


「坊主、そんなに面白い顔して悩まなくてもいいぞ。まだ決まった訳じゃない。ちょっと状況が似てるってだけだからな」


 そんなに面白い顔してたか俺。え、今まで色々妄想してる時とかも顔に出てたんだろうか。うわ恥ずかしい。


「前は、こういう状況になってからモンスターがあふれるまで1年以上あった。今回は先手が打てるかもしれん。坊主、エジャって知ってるか?」


 マスターさんの口からもエジャの名前が出た。細目長さんだけじゃないのか。そしてまだ恥ずかしい。だが今は真面目な時間だ。真面目な顔を作って話すぞ。


「エジャはペタの叔父おじさんっすよね。よく知ってますよ。一緒にモンスターと戦ったりしましたんで」


 俺の答えにちょっと驚いた様子のマスターさん。俺はこっちに来てからエジャにはメッチャ世話になってる、もう俺の家族だ。ペタと同じだ。いや、ペタは世話してる方だな。


「知ってるなら早いな。エジャは10年前、俺達と一緒に戦った仲間だ」


 今度は俺が驚く番だ。マスターさんの仲間って、当時エジャは14か15歳ぐらいだろ。ああ、でもペタの事を考えれば、現在あの村の狩猟頭しゅりょうがしらであるエジャが、それぐらいの歳でも、相当、戦闘能力が高くてもおかしくないか。


 今なんか、弓、ナイフ、ナタと使い分けられたら俺も無傷で勝つ自信は無い。俺が怖いと思う人族は力じゃなく技術のある奴だ。騎士なんかよりずっと強い。


 ちなみにモンスターはパワーが怖い。毒も怖いな。デカいのも怖い。


 ちょっと変な想像をした。地球でやったゲームだ。


 まず、前の騎士総長という人が勇者だったとしよう。マスターさんとアニさんが戦士だ。エジャが狩人で、おそらくそうなると細目長さんもいただろうから、あの人は盗賊?まあ盗賊が正義の職業かというのはちょっと疑問がある。なんで盗賊が町や城を自由に歩き回ってるんだ。いやでも、あのゲームでは勇者がそもそも他人の家に勝手に入ってたな。駄目だな。悪い奴ばっかりだ。


 違う。またれた。ええと、だから当時の勇者パーティは戦士、戦士、狩人、盗賊だったわけだ。それと、騎士団。


 魔法使いがいない。当たり前か、魔法なんてない。この星には魔法使いなんて……


「そのエジャに依頼を出す。大森林の偵察だ。何かしら早めに確認できれば、皇都に応援も求められるし騎士団の補強も出来る。それに……」


 マスターさんはそこまで言うとニヤっと笑った。


「今回は魔法使い族がいるからな」


 あああ、魔法使い枠で戦力に数えられてる。嫌だ。俺、魔法ダメ。俺、忍者。




 その夜、手からデカい火の球が出る夢を見た。ちゃんと3段階あった。






「魔法使い族だからって、何でも出来るわけじゃないんすよ」


「はあ、そうですか」


「でっかい火も出ませんし、空も飛べないっすよ」


「でも、気持ち悪いぐらい速く動けますし、スライムを素手で殴るなんて気持ち悪……あ、すみません」


 リカータさんに気持ち悪いを連呼された。ペタは朝からステーキをほおばってムグムグしている。寝相が心配だったが、普通に大人しく寝てたらしい。じゃあ蹴ったり殴ったりするのは俺の時だけなのか?納得いかん。あと俺の動きは、一般の方から見ると気持ち悪く見えるのか。納得いかん。


 俺とペタはでかいステーキを食っているが、リカータさんはモーニングセットみたいな奴だ。量は異常に多い。


「色々、食べ比べたいんです!」


 と鼻息荒く宣言していたリカータさん。まあメニューがないから、一律同じ値段でシェフお任せの、ちょっとリクエストも聞くよ。みたいな感じだが。


「このサラダの味付けは……初めてだわ。レシピ売ってもらえないかしら」


 もう俺の愚痴ぐちは聞いてくれない。商売の事で頭がいっぱいのようだ。


 俺はもう、モンスターの大群と戦う事をシミュレーションし始めているというのに、ペタとリカータさんのノンビリ具合が違う世界の人みたいだ。まあ知らないから当たり前なんだけど。


 いや、マスターさんの言う事を信じれば、あと1年ぐらいは余裕があるし、エジャなら原因を見つけて、取り除いてくれるかもしれない。そうなればそんな恐ろしい事をしなくて済む。


 あ、もちろん俺は、そんな危険そうな偵察任務に参加する気は無い。森の中なら俺なんかよりエジャと、その仲間達の方が上手く動けるし、俺は別の任務があるから。ほら、魔法使い族の遺産探ししないといけないから。


 どこから探すかな。あ、やっぱり海だな。折角リカータさんから行き方を教わったし、ペタも行きたがってるし、海へ行こう。そのついでに遺産探しだ。いや、遺産探しついでに海だ。ここ間違えちゃいけない。仕事で行くんですよー。


 でも、季節もちょっと早いし、やっぱり休養は必要だと思うんだ。少なくともこの村で買った野菜がなくなるぐらいまでは、ウチの部屋を拠点にノンビリ過ごすぞ。ちょっと騎士団辺りから俺は働き過ぎたと思う。文句は言わせない。


「ハルキ、にく、いらないなら、ペタがたべてあげてもいいぞ」


 俺だけ食い終わってなかった。疲れてるんだな。疲れた脳と体には栄養だ。この栄養過多で胃下垂いかすいの野生児にはやらない。食べて頂かなくて結構です。


 残っていた肉と野菜を一口で食ってやった。


「そんな食べ方して、気持ち悪くないですか?」


 う、気持ち悪いって言わないでくださいリカータさん。






 馬車が十数台、村を出る。この内3台はこのまま森に入る。リカータ商会の馬車だ。狐族の村に、主に毛皮を仕入れに行く。


 乗っているのはリカータさんと商会の人達数名。あと護衛で俺とペタ、他数名。やっぱりあの俺になついている2人組と、馬のおっちゃんは別だった。まあ全然いいんだけど。男が好きな訳じゃない。全く。


 この道は、馬車がすれ違うのがギリギリぐらいの幅だし、森の外の道ほど整備もされていない。当然揺れる。尻が痛い。


 そしてペタがあっという間に酔った。


「リカータさん、俺とペタは外を付いて行きますわ。森だと見通しも悪いし」


 これは本当だし、馬車のスピードも全然出ていない。歩いても付いて行ける。そして、


「うおおおおお!うああああああ!」


 外に出した途端ペタが凄い勢いで復活した。うん、やっぱりペタには森だ。森にはペタだ。スライムには水みたいなもんだ。


「あんまり離れんなよー」


 奇声を上げながら、木々の間を無駄に潜り抜けて行くペタに声を掛ける。生き生きしてるなあ。俺は平地ならともかく、森の中では全力のペタには付いて行けない。謎改造されたこの体でもだ。それぐらい森ってのは特殊だ。


 いや、木とか全部へし折って良いなら行けるかもしれないけど。


 馬車の中からリカータさんが声を掛けて来た。


「あの、この勢いだと村まで行かなくてもそこそこ商品が揃っちゃいそうなんですけど」


「ああ、ええと休憩の時にみんなで食べましょう。お金は請求しないんで」


 ペタがたまに森の奥に入っては緑ウサギや鹿っぽいの、あとカピバラさん……いや、大きいネズミだ。大きいネズミなんかを獲って来る。


 なんか初めて会った頃は、緑ウサギ1匹で喜んでたと思うんだが、子供の成長って早いなあ。いくら鉄の矢になったとはいえ、新しい武器じゃ逆に上手く扱えなさそうなもんだけど、ペタは間違いなくレベルアップしている。


 慣れない環境に押さえつけられた状態で、毎日スポーツジムしてたのが良い方向に働いたんだろうか。解放されたペタの弓はエジャ並みかもしれない。


 このゆっくりしたペースで行っても、昼過ぎぐらいには村に着くだろうが、やっぱり道が悪いと馬も消耗する。どこかで休憩をとるみたいだからその時に消費しよう。動いてるからペタも食うだろう。あと、ウチのギルド員達もタダ飯だとアホみたいに食う。アホだからな。アホだ。ああ俺の金貨12枚。


 ペタは元気だし、ギルド員達も喜んで獲物の為に場所を開けて、外を歩いている。食う気マンマンだな。森だけど明るいうちはそこまで危険な奴は出ない。




 ただ、ちょっとだけ心配な事もある。昨夜のマスターさんの話だ。


 スライムだけじゃなく、モンスターの集団化、強力な奴の目撃。この辺だ。


 俺がこっちで初めて死にかけた相手は、5メートルの熊モンスター、グリードベアだった。確か、あれはもっと森の奥にいるモンスターだと聞いた。


 そして、100匹を超えるゴブリンの集団。まあ俺の中ではあれは緑の小人族だが、これもやっぱり多い。普通は狩りに出るのは1グループ10匹程度だそうだ。


 もしかして、あいつらも何らかの異変のサインだったんじゃないだろうか。


 足元から石を3つ拾って森の中に投げ込む。さっきから何度かやっているから他の護衛には暇つぶしに見えてるだろう。


 今も、こっちの様子をうかがっていたフォレストウルフを3匹追い払った。まあ殺す事は無い。食っても美味しくないらしいし。


 そのフォレストウルフだってそうだ。滅多に昼間から狩りはしないとエジャに教わった事があるが、妙に遭遇率が高い。


 もしかしたら、今歩いているここにグリードベア並みのモンスターが出る可能性だってある、かもしれない。ちょっと気を張る必要がある。


 ペタが潜り込んでいる側はあいつにある程度任せて、反対側を中心に気配を探りながら進む。これは、村に着いたらエジャとちょっと話をしないと駄目だな。


 そんな事を考えながら歩いていると、ペタが森から出て来た。


「矢が、いっぽんなくなった」


 うわ、泣きそうだ。なんだコイツ意外に涙もろいのか?結構泣かせないように色々気を使って来たのに、矢の1本で泣くのか?新たな一面だ。


 だけど、お前の矢筒には20本近い矢が残ってるじゃないか。矢は消耗品だぞ。ああ、でも嬉しそうだったもんな。さっきまでだって矢は全部回収した上に、血や脂をきっちり拭き取っていた。Tシャツでだ。リカータさんに布をもらおう。


「鉄の矢だったら狸族の村にも売ってたし、また買ってやるから」


「100ぽんかってくれるのか!?」


 もう笑った。だけどこら、誰が100本も買ってやるか。だから邪魔にならない本数しか買わないって。


「矢じりも回収できなかったのか?」


 ふと気になって聞く。鉄の矢とはいっても特別なのは先端の矢じりだけだ。そこが残ってれば、作り直せるはずだ。元々ペタが使ってた石の矢も手作りだ。


「ささらなかったから、どっかいった」


 ペタの矢が刺さらないって鉄の矢だぞ。それにその言い方だと命中はしたんだろう。かすっただけとかじゃない。当たった上で、それが弾かれてなくなったって事だ。


「何に撃ったんだ?」


「みたことないやつだ。石になった」


 この森でペタが見たことのない何かが近くにいる。しかもそいつには鉄の矢が通らない。


「ペタ、もうここからは森に入るな」




 俺の雰囲気が変わったのに気付いたのはペタだけだ。耳と尻尾が逆立った。




読んでくださってありがとうございます。


すんなりは行けないようです。


ちょっと修正ー。

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