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惑星の魔法使い  作者: モQ
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第71話 子供が描いた宝の地図

 さあ、出発だ!


 なつかしき狐族の村へ!そして我が家へ!


 と思って窓を開けたら大雨だった。しかも普通の雨じゃない、台風並みだ。えっと、コレ行くのかな。雨天決行なのかな。その辺聞いてなかったけど……


「あめだーー!」


 ペタはキラキラと目を輝かせている。子供って台風でなんでこんなに興奮出来るんだろう。こいつはアレか。カエルが出るから嬉しいのか。だいぶ前に2人で雨の中カエルを追い回したのを思い出した。


 あの時は風呂があったから良かったけど、ここには無いよな。風邪ひくぞ。


 まあとりあえず行くだけ行ってみよう。こっちの人族は雨ごときで仕事を中止にはしないだろう。例え、こんな暴風雨警報が出そうな感じでも。


 バックパックに防水シートを被せる。俺のこの小さめの方のバックパックは、元々、自転車競技とかやってる人用のやつだ。ランニングに丁度いいから使っている。そしてこうやって雨用の防水シートも付属で付いている。ちょっと色が派手だからあんまり使いたくないが仕方ない。


「ハルキのかばんがおしゃれになった!」


 まあこんな蛍光色の黄色はこっちに来てからは見た事がない。目立つなあ。


 革の背負い袋や小物は、最初から防水というか、ほとんど水は通さないからこれで荷物は濡れない。問題は……俺とペタの体だ。確実に全身ズブ濡れになる。


 と、思っていたら家を出る前にアニさんが、


「ハルキ君、ペタちゃん、これを着て行け」


 と革のマントを渡して来た。おお、気が利く。フードも付いてるしこれなら合羽かっぱ代わりになる。体も冷えないぞ。さすがアニ先生。久しぶりに先生と呼んだ。心の中だけだが。


「2つで銀貨8枚で良いぞ」


 よし、この筋肉親父、もう一度腕相撲がしたいらしいな。今度は手加減しないぞ。床にめり込ます。


 スパーン


 テディさんのジャンピングパンチが炸裂した。


餞別せんべつだって言ってたでしょう、親方!」


 いや、最後にこのやり取りが見れて良かった。ってまた来るだろうけどな。テディさんにも会いたいし。そして、もし雨天中止ならすぐ戻ります。


 ペタはマントを羽織ると、とっとと雨の中に飛び出した。アニさんが泣きそうだぞ、何か言ってやれよ。


「じゃあ、お世話になりました。またペタ連れて来ますんで」


 俺が代わりじゃないけど挨拶しておいた。テディさんもちょっと涙ぐんでいた。そんなに遠くないけど、モンスターもいるこの星じゃ、旅ってのは結構大変な事なんだな。2日で着く距離も命懸けってこともありうるんだ。ちらっとゴブリンの事を思い出してしまった。忘れよう。


 2人に手を振って歩き出す。


 大雨の中、大きな砦がかすんで見える。色々あったなあ。


 まず、町に来て……とか思い出し始めるとかなりの濃い内容になるので、さっさとペタを追いかける事にした。


 そして、さっき防水シートをかけたバックパックは、そのまま背負い袋にねじ込んだ。だって、マント着てたらこんなもん背負えない。ペタだっていつもは背負ってる弓を手に持ってる。


 うん。やっぱりコレ買って正解だったな。片手で背負い袋をブラブラさせながら町の門に向かって歩いていると、左手をペタに握られた。いやそれは良いんだけどマントの前がめくれてめっちゃ雨入って来る。結局濡れた。






 門の近くにある広場に、かなりの人と馬車が集合している。やっぱり雨天関係なしなんだな。しかし、想像以上に馬車が多い。ほとんど幌馬車だが100台以上あるんじゃないのか?


 まあ全部が同じ所に向かう訳じゃないんだろう。町を出たら別々の道を行くはずだ。で、狐族の村方面はどちらでしょう。誰に聞きゃいいんだ?


「あの、ハルキ様ですか?」


 知らない人に声を掛けられた。しかも女の人だ。逆ナンか?だがごめん。俺は毛有りの人はちょっと守備範囲外なんだ。声でかろうじて女の人だって分かる程度だ。動物として見るなら可愛い。何族だろう、見かけない感じだな。


 あと、何で俺が分かったんだろう。それに様付けはこそばゆい。


「ああ、はい。そうだけど、あんたは?」


 俺が答えると嬉しそうにニコっとする謎の女の人。雨のせいでよく分からないけどニコっとしたと判断した。この人、フードの隙間から見える耳がちょっと小っちゃい。……うーん。マングース?いや、違うか。テンかな。でも目の周りの黒縁くろぶちは違うなあ。


「リカータ商会のリカータと言います。2日間よろしくお願いします」


 そう言って手を出して来た。雇い主さんか。まあ、俺にとっちゃタダで乗れるバスなんだけど。


「どうもハルキです。そんでこっちが」


「ペタだ!よろしくおねえちゃん!」


 お姉ちゃんか、若いんだな。どこで見分けてるんだろう、さっぱりだ。ただ、商会の名前と、自分の名前が同じって事は社長なんだな。若いのにエライ。


「すみません、もう少し積み込みに時間がかかりそうなので待って頂いて良いですか?何せこの雨なので」


 謎の動物族の社長の女性が言う。おう、これじゃ最高に呼びにくい。名前は……ええっとリカータさんだった。よし2日だけ覚えとくぞ。リカータさん。


「リカータさん」


「はい、何か?」


 よし合ってた。隣で「おおお!ハルキがなまえをおぼえた」とか言ってる奴は無視しとこう。


「あの、何で俺が分かったんです?……あと、何族の方ですかね……すみません」


 種族を聞くのは失礼だろうか。その辺のマナーは分からない。だって今から通る狸族の村にしても俺が勝手にそう呼んでるだけで、あの人達が狸なのか実は分かっていない。聞いてないからな。


 そんな俺の心配は他所よそに、リカータさんは普通に答えてくれた。


「はい、私はミーアキャット族です。この辺りじゃ珍しいですよね」


 おお!ミーアキャット!俺の飼いたい動物ベスト20に入ってるぞ!なんで分からなかったんだ。雨のせいだ。マングースに似てて目の周りに黒縁。この小さい耳。ミーアキャットだよ。あの立ち上がって周りを見る奴だ。急に愛らしく見えて来たぞ。普通に大きいけど立ち上がってるミーアキャットそのままだよ。マントとか邪魔だな、全部脱がしたい。


 おっと、ヤバイ。この星ではこの考えは犯罪だ。このミーアキャットさんは地球のミーアキャットじゃなくて人だ。人族だ。服脱がすとかヒドイ話だ。あ、名前が分からなくなった……


 俺の心があっちこっちに行っている事に気付いた様子もなく、ミーアキャットさんが話を続ける。


「ハルキ様はすぐ分かりましたよ。白い狐族の女の子を連れた銀章の魔法使い族。すごく有名ですから」


 こう言って笑うミーアキャットさん。確かに、ペタは目立つし、手を繋いでいるせいでマントがめくれてビショビショ……は、良いとして、銀バッジも見えている。


 しかし、魔法使い族ってもうそんなに広まってるの?しかも有名なの?


「あ、すみません。また呼びに来ますので、屋根のある所で待っててもらって良いですか」


「あ、ハイ」


 ミーアキャットさんは馬車の方に走って行った。社長は忙しいようだ。


「なあペタ。俺ら、有名だってさ」


「とうとう、せけんがペタのみりょくにきづいたか」


 おかしな含み笑いを始めたペタの手を引いて、近くの建物の屋根の下に避難する。俺が魔法使い族ってカミングアウトしてから、まだ4日目だよなあ。まあ、町中ペタ連れてウロウロしてたし、目立ったのは分かるけど。


 同じように傭兵ギルドの銅バッジを付けた奴らが雨宿りをしているので、ちょっと声をかけてみる。


「なあ、あんたら俺知ってる?」


 急に声を掛けたからだろうか、4人のギルド員たちがアタフタと答え出した。


「は、はい!魔法使い族のハルキさんですよね!」


「もちろん知ってます!ギルド秘蔵の最終兵器って聞いてます!」


「鎧を着た騎士を10人(まと)めて投げ飛ばしたんですよね!」


「砦の壁を修復不能にまで壊したって聞きました!」


「ギルドの訓練場に大穴を開けたのもハルキさんですよね!」


「ファンです!」


「ペタちゃんも可愛いです!」


 おい、なんか色々広まってる上に、ちょっと情報が間違ってるぞ。細目長さんの仕業だなこれ。あと、訓練場に穴開けたの俺じゃなくてペタだし。


 おいペタ、可愛いって言われてニヤニヤするな、そいつはロリコンだ。


「あ、そう。ありがとう。頑張ろうな」


「はい!」「ハイ!」「はい!」「イエッサ!」


 ちょっとだけ離れて待つ事にした。


 まあ、こんだけ広まってるなら逆に動きやすい。人族離れした動きも全部、魔法使い族なんで。で通るだろ。ライターやスマホだって使いやすい。






 雨は強いままだ。この星には天気予報とか、ないんだろうな。あったら今日を選ぶはずがない。俺のスマホに入ってるお天気アプリだって電波がなけりゃ何の役にも立たないし、電車の乗り換え検索のアプリなんか、もうどうしようもない。


 マントの下でチラッとスマホを見る。時間は午前6時30分だ。ペタが怖がるから堂々とは見れない。


 俺のスマホで使えるのは、この時計とアラーム、ストップウォッチ。それとカメラ関係とボイスレコーダーぐらいだな。ああ、メモ帳と電卓もあるな。


 地図アプリが使えりゃかなり良いんだけどなあ。ポチ。うん、何にも映らない。


 地名が覚えられないのも問題だが、こっちには本当に地図がない。町から北へ1日とか、東へ何日とか、そういう言い方をする。そうだ、流石に商人さんなら何か地図を持ってたりしないだろうか、ミーアキャットさんに聞いてみようかな。






「ありますよ」


 地図ってないの?と聞いたらミーアキャットさんはサラっと答えた。まじか。


 俺とペタは商会長であるミーアキャットさんと同じ馬車に乗った。銀バッジだからだろうな。とは言っても木箱やら何やらいっぱい載っている幌馬車だ。お貴族様みたいなやつじゃない。


「でも、あまり正確なのは無いんですよ。国で禁止されてますので」


 と言いながら、大きなカバンをごそごそするミーアキャットさん。なんで禁止するんだろう。みんな持ってた方が便利なのに。


「私が持ってるのはこれです」


 畳んであった紙を広げると結構な大きさだ。荷物が積んである馬車の中では広げきれない。


 っていうか、確かに雑な地図だ。手書きだし。まあ印刷とかなさそうだし、全部手で写すんだろう。


 雑っていうのは、なんだか子供が描いた宝の地図みたいになってるからだ。山があって森があって川があって町がある。それしか分からない。多分縮尺しゅくしゃくも適当だ。


「えっと、ビャッコがここで……今向かっている狸族の村はここです。狐族さんの村は、すみません……この辺りとしか」


 ミーアキャットさんが指をさしながら説明してくれる。なんだか申し訳なさそうなのはペタがいるからだな。そしてペタは確かに不満そうだ。自分の村が描かれてないもんな、森しかない。村は結構あるって聞いてたけど、地図にはあまりない。描かれてないんだな。


 しかし、今まで気にしていなかった町の名前はビャッコだったか。騎士団も白虎騎士団とか言ってたもんな。なんというか……ダサいな。なんとなーく覚えとこう。そして狸族の村は狸族の村で良かったんだな。


「これ、小さいのは無いんですか?」


 俺も欲しいが、こんなにデカいのはいらない。


「このサイズより小さいのも禁止されてるんです」


 ミーアキャットさんの台詞せりふにびっくりだ。なんでそんな訳の分からない事をするんだろう。じゃあもしかして……


「これ、描き写したりするのも?」


「はい、禁止です」


 なるほど、これは帝国さんから俺への挑戦と受け取った。


「じゃあ、描かずに写してもいいですか?」


 今度は、俺の台詞にミーアキャットさんがびっくりしている。


「覚える……とか、そういう事でしょうか?だったら良いと思いますけど」


 覚える。うん、そうだな。ただし覚えるのは俺じゃないけどな。


「ペタ!お前を魔法使い族の弟子として認める!」


「おおお!なんだきゅうに!」


 地図の森辺りをじーっと見ていたペタがピョコンと頭を上げた。


「今から、魔法の板を使うぞ。だが、お前は弟子として認められた。もうお前に悪い事は起こらない!」


「ほんとか!あれ、もうこわくないのか!」


 俺の茶番劇にポカンとするミーアキャットさん。そして喜ぶペタ。そういやこいつ酔わないな。もう慣れたのか。すげえな。


 ペタを助手にして狭い馬車の中で地図の撮影会が始まった。


 スマホが覚えるんだから良いよな。




読んでくださってありがとうございます。


たぶんバレたら怒られます。

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