番外編・とある少女の物語4
「レクト見て! 私もレクトと同じBランクまで上がったよ!!」
ギルドカードを前に突き出し私はレクトにそう伝える。
あれから二年が経ちようやく私はレクトと同じランクにまで上がることができた。
本当に長かった。
何度も心が折れそうになった。
でも……レクトの事を考えたら冒険者をやめるって選択肢はなかった。
私は知りたい。
私は知らなければいけない。
そのためにはSランク冒険者にならなければいけない。
この二年で少しは冒険者が分かったと思う。
楽しい。
自分の知らなかったことを知ることができた。
自分が目を背けて来たものを見ることになった。
自分の命が何によって形作られているのかを理解することができた。
自然がこんなにも美しいのだと知ることができた。
生命がこんなにも美しく儚いものだと知ることができた。
レクトが感じて知ったであろうことを同じように感じて知ることができたのがこれ以上ないほどに嬉しい。
「次来るときにはきっとAランクになってるから楽しみにしててね」
私はレクトにそう告げ、お墓を後にした。
★★★★★
「おっ! ルカちゃんパーティ組まない?」
「いやいや、来るなら俺達のパーティだろ?」
「はぁ!? バカかお前ら! ルカちゃんは俺達と一緒に依頼こなすんだよ!」
ギルドに到着した途端こんな感じで勧誘を受けた。
「えっとぉ……」
「今日こそは俺とパーティ組もうよルカちゃん!」
「だから、俺達の所にルカちゃんは来るんだよ!」
「何言ってんだ! 俺達の所だろうが!」
「アハハ……困ったな……」
どこか一つを選んでしまうと後々揉めることになりそう。
でも、このままでもそれはそれで揉めそう。
どうしようかな……
「あ、ルカさん。今日も来てたんですか?」
「サウロ君!」
かけられた声に振り向くとそこには今来たばかりといった様子のサウロ君がいた。
「おいサウロ! てめえ今は俺がルカちゃんと話してんだろうが!!」
「俺が悪いんですか!?」
「ルカちゃんと話してんのは俺だ! 寝言ほざいてんじゃねぇぞ髭!」
「誰が髭だこの野郎! てめえのパーティより俺達のパーティに入った方がルカちゃんにとって良いに決まってんだろ! この雑魚が!」
「待て待て! お前らのパーティなんかより俺個人と組んだ方が良いに決まってんだろ!? バカ共は黙っとけ!」
「「あ゛ぁ!? パーティすら組めてない奴は黙ってろ!!」」
「はぁ!? 群れねえと依頼の一つもこなせねえくせに何言ってんだ!!」
「何だとてめえっ!! やんのかコラッ!!」
「ちょっ、いい大人が何やってんですか!」
「そ、そうだよ! やめてよ!」
「ダメだ! 男には絶対に退いたらダメな時があんだよ!!」
「それ絶対今じゃないんで安心して退いてください!!」
半分やけになったように叫ぶサウロ君。
……いつもの事だけど巻き込んでしまった……
「じゃあルカちゃん決めてくれ!! 誰のパーティーに入りたい!?」
「えっと……その……じゃあ、今日はサウロ君と一緒に依頼こなしてくるね……」
「ぬおぉぉぉ!!! また、サウロか!! なんだよ! できてんのかよ!! 俺の何がダメなんだよ!」
「サウロなんかの何がいいんだよ! 俺の方が絶対いいぞ!」
「女心とかそいつ絶対分からないって! 俺にしときなよ!!」
「いや先輩方、鏡見てきてください。そんな鬼気迫る勢いで来られたら誰だって手近な人間に逃げますって。というかどさくさに紛れてなんで俺ディスられてるんですか……」
「ほら行こっサウロ君!」
「あ、ちょっ、ルカさん!」
なぜか話の矛先がサウロ君に向かいそうだったので手に持った依頼書に印鑑を押してもらいサウロ君を引っ張ってその場を離れる。
我ながらファインプレー!
「あぁ……絶対明日また弁解することになる……」
「ん? どうかしたのサウロ君?」
「…………いや、もういいです」
「……? なら別にいいんだけど……」
どうかしたのだろうか?
何か悩みがあるのなら私に相談してくれてもいいのに……
「それより良かったんですか? 上を目指すのならあの人たちのパーティに入るのはかなりいい判断だと思いますけど。Bランクの依頼となると一人で達成するのが難しい物も増えてきますし」
「でも、私がどこか一つ決めると揉めそうじゃないかな?」
「……まぁそれは……」
渋い顔をしてサウロ君が言いよどむ。
もちろん私だってそのことを考えなかった訳じゃない。
でも、誘ってくれているのを断ってパーティ同士の仲が悪くなってしまうのは嫌だよね。
「でもなんで私なんかあんなに熱心に誘ってくれるんだろうね? 今はBランクになったからまだ分かるけど冒険者になった時からずっと声掛けてくれてるし……」
「……外見って大事だよねって話です」
「……? どういうこと?」
「どうせ分かってもらえないと思ってたので別にいいです」
「む、なんかバカにされてるような……」
「いえいえ、俺はそういうとこもルカさんの良いところだと思ってますよ」
「そう? まぁそれなら別にいいんだけどさ!」
サウロ君は褒め上手だね!
「それで今回は何の依頼受けたんですか?」
そういえば何も見ずにとっちゃったけど何の依頼だろ?
「えっとねぇ……おっとと!」
「――ッ!」
視線を依頼書に下げたその瞬間隣にある細道から一人の女の子が勢いよく飛び出し私と衝突した。
そして女の子は一瞬迷ったような様子を見せながらもそのまま前を向くと勢いよく走り出す。
「待ちやがれ!!」
よく分からない事態に呆気にとられる私をよそに少女の出てきた細道から二人組の男が叫びながら飛び出してくる。
そして、そのまま二人組は私達に一切気を配ることなく女の子が駆けていった道をたどっていく。
「……なんですかね? 今の……」
「さぁ……? でも……さっきの子大丈夫かな?」
「……状況が分からないので何とも言えませんけど……正直俺にはあの二人がまともな理由であの子を追いかけてるようには見えませんでした」
「……うん、私も。あの子なんだか怯えてるようにも見えたし……」
「……追いかけてみますか?」
「うん! 行こう!」
私とサウロ君は女の子と二人組の通った道を駆けだした。
★★★★★
「うーん……見つからないねえ……」
「……そうですね。こんなことならあの時引き留めておけば良かったです」
「こっちであってるはずなんだけど……」
女の子どころかあの二人組さえも見つからない。
もっと早くに追いかければよかった……
「…………ん?」
「どうかした?」
突如サウロ君が歩を止める。
「……いや、今なんか聞こえませんでした?」
「……へ? 私は何も……」
「気のせい……かな?」
「……どこから聞こえたの? もしかしたらあの子かも」
首を傾げそう言ったサウロ君に私はそう返す。
もしかしたらあの子に何かあったのかもしれない。
そうでなくても何か手掛かりになるかもしれない。
「えっと……たぶんこっちです……」
迷うようにサウロ君が指を指した先の道は更に細く暗くなっている。
「……なんか不気味だね……」
「……どうします? 気のせいかもしれないですし引き返しますか?」
「……ううん、行こう。もしこの先であの子が何か酷い目に合ってるのだとしたら私は私が許せないよ……」
「……そうですか、分かりました。じゃあ行きましょう」
私の言葉になぜかサウロ君はほんの少し微笑むと私の先を歩きだした。
「私何か変なこと言った?」
「いえ、ただ……やっぱり姉弟なんだなって」
「……それってどういう――」
「――ッ! ルカさん……!」
曲がり角に差し掛かりサウロ君が急に足を止める。
道は少し広く、しかし先ほどよりも薄暗くなっている。
「……どうかした?」
「聞こえました?」
「……全然」
「……間違いなく奥に誰かいます。……それもこれは二、三人ってレベルじゃないですね……」
「……行こう」
私に目で尋ねるサウロ君に私はそう返す。
サウロ君の言いたいことは分かる。
この先に待っているのがもしあの子を追いかけていた二人とその仲間だとしたら私達は危険な状況に飛び込むことになるかもしれないということになる。
立地条件からして隠れる場余がない以上、ここが回れ右して何もなかったことにして帰る最後のチャンスなのだろう。
けどそれでも……
もしあの子が危険な目に合ってるのだとしたら私はそれを見捨てるなんてことできない……!!
「……俺が三つ数えるのでそのタイミングでとびだしましょう」
「うん」
「それじゃあ行きますよ……3……2……1……!!」
私とサウロ君は地面を蹴って飛び出した。
次回の更新は二日後とさせて頂きます。




