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惑星の魔法使い  作者: モQ
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第31話 キラリと光る

「おい、おめえら様子見てこい」


 目の下に傷のある虎族の親父さんが奥から出て来て、ハイエナ族1、2に声を掛ける。よく見ればエプロンに子供の落書きみたいな虎の刺繍ししゅうがあってカワイイ。


「ヘイ親分!」「ヘイ親分!」


「マスターだっつってんだろうが!」


 親父さんモトイ、マスターに怒られながらハイエナ族達は慌てて飛び出して行った。


 俺も行かなきゃ駄目だろう。今この村で何かあれば、それは騎士がらみの可能性が高い。状況が変わったかもしれない。


 でも行きたくないんだ。狐族の狩人の皆さんがしらせに来たりしてくれないかな。宿は分かってるし来てくれるかもしれない。そう、目の前には、まだ半分ぐらい残った晩飯がある。残す訳にはいかない。


「全くあいつらは、前の仕事が抜けねえな……ん、お客さんらは落ち着いてるな」


 俺とペタがモグモグ飯を食っていると親父さんが、いやマスターが話しかけて来た。だって俺もペタもご飯中だし。


「もはんふぉふぉほふわへひふぁいははひ」


「お嬢ちゃん、何て言ってるのかわかんねえよ」


 マスターさん苦笑いだ。


「ごはんをのこすわけにはいかない。と申しております」


 訳してやると、マスターさんは豪快に笑った。


「坊主もお嬢ちゃんも大物だな!」


「いや、ホントは見に行きたいんですけどね。飯が美味いんで」


 俺の言葉に気分を良くしたらしい。1杯飲み物をおごってくれるそうだ。


「じゃあ、二人ともジュースで」


「なんだ、坊主はもう成人してるだろ?酒じゃなくていいのか?」


「酒飲んじゃうと、戦えないんで」


 おっと、本音を言ってしまった。変に思われないだろうか。


「ペタは、おさけにもきょうみがあります」


 右手をピシッと挙げて宣言しているペタはスルーだ。


 マスターさんはニヤリと笑って、奥からジュースを二杯持ってきてくれた。スルースキルもお持ちのようだ。さすが大人。こっちの大人って何歳からだ?


「やっぱり坊主、只者ただものじゃねえな」


「いえいえ、ただの旅の商人ですよ」


 顔を見合わせながら二人で悪い顔でフフフフと笑う。そういうマスターさんこそ只者じゃなかろうに。あ、ペタは見ての通りのただの野生児だが。


 既にもらったジュースを飲み干した野生児が虎視眈々(こしたんたん)と俺のジュースを狙っているようだ。興味ないふりをしているが、お前の耳は嘘発見器なんだよ、お前自身の嘘を見破るタイプのな。


「マスターさんは、あのハイエナ族達とどこで知り合ったんですか?」


 ジュースを飲みながら、何となく気になっていた事を聞いてみる。あいつら元、ナントカ盗賊団だしな。あとジュースはリンゴ味だった。美味かった。ペタの耳がしぼんだ。


「坊主、あいつらの事知ってたな?」


 マスターさんが近くの椅子に座りながら言う。この人デカいから椅子がちっちゃく見えるな。そして俺はもう騒動の現場に行く気は完全になくなっている。


「いや、なんとなくですよ」


「ほう?まあいい。ちょっと前に森の近くで倒れててな。まあ飯を食わせてやったら働かせてほしいとか頼まれてな」


 マスターさんも盗賊上がりだって気づいてるんだな。んでやっぱりあいつらは飯に釣られた、と。でも、ここ儲かってんのか?他に客がいない。良心価格だし。


「おきゃくがいないのに、きゅうりょうはだいじょうぶなのか?」


 ペタが余計な事言った。


「バッ、お前バカ!そういうのは思っても言っちゃダメな……」


 俺も余計な事言った。


「ガハハハッ!二人とも言ってくれるじゃねえか!まあ、心配ご無用だ。ウチは老後の趣味みたいなもんだからな。従業員の給金ぐらい稼げりゃいいのさ」


 なるほど。そういう事なら分かる。そしてこの人、顔は怖いけどいい人なんだな。まあ、虎族はみんな顔は怖い。


「親分!げぶっ」


 ハイエナその1か2のどっちかが飛び込んできた。そしてそのままマスターさんに拳骨を食らった。


「ま、マスター、あの、殺しでさあ」


「どこだ?」


 マスターさんの雰囲気が変わった。俺もここで歓談している訳にいかなくなったかもしれない。


「村の一番でかい宿で……騎士同士がなんかめたらしくて」


「チッ!お前は店番してろ。坊主、ちょっと俺は出て来るんで、まあゆっくりしててくれ」


 マスターさんが出て行った。だがそりゃゆっくりできる状況じゃないな。


「ペタ、1人で待ってられるか?」


「ペタもいくぞ」


「だろうな。じゃあはぐれんなよ」


 ちゃんと手を合わせてごちそうさまをしてから、俺達も宿を出た。




 辺りは夕日も沈んで薄暗くなっている。騒ぎは確かに村の中心の方向だ。さっき殺し、と聞いた時は、狐族の狩人の誰かが騎士に見つかってやられたのかと思って焦った。だが、騎士同士って事はそれはないだろう。


 となると、3バカが殺し合ったのか?あの隊長は嫌な奴だったけど、まあ上の命令だろうし、俺が邪魔した結果で死人が出たってんじゃ気分悪いな。


 村は、家の壁に松明たいまつが掲げられている所がちょくちょくあって視界は確保出来ている。完全に真っ暗だったら用水路に落ちるかもしれない。嫌だな。用水路じゃなくてただのむき出しの下水だもんな。さすがに心折れるわ。水の量がそこそこあるおかげで臭いはないけども。


 小走りで村の中央に向かうと人混みが見えて来た。


 人混みの向こうには通行禁止の黄色いテープがあって、警察が色々調べてるのを野次馬が写真撮ったりしている。はずがない。


 そんなイメージが湧いただけだ。どこでも野次馬は集まるんだな。いや俺は違うぞ。どっちかって言ったら関係者だ。


 そういや、この辺は警察みたいなのっているのか?騎士団がそうだとしたら、騎士は誰が捕まえるんだろう。


 ペタの手を握ったまま人混みに潜り込んでいく。手を離すとコイツ、人混みの足元を抜けて現場最前線に飛び出しかねない。


 俺は、この村に入ってからずっと、寝る時以外は荷物を全て持っている。全部貴重品だからだ。でもペタは弓矢を宿に置いて来た。何か危険があるとまずい。1人にはできない。


 人混みの最前列より少し後ろに陣取って様子をうかがう。どんな状況だ?


「ハルキみえない」


「子供が見るもんじゃありません」


 ペタが腰の辺りでブーブー言っているが、これは見せられない。


 昨日見た時は全身鎧を着ていた騎士達だが、今は鎧を脱いでいるんだろう。足元は金属の鎧の一部だが他は軽装だ。


 だが3人の内、2人が地面に倒れている。そして紺色の上着が黒っぽく変色している。血だろう。地面にもそれらしい液体が流れている。やったのは立っている1人だ。抜き身の剣を握っている。息も荒い。


 宿のドアが壊れていて明かりが漏れている。宿の中で揉めて、扉を破って外に出て来たわけか。


 倒れている内の1人は、肩から腕を吊っていたようだ。包帯が一緒に落ちている。俺が肩を外した部下その1か……


 村の警備をしている兵士達が数名、近くで説得している。喧騒けんそうに紛れて聞き取りづらいが……どんな会話をしている?


「騎士様、落ち着いて欲しいニャ。村人が怖がっていますニャ」


「やかましい!俺は騎士だぞ!こやつらが命令違反しようとするから罰しただけだ、何が悪い!」


 犯人は隊長虎か。かなり興奮している。今、説得に当たっているのは村の入り口に居たニャの兵士さんだ。大丈夫か?その間合いだと、そこのバカが暴れ出すと真っ先にやられるぞ。


「騎士様、それは分かりましたニャ。詳しい話を聞きたいから詰所つめしょまで御同行願いたいですニャ」


「やかましい!村の衛兵ごときが口を出すな!」


 隊長虎は、もうこれ以上話す事はない。といった感じで宿に入ろうとする。だがニャの兵士さんも引き下がらない。俺なら放っとくんだけどな、職務に忠実なんだな。


「それは困りますニャ!これだけの騒ぎになってしまっていますニャ!話だけでも……!」


 隊長虎が振り返るなり剣を振り上げた。周りから悲鳴が上がる。ヤバイ。今から飛び出しても間に合わない。投げナイフもこの人混みじゃ取り出せない。


 だが剣は振り下ろされなかった。


 2メートルはある隊長虎の背後に、更に頭一つ分大きい虎族が現れ、剣を持った手首を握る。この距離でもゴキッという音が聞こえた。折ったか。


 剣を落とした隊長虎が、折れた手首を握りながら振り返り、目の下に傷がある虎族に向かって叫ぶ。


「きっ、貴様!第2騎士団、中隊長の私を……!」


 隊長じゃなくて、中隊長だったか。


「いつから騎士団はこのような無法集団になったのだ!!」


 マスターさんが吠えた。正に虎の咆哮ほうこうだ。空気がビリビリする。同時に拳が隊長虎、改め中隊長虎の顔面を捉えた。エプロンがひるがえり虎の刺繍ししゅうがキラリと光る。


「うわ、すげえ」


 思わず声が出た。あの巨体があれだけ吹き飛ぶのはヘビー級の試合でも見た事がない。


「みえないー」


 そしてペタのジャンプ力もすげえな。60センチ近く飛ぶ子供も地球では見たことないぞ。それでも見えないみたいだが。周りの人が迷惑そうだ。ごめんなさい。


「連れて行け」


 マスターさんが兵士達に声をかけているが、アレ死んでないか?あ、ピクピクしてる。生命力すごいな。


 中隊長虎は、兵士達に引きずられていった。どうやらマスターさんも一緒に行くみたいだ。まあ目を覚まして暴れたら取り押さえるの大変だろうしな。しかし騎士を殴って大丈夫なんだろうか。


 死んだ2人の騎士も荷車みたいなのに乗せられて運ばれて行く。あいつらとも色々あったけど手を合わせておく。馬鹿な上司を持つと死ぬ世界か、大変だ。


 集まっていた野次馬もバラバラと解散して行く。八百屋のおばちゃんもいるな。また色々推理して喋りまくるんだろうな。


 俺もペタの手を引いて宿に戻る。最中ずっとペタが「みえなかった」とブーブー言っていた。明日、またあのおばちゃんの店でリンゴを買ってやろう。


 おお、そうだ。


「ペタ、問題です。1つ銅貨1枚のリンゴを、3つで銅貨2枚にしてもらいました。いくら得したでしょうか?」


 こうやってちょっとずつ算数の勉強だ。


「3こは、あきるから、とくじゃない」


 うんそういう問題じゃないんだ。






 宿に帰るとハイエナ1、2が不安そうにウロウロしていた。適当に見てきた事を話してやると、


「まだ、晩飯食ってないんですよ……」


 とか言ってやがった。そっちの心配かい。


 さあ、面倒な事になったぞ。あんだけ大騒ぎすりゃ、3バカの会話や揉めていた内容も誰かに伝わっているだろうし、騎士が殺し合ったとなれば、町に連絡も行くだろう。どうしたもんか。


 とりあえず、ペタを連れて井戸で水浴びをした。ちょっと寒いな。あと、下着とTシャツの替えは何枚か持っていたが、いつものトレーニングウェアは着て来たワンセットしか持っていない。バックパックの容量が足りなかったから仕方ない。ラーメンのせいだ。


 同じのは着たくないが、今日は諦めるか。ペタに至っては着替えなんか持っていない。仕方ないからペタにもきれいなTシャツを着せて、洗える物は洗って部屋に室内干しした。カビ臭くなるんだよな室内干し。でもウチの服は万が一にも盗まれたら困る。


 おい、嬉しそうにするな。そのTシャツは返してもらうぞ。


 明日どこかでパジャマがわりの服を買おう。丁度、背負い袋もあるし、コレに入れときゃいいだろう。


 尻尾穴開いてない服売ってるかな。




読んでくださってありがとうございます。


プールからの投稿ですアツイ。

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