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異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
二章 守るためなら何をしてもいいのか?

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番外編・とある少女の物語6

「さっさとあの女とガキを追えっ!!」


「は、はい!」


「それは無理ですね」


「――グアッ!?」


 横を通り抜けようとした男を一撃で斬り捨て俺は通路を背に仮面の男に剣を突きつける。


「ほんとに邪魔だねぇ……」


「諦めたらどうですか?」


「……君こそ諦めたらどうだい? 私に勝てないことくらい分かるだろ?」


「……別に勝つ必要なんかないですよ」


「……ふふ、もしかしてさっきの女が本当に戻ってくるとでも思っているのかい? だとしたら君は相当頭が悪いみたいだねぇ。断言できる、あの女は絶対に帰ってこない。今頃あのガキのことも見捨てて逃げてるんじゃないかなぁ?」


 仮面の上からでも分かるほど愉悦に浸ったような神経を逆撫でする声で男は俺を煽る。


 勘違いも甚だしい。


「……別にルカさんが間に合うなんて思ってませんよ」


「……なんだい? 君は愛する女性を守るためなら命なんて、とか言っちゃうくそ寒いタイプの人間だったのかなぁ? 私ああいう人種凄い嫌いなんだよねぇ。ほんとに見てて虫酸がはしる」


 飄々とした様子を変えずに男は俺をバカにするようにそう言った。

 だが、足を一定のリズムでコツコツコツと踏み鳴らすその様子は声とは裏腹に男から確かな怒気と微かな殺気を感じさせる。


「……俺とルカさんはそんな良い関係じゃありませんよ。」


「……はあぁ? じゃあなんでこんな自殺紛いのことやってるのかなぁ? まさかと思うけど仲間の為に、とか気持ち悪いこと言わないよねぇ?」


 声に怒りが滲み出ている。


「生憎、俺はそんな高尚な物の為に命かけられるほどできた人間じゃありません」


「高尚? どこが? そんなのただの綺麗ごとだろ? 赤の他人の為に命を懸ける? なにそれ? ねぇ、なにそれ? そんなものに一体何の価値があるの? おかしいでしょ? おかしいよね? 他人なんて搾取するためだけの存在でしかないよね? なのにそれを仲間? 命を懸けてでも守る存在? ふざけるなよ……ふざけんなよ……あぁ、ムカつくなぁ……!!」


「――ッ!?」


 意味の分からない言葉の羅列と共に突然男の手からナイフが投擲される。

 そして、俺がとてもわけの分からない言葉を吐き捨て感情のままに投げつけた物とは思えないほど正確に急所に向かってくるそれを間一髪で躱し、ほんの一瞬男から目を離した隙にすでに男は俺の前に迫っていた。


「死ねよっ!!」


「――ッ! 誰が……!!」


 男の両手から振り下ろされるナイフを剣で軌道を逸らし大きく後ろに飛ぶことで何とか回避する。


「……俺は……」


「あ?」


「俺は別に仲間だからルカさんを逃がしたわけでもましてや想い人だから逃がしたわけでもない」


 この勘違い野郎にこれだけは言っておかなければならない。


「俺はただ、バカな親友の頼みを聞いてやってるだけだ」


 あいつに勝手に任された。

 自分がぶっ倒れて死にかけてるってのにあのバカは自分の事なんかそっちのけでルカさんの事を頼んできた。


 だらしないとこがあるから。

 勢いだけで無茶をすることがあるから。

 僕が死んだら悲しんでしまうかもしれないから。

 

 その時は支えになってあげて欲しいと。


 俺はあいつの頼みを断れなかった。

 死にかけてる親友の頼みを無下にできるほど俺は人間が出来ていなかった。


 だから俺は何が何でもあの人の事を守り切らないといけない。


 そうじゃないと俺はあいつに顔向けができない。


「親友……? なんだそれ? うざい。気持ち悪い。虫唾がはしる。雑魚共が群れて傷なめ合ってるだけだろうが……!! きもいんだよ……きもいきもいきもいっ!! だいたい――」


「うるせえ、黙れ」

 

「――ッ!?」


 こいつが何にそこまで興奮しているのかなんて知らない。

 もっと言えば興味もない。


 こいつが何をしようと俺がやるべきことはただ一つだから。

 

「ここから先は通行止めだ。先に進めるなんて思うなよ?」 


 この道を何としても守り抜く。

 

 ルカさんには指一本たりとも触れさせやしない。


★★★★★   


「急がないと……急がないと……」


 早く助けを呼ばないと……


「ちょ、待っ……て」


「え? あ、ごめん……」


「……ううん……わたしこそ……」


 女の子の制止の声で私は我に返った。

 急がなければいけない。

 でも、この子の安全も確保しなければいけない。


 どっちにしろギルドに向かうのが私が今できる最善の選択になるはず……!


「ちょっとごめんね!」


「へ? あ、わっ!?」


「早く行かないと……!!」


 私は女の子を背に背負いギルドへの道を再び走り始めた。


 サウロ君……どうか無事で居て……!!


★★★★★


「……はぁ……はぁ……」


「まだやるのかい? 一思いに楽にしてあげようとしてるのに」


「うるさいですね……まだまだ余裕ですけど?」


 息を荒げる俺に涼しい顔をして男は嘲笑う。


「へぇ? それじゃあ……行け『爆弾』」


「い、嫌だ! 死にたくない……!」


「――ッ! またあれかよ……!」


「あ、あぁ……ああぁあぁああぁっっ!!!!」


 男の仲間が泣きながら走り寄ってくる。

 すでにこれで四人目だ。


「死にたくない。死にたく……『バルカン』」


 男の詠唱により空間に一塊の物体が出現する。

 小さめの岩のようなその物体は空中から重力で地面に吸い寄せられる落ちていき……


「あ゛ぁああああっっ!!!!!」


 男がそれにタックルを決めると同時に爆発を起こした。


「――ッ! 何とか……くっそ……」


「グ、アァァアアッ!! い、あ!! いらぃぃ!? アガァ……ア……」


 何とか爆発からは逃れたけど……こいつほんとどうかしてる……


 転げまわり逃れようのない痛みから逃れようとする男。

 それが叶わないことは彼も知っているはず。


 でも、転がるのをやめることはできない。

 それが痛みから逃れたいという一心なのかそれともこの先に待っているものから逃れたいからなのかは俺には分からない。


 そうして数秒間転がった後、男は動かなくなった。

 男にとってはその数秒は永久にも等しいほどに長く感じただろう。

 男はようやく痛みから解放されたのだ。


 命の終わりによって。


 その顔は苦しみぬいた後がある……のかさえ判別できないほどに焼けただれてしまっている。

 体には服だった物の破片が痛々しく焼けただれた肉に張り付くように付着している。

 きっと想像できないほどの苦痛を味わっただろう。


 男は敵だ。

 仮面の男の手下だ。

 それが一人消えたことは本来俺にとっては生存の確率が上がったのだから喜ぶべきことなのだろう。


 けど、とても喜ぶ気分にはなれなかった。

 明らかに異常だ。

 死にたくないと言っている仲間に特攻を仕掛けさせるなんて……


「ふーむ、どうにも『爆弾』じゃ君を殺すのには時間がかかりそうだねぇ。初めの一発以外はうまく躱しているみたいだし……二、三個纏めて使えば殺れるだろうけど、私が巻き添えを喰うことになりかねないしなぁ」


「人の左腕持っていっておいて自分は仲間を使って高みの見物ですか? いい趣味してるよほんと」


 初見はあの攻撃を躱しきることができずに左腕をズタズタにされた。

 おかげで右腕一本で剣を振ることになってしまった。


「仲間? 私の手駒の間違いだろう? 私は『支配』のユニーク魔法を持って生まれたその瞬間から他者を支配する側の人間であることが決定づけられているのだから」


「……支配、ね」


 まぁ予想はついていた。

 嫌がる人間に何かを強制させるなんてことができるのは『呪い』か『ユニーク魔法』くらいのもの。


 それに加え呪いでは確実に死に直結するような命令はできない。

 もし、これが爆弾が爆発するまでに全力で離れようとする、なんて命令なら話は変わってくるが、少なくとも今のような命令は呪いでは出せないはずなのだ。


 そうなると可能性としてあり得るのはユニーク魔法だけだ。


「もし君が私の手駒になると言うのなら生かしておいてあげてもいいんだけど?」


「ありえませんね」


 完全になめられてるな。


「そうかい? じゃあ残念だけど死んでもらうことにするよ。『二人とも死ぬ気で殺しに行け』」


「「――ッ! あ、あぁぁぁあああああっっ!!!!」」


 男がそう口にした途端残っていた二人の男が雄たけびをあげ全力で襲い掛かってくる。

 その目には生きたいという感情がありありと見て取れた。

 俺を殺して助かりたいという感情が。


「なめるなっ!!」


 俺はそれを一刀のもとに斬り捨てた。

 

「まぁ、こいつ等如きが君に敵うわけがないよね」

 

「――ッ!? ガッ!!」


 襲い掛かってくる男に気をとられほんの一瞬仮面の男から視線を外した次の瞬間、すでに男は目の前に居て、反射的に後方に飛んだものの投擲されたナイフをもろに受けてしまった。


「くそ……ま……だ……」


 そして、着地して攻撃に転じようとした途端、俺の体は俺の意思とは無関係に地面に崩れ落ちた。


「ど、く……か……」


「当然。まぁ致死性はないものを使ったから安心していいよー」


 自分の体の不調の原因を呟いた俺に男は優越感に浸ったようにそう返した。


「どうする? 私の手駒になるなら今からでも助けてやらんでもないけど?」


「……っ」


 ……もう体はろくに動かない。

 そのうえ相手は格上でピンピンしてる。


 勝ち目なんてものはどこにもない。


 そんなの分かってただろ?


 なら……俺は……


「どう、す……れば……?」


「おやぁ? なんだいなんだい? 私の手駒になる決心がついたかい? 最初に言った時に意地を張らずにそうしておけばこんなことにならずに済んだのにねぇ!」


 男はこれ以上ないほどの愉悦を含んだ声で俺を見下ろしながらそう言う。


「親友だのなんだのとくだらないことを言っていた奴を支配するのは本当に気持ちがいいねぇ……!! 気持ちはすでに私に屈してるわけだからあとは私の手の甲に忠誠のキスをしてもらうだけだね。さぁ早く! 早く私の物になれッ! 絶対お前を使ってあの女を殺してやるからさッ!!」


 仮面の上からでも分かるほどの歓喜に男は打ち震えている。

 差し出された手も同様に小刻みに震えている。


「では……」


 男の手に両手で軽く触れ唇を近づける。  

 

 全くもっていい趣味してるよこいつは……

 俺を使ってルカさんを殺そうなんて。


 まぁ、何があってもそんなことは絶対起こらないけど。

 だって俺は……


「『カース』!!!!」


 ここで死ぬんだから。


《カース》

発動条件:術者の死亡

命令内容:ルカ、およびその関係者の保護

解呪条件:帝国の皇帝殺害


「――ッ!? てめえ何をっ!!」


「これで終わりだ……」


 俺は力を振り絞り右手に握った剣を自らの心臓に突き立てる。

 それに対して理解できないといった顔で俺を見る仮面の男。

 

 理解なんてしなくていい。

 お前はもうルカさんに手出しはできない。


 条件が釣り合って良かった。


 これで俺はこいつを使ってルカさんを守り続けることができる。

  

「約束は守ったぞ……」


 だから……そっち行っても怒んなよ?


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