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惑星の魔法使い  作者: モQ
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第12話 ドラゴンとか来た

「誰じゃ!暑いのに、こんな所に集合させたのは!」


「じっちゃんだ!」


「そうじゃった!ホッホッホウ」


「あははははは!」


 じいさんと孫の、どうでも良い漫才が終わったので改めて聞く。


「この祭壇と、ハイエナ族となんか関係あるんすか?」


 俺達は村の広場にある祭壇に来ている。おキツネ様が住んでそうな犬小屋サイズの祭壇だ。俺達というのは、俺、じいさん、ペタ、そしてエジャだ。


「ハルキ殿ちょいと来てくれるかな」


 じいさんが祭壇の前まで行くとオイデオイデと手招きをする。エジャの方をチラッと見ると軽くうなずいている。昨日、村に着いた時に近づこうとしたら、なんだか怒ってたみたいだが、どうやら信頼を勝ち得たようだ。


 祭壇の近くに寄ってみると、まあやっぱり犬小屋だな。ちょっとばかり派手にデコレートされた犬小屋だ。「カトリーヌ」とか「フランソワーズ」みたいな名前の犬が住んでそうな感じだ。ただ両開きの扉が付いていて、犬だったら自分で開けて出入り出来なさそうだ。いや犬は賢いから覚えるかもしれない。


 じいさんがその扉をパカッと開いた。中をちょいちょいと指さすのでのぞいてみる。ペタが俺の頭の上に顔をのせて一緒に覗く。重い重い。いや重くはないけど気持ち的に重い。


「からっぽ……っすね」


 おキツネ様もカトリーヌもいなかった。俺の反応を見てじいさんがウンウンと頷く。そして語りだした。


「この祭壇にはな、ドラゴンのうろこが納められておったのじゃよ」


 うおっ、ドラゴンとか来たよおい!ファンタジー世界最強の一角じゃないか。こりゃそのうち魔王とかも出て来るな。まさか戦わせる気じゃないだろうな。正直あそこに皮になってぶら下がってるグリードベアとも二度と会いたくないぞ。


「ドラゴンはご存知かな?まあ、要はでっかいトカゲじゃ」


 身もフタもないなじいさん。その言い方だと怖さが半減以下だわ。


「ただ、ちょっと最強で、火とか吹くだけじゃよ」


 ぐわっ、また俺の中でドラゴンが強化された!じいさんに振り回されまくりだ。そしてペタがドラゴンの真似をしているんだろうか、周りを四つ足で走り回っては「がおーがおー!」と叫んでいる。


「えっと、そのドラゴンの鱗がここにあったと。……んで、今はないのが、何か問題なわけっすか?」


 じいさんに恐る恐る尋ねる。戦って鱗を取って来いとか言われても無理だぞ。


「戦って鱗を取ってきてほしい。とは言わんよ。今ドラゴンはどこかの火山に住んでおるそうじゃが、そこまで行ける人族などおらんでな」


 じいさんエスパーじゃないだろうな。まあ戦わなくて済むならいいんだ。あと祭壇に登ってガオガオ言ってるペタを誰か叱らないんだろうか。あ、エジャに降ろされた。


「その、ドラゴンじゃが、伝説では遥か昔にこの大森林に現れたそうでな、その時に残して行った鱗が、ここに入っていた訳じゃ」


 ふんふん、なんとなく見えてきたぞ。ハイエナ盗賊の話からドラゴンの鱗の紛失とくれば……


「それが、二か月程前に何者かに盗まれたのじゃ。そのせいで村はこの有様じゃ」


 やっぱりな。盗んだのがハイエナ達じゃないかと疑ってるわけか。まあご神体を盗まれたら怒るわな。でも、


「その鱗が盗まれたのと、この村の今の状態と、何の関係があるんすか?」


「うむ。ハルキ殿は、遠くから来られたので詳しくはないのかもしれんが、モンスターというのは縄張りを持っていてのう」


 コクコクと頷きながらじいさんは続ける。


「ここにドラゴンの鱗があったおかげで、村にはモンスターは近づかなかったのじゃよ。それが、鱗が盗まれてからは、昨夜の様に度々、襲ってくるようになったのじゃ」


 まあ、グリードベアまで出たのは初めてじゃがのう。と言いながらぶら下げてある皮の方を見るじいさん。


「それじゃ、まさか村に人が少ないのはモンスターに……?」やられたのか?


 唾を飲み込みながら聞くと、じいさんはイヤイヤと首を振りながら答える。


「戦えない村人と、女、子供は外へ避難させておる。わしは村長じゃから残っているがのう」


「ペタはじっちゃんがのこるならのこる!それにペタもたたかえる!」


 ペタがじいさんの背中に飛び乗りながら言う。じいさん嬉しそうだけど腰が痛そうだぞ、やめとけやめとけ。ひょいっとペタを取り上げてやった。


「で、じいさんは、鱗を盗んだのがハイエナ盗賊じゃないかと思った訳っすか」


 おっと、つい村長さんじゃなくてじいさんって言ってしまった。もういいか。


「そういう事じゃ。赤い服というのでピンときたのじゃ。最近近隣の村を荒らしておる、赤獅子あかじし盗賊団という奴らの話は聞いていたでの」


「森の中にいたのであれば、怪しい」とエジャが言う。


「まあ、ハイエナ族がなぜ獅子なのかは分からんのじゃがの」


 じいさん俺と同じ意見だな。見ればエジャも頷いている。あー、やっぱりアレはおかしかったんだな、こっちの常識でも。あと、じいさん呼ばわりは問題ないようだ。


「じゃ、その赤獅子……ぷ……ハイエナの盗賊団を捕まえてドラゴンの鱗を取り返せばいいって事っすね」


 先に知ってたら昨日の奴らから聞き出せたな。まあ知らなかった物は仕方がない。じいさんが申し訳なさそうに言う。


「村を救ってもらった礼もできんうちに、このような事を頼むのは気が引けるのじゃが……ぜひ力を貸して頂きたいのじゃ、必ず礼はさせてもらうのじゃ」


「盗賊団を壊滅させるような事は必要ない。1人でも捕まえて、鱗の在処ありかを聞き出せればいい」


 エジャが言う。ああ、ほんとに昨日のあいつら捕まえとけば良かった。


「わかった。出来るだけやってみますわ。エジャ、ハイエナ達の居場所って、わかるのか?」


「助かる。盗賊団が、どれほどの規模かは分からないが、村の近くに居たのであれば、この森の中、浅い部分に拠点を構えているだろう。森から出れば、外の者に見つかるからな」


 おお、なるほど。さすが狩猟頭エジャは頼りになるな。


「もちろん、ハルキ殿1人に任せるわけではない。私も行く」


 エジャさん超頼りになる。森で1人は怖い。


「ペタもいくぞ!」


「いやお前は待て。子供は大人しく家に……」


 俺が言いかけると、まさかのエジャから、


「いや、ペタも連れて行こう」


 ビックリ発言だ。いいのか?じいさんの方を見ると、じいさんはニコニコしながらこう言う。


「ハルキ殿は優しいのう。じゃが、ペタはもう一人前の狩人じゃ、行くというものを止めることは出来ん。それに森を駆けさせたらペタの右に出る者は村にはおらんでの」


 まじか。野生児ペタは森の中では最強なのか。エジャよりもか。火つけられないぞコイツ。確かに移動は速かったが……ペタは腕をグルグルまわしてやる気マンマンだ。


「……分かった。んじゃ3人で行くって事でいいんすね。でも、エジャは村にいなくていいんすか?昨日みたいに、なんか……モンスターとか」


 モンスターって言うのにちょっと抵抗があった。普通、日本で暮らしてたら、ゲームの会話以外でこの名称はまず口にしない。1人で照れているとエジャが、


「大丈夫だ、他の狩人は残していくし、アレもある」


 と、広場にぶら下がっているグリードベアの毛皮を指さす。


「あれって……乾かしてるだけじゃないの?」


「それもあるが……先程も話に出たが、モンスターは自分より強者には近づかない習性がある。あの毛皮の臭いがある間は、この辺りのモンスターは寄ってくるまい」


 なるほど。ドラゴンの鱗が戻るまでの代替品だいがえひんになるってことか。


「鱗が戻ってくれば、あの毛皮を売って、お礼にさせてもらうでの」


 じいさんが言う。あれってそんなにいい値段で売れるのか?そんな疑問が表情に出ていたのだろう。じいさんがホッホウと笑いながら言う。


「あれだけの大物の毛皮じゃ。切り傷も少ないしの。町の金持ちどもがワンサカよってくるわい、オークションになれば天井知らずじゃ」


 シシシと悪そうな笑い方をする。中々したたかなじいさんだな。


「かねもちだな!なにたべようかな!」


 ペタ、金をもらうのは俺であってお前じゃないぞ。






 出発の準備はすぐに整った。俺の荷物はバックパックに詰まったままだ。ただ倉庫からナイフを一本もらった。借りるだけのつもりだったが、くれた。まあくれる物はもらっておこう。すぐ使えるように革のベルトで腰にぶら下げてある。


 それと、ちょっと暑いのは我慢してトレーニングウェアは上も着ておく。なんせ高性能の防具になってしまっている服だ。矢も通らないだろう。痛いけど。


 ペタはハイエナから没収した剣を持って行こうとしていたが、エジャに取り上げられてブーブー言っていた。まあそりゃ、あのサイズは無理だろう。邪魔なだけだ。


 そんなペタの装備は小さい弓矢に、これもまたハイエナの持っていたナイフと、後、俺がやった果物ナイフだ。なんだかんだ気に入っているらしくポーチに突っ込んでいた。そして服も俺のやったTシャツとハーフパンツだ。これも高性能防具なので子供でも安心だ。


 エジャは狩人らしい軽装に弓とナイフ、少し長めのナタを持っている。色々器用に出来そうで羨ましい。


 俺の服を貸してやろうかとも思ったが、俺の部屋から持ち出した物は、ちょっとこの星の常識を破壊してしまいそうなので出来るだけ拡散させない事にした。まあ本気で危ない時は出してやろうと思う。だが尻尾穴はもう開けさせない。


「ルートはどうする?」


 今は倉庫で作戦会議だ。俺がエジャに振ると、


「まずは、ハイエナ族と会ったという場所に向かう。そこから、森の外側に向けて捜索したいところだが、範囲が広いな」


「んじゃあ、ハイエナに会ったとこまではそのまま行って、そっからは俺の部屋に向かうのはどうだ?俺の部屋なら水も補給できるし、拠点にして少しずつ調べて行こう」


 テーブルの上を地図に見立てて、コップを並べながらこう提案するとエジャも納得したようだ。この方向で決定だ。


「やったー!フカフカのベッドだな!」


 ペタが無邪気に喜んでいる。うん、実は俺もシャワーとか普通に浴びたいから言った。川の水で体を拭いただけじゃちょっと気持ち悪い。エジャには黙っておくが。


 お、そうだ。ついでだから聞きたいことがあった。


「そういやペタ、お前なんで俺の部屋のとこまで1人で来てたんだ?」


 村が大変な時に、いくら狩人と認められているかは知らないが、子供が1人で結構な距離のある場所まで来ていた理由。これはずっと気になっていた。


「どろぼうがうろこをぬすんだのと、あつくなったのがおなじぐらいだったから、あつい方にいったんだ」


 ん?そうなの?エジャを見ると、


「確かに……鱗が盗まれた後、気温が上がりはじめたな……」


 今、気付いたみたいだ。でも関連があるのかは不明だな。


「ペタ、暑い方に行ったって事は、俺の部屋の周りの方がこの辺より暑いのか?」


「そうだぞ!ハルキのいえのまわりはすごくあつかったぞ!」


 それは気付かなかった。いや確かに部屋を出た瞬間は沖縄!と叫んでいた気がするが、今いるこの辺りは、夏。というぐらいだな。


「何か関係あるかもしれないな。ペタ、お前やるじゃないか」


「んふふふ。そうか?ペタめいたんていか?」あ、ウザくなった。


「じゃあ行こうか」「そうだな出発しよう」


 俺とエジャの心が通じ合った瞬間だった。





読んでくださってありがとうございます。


このお話はファンタジーっぽいSFです。

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