神隠し編・結局誰が悪いのか
「何が……」
俺は回らない頭を必死に回して考える。
何が国王にこんなどう考えてもおかしい決断を下させた?
いや……違うな。
この決断だけじゃない。
そもそもがおかしいことだらけだ。
なんで国王は俺にこんな無茶な依頼を受けさせた?
なんでロノフはろくに調べもせずに現場を片付けるなんてことをした?
正直、俺に関わりがないのなら勝手にやってくれという感じだけどそのせいで死刑になるのは勘弁してほしい。
「聞いたか!? 陛下も貴様のような賊は死ぬべきだとおっしゃっておられる!」
「いや、そこまでは言ってなかったと思いますけど……」
騒ぐロノフが心底鬱陶しく感じる。
そもそもこの人がきちんと調べていればザンク殺しの犯人が神隠しなんて間違いはなかったわけだしもっと言えばグレンの事だってこの人がもっときちんと調べれば真犯人が見つかったかもしれないのだ。
「おい! 何をぼさっとしている! 早くこの逆賊を牢屋にぶち込みに行けっ!!」
「は、はい!」
事態に思考が追い付いていないといった様子の兵士がロノフに一喝され、俺を左右に挟み込む。
まいったな……
色々わけが分からなさ過ぎてどうするのが正解なのか全く分からない。
少なくともここで大人しく捕まるのは間違いなく悪手だ。
俺はまだ死ぬ予定はない。
そうなると……
強行突破にはなるけどここに居る奴全員殴って逃げるか?
けど、そんなことしたら間違いなく指名手配されるよな……
んー、どうしたものか……
いっそのこと一旦捕まってルクアに弁明してもらうか?
また頼ることになってしまうのは申し訳ないけどルクアに説得してもらえば国王も考えを改めてくれるかもしれないし。
「言っておくが今回もこの間のようにルクア様に助けてもらえるなどと思うなよ? ルクア様は今頃あの生意気な護衛とフラッカのクロンツ殿の屋敷にお行きになられているからな。ルクア様が帰って来られる頃には貴様の処刑はとうに終わっているだろう」
俺の考えを読んだようにそう言い放つロノフ。
どんだけ俺は運悪いんだよ。
……いや、この状況からしてこの人が裏から手回ししたんだろうな。
そもそもなんで一国の姫がちょっと遠出してんだよ……
おかしいだろ。
誰か止めろよ。
どんだけ行動力に溢れてんだよ。
「いいんですか? いくらサクトがついてるっていっても何かあったら危ないんじゃ……?」
「そんなことは貴様ごときが気にすることではない。自分の命の心配でもしていろ……もっとも貴様に死以外の道などありはしないがな」
……まぁサクトがついてるんだから大概の事は大丈夫なんだろうけどさ……
俺の事なんかよりよっぽどそっちの方が重要度高いでしょうに……
そもそも国王は何で止めてないんだ?
一番最初に俺がここに来た時は結構溺愛してる印象だったんだけど……
「おい、もういい。さっさと連れていけ!」
国王にルクアを行かせてしまって良かったのか聞こうと俺が国王の方へ視線を向けたのとほぼ同じタイミングでロノフが俺の左右に居る兵士にそう命令する。
「――ッ!」
俺を捕らえようとする手から俺は反射的に後方に飛び距離を取る。
……逃げるしかない。
けど、それでいいのか?
他にもっといい手はないのか?
もし今この場で逃げることができたとしてもそれは国を敵に回すことになるんじゃないのか?
仮にルクアが何とかしてくれるとしても俺は逃げ切れるのか?
そもそもルクアならこの状況を何とかできるのか?
……けど……もう俺にはそれしか……!
「――たしかに……たしかに余はほんの少し前ロノフ、お前にアキを処すべきだと提案されそれに賛同した」
覚悟を決めて逃亡を図ろうとした俺の耳に聞き覚えのある声が届く。
本来ならもっと早くに聞いているはずだった男の声が。
「……余はそうするべきだと思っていた。そうすることが正しいことだと思っていた」
ポツリ、と国王が独り言のように語り出す。
「だが、それと同時に本当にそれでいいのかとも思っていた。間違いなく正しいはずなのにどうにも違和感があった」
「陛下、なにを――」
「だから余は考えていた」
怪訝な顔をして国王に話しかけようとするロノフだったが国王はそれを一切気に留めた様子なく呟き続ける。
「そして、アキが来る前にルクアに言われたことを思い出した」
微笑を浮かべ口を閉ざす国王。
「……余はこの国の王だ。余には決断する権利と責任がある」
「――ッ」
そして、口を閉ざす前と打って変わって威厳に満ちた声と表情に気圧されたようにロノフが一歩下がった。
「だからこそ、余はここで宣言する。……アキは……」
再び口を閉ざす国王。
「何一つ罪に問われるようなしていないと」
そして、確固たる意志の感じられる口調でそう言い切った。
「――ッ! 何を……何を仰っているのですか陛下!! その男はアストライアの名に泥を塗った逆賊です! これを罰しないなど――」
「これは余の決定だ。たとえお前でも異論は許さん。分かったな? ロノフ」
激しい勢いで反論しようとするロノフに対して国王は静かにされど反論を許さない強い言葉を返す。
それに対してロノフは心底驚いたように口をパクパクとしている。
そもそも一臣下がここまで王を差し置いて出しゃばってる時点で色々おかしいんだけどね。
「アキ」
「……何ですか?」
あまりに色んな事が起こって変わったせいで全く状況についていけず固まる俺に国王から声が掛けられる。
……やっぱりどう見ても顔色が悪いような気がする。
そのせいで色々おかしいのか?
いや、んな訳ないわな。
「一つ頼まれてくれないか?」
「……場合によりけりですね」
出来ることなら聞きたいところだけど……
今回みたいなのはもう二度とごめんだ。
「なに、そんな大したことではない」
「そういうこと言うと大概大したことあるようになるんですけどね」
そもそもこの人の大したことないは絶対俺とずれてると思う。
「レブルで個別に依頼を受けてもらえるようにしてもらいたいのだ」
「……? 何のために?」
訳の分からない頼みに思わず俺は首を傾げる。
「レブルの立場上頼みたいことがあっても命令になってしまうので直接頼むことができないのだ。しかし、そのたびにいちいちギルドを通すのは手間がかかる。それならいっそレブルは個人の依頼を受け付けているということにしてしまえばいいのではないかと思ってな」
「ふむ……まぁ別に問題はないですけど……面倒なことになりそうな依頼は受けないですよ?」
「あぁ、それでいい」
要は俺達の立場上、表向きはこの国に仕える立場になってるから王城まで呼び出して頼むなんてことをするとそれは他者から見れば命令と捉えられてしまう。
うちの団員に限ってそんなことはあり得ないと思うけど非難を買う可能性も一応ある。
けど、ギルドを通しての依頼ってことにするのは手続きやら何やらが国から個人への依頼では手間がかかるからレブルそのものが誰からでも依頼を受けるってことにしてそれに対しての依頼って名目で俺宛に依頼を出すってことだろ。
「了解です。じゃあレブルは民間から直に依頼を報酬は要相談で受けるってことでいいですか?」
「あぁ、頼む」
「それじゃあグレンとかにそのこと伝えとかないといけないので俺もう帰りますね」
「あぁ……情けないところを見せてしまいほんとにすまなかった」
「しっかり休んでくださいね? どう見ても顔色悪いし不健康そのものですよ」
そう言った俺に微笑を浮かべながら頷く国王を横目に俺は王城を後にした。
正直、何がどうなってこうなったのかいまいちよく分かっていない。
なんで俺にこんな無茶な依頼を出したのか。
なんでろくに調べもせずに犯人を神隠しだと決めつけたのか。
結局、誰がザンクを殺したのか。
なんでロノフは執拗に俺を殺そうとするのか。
……いや、まぁこれは単純に毛嫌いされてるだけかもしれない。
あの人からしてみれば俺はどこまで行っても犯罪者な訳だろうし。
まぁともかく今思うのは……
「なんか色々面倒なことになったな……」
これに限る。
いまいち締まらないですがひとまず二章おわりです。
やっと序章終わったみたいな気持ちですw
十話くらい番外編書いたあと数日開けてから三章はスタートさせて貰います。
次回更新は二日後とさせて頂きます。




