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異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
一章 手放せない日常
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色々あったけどまぁ悪い気はしないかな

今回、話のキリ的に少し短めかと思います。

次からの二話は視点が切り替わってかなり短めなのでできるだけ早くに仕上げて日曜までには載せたいと思います(無理かも)。



前回のあらすじ

首が飛びそう。


________________



「ちょっと待て!」


 後ろから声が掛けられる。


 どうにもまだ神は俺を見捨てていなかったらしい。

 誰か知らないけど早くこの状況を何とかしてくれ。

 

「あれどうしてくれるつもりだ!? このクソガキがッ!」


 溢れんばかりの感謝と期待を持って振り向いた俺を待っていたのは、顔を怒りで真っ赤に染めたおっさんだった。

 そして、そのおっさんの指さす先には半壊した酒場があった。


「俺の店をどうしてくれるんだ!? てめえが掴まろうが処刑されようがどうでもいいことだが、修繕費だけはよこしてから死にやがれ!!」


 どうにもおっさんはあの半壊した酒場の店主らしい。

 かなりご立腹だ。


「いや、あれは……俺が悪いな……」


 殴り飛ばされたデコが悪い。

 なんて言ってしまえばそれこそとんでもない畜生だ。

 少なくとも酒場がぶっ壊れた一番の原因は俺にある。

 間接的にはデコも悪いだろと思わないでもないが、それでも結局一番の原因は俺にあるのだ。

 だからここで知らんふりというわけにもいかない。


 デコの手持ちで何とかならないだろうか。

 なんなら臓器売りさばいてもいいよ。


「おい、どういうことだ? 貴様一体何をしたんだ?」


 グリザムが状況が把握できないといった風な様子でこちらを観察する。


「だから、人の話を聞けって言ってるだろ?」


 揃いも揃って話を聞かない奴が多すぎる。


「そもそもの始まりはだな……」


そうして起こったことのあらましを説明すると誤解も解け、牢屋&打ち首はなんとか回避された。

 いや、いつから打ち首まで確定してたの?


「ガハハッ! すまんな! てっきりルクア様に無礼を働いた下衆かと思ってしまったわ!」


 グリザムが背中をバンバンと叩きながら謝罪をしてくる。

 痛い、やめて。


 とはいえこれで完全に全部解決だな。

 ようやく先に進める。


「おい! 何を『全て終わった』みたいな顔してんだ!」


 と思ったら酒場の店主がご立腹だった。

 可愛らしく「ごめんなさい♪」とかやったら許してくれないかな?

 なんか怒り狂った店主に酒瓶で顔面殴打される幻が見えたからやめとこ。


「あー、ごめんなさい。……それでいくら必要なんだ?」


「それなんだがな……」


 なぜか浮かない顔になる店主。


「店自体は元々酔ったバカが壊すことも考えて大したつくりにしてねえから銀貨三枚もあれば修繕できるだろうと思うんだ」


 そこで一度口を閉ざしため息をつく店主。

 なんだ?


「…………だが、てめえが割ってくれた酒の中に『インペリアル』があってな……」


 店主がその言葉を発した途端周りが急にざわめきたち店主は肩を落とす。


 ……な、なに?なんかまたヤバいことに首突っ込んだ感じ?


「えっと……悪い……そのインペリアルってなんだ?」


 恐る恐る聞く俺に言葉を返したのは店主ではなくグリザムだった。


「あー、っとな。インペリアルってのはある一定の時期にだけできる最高の素材のその中でも最高の物を使った酒なんだがな……まぁこれが結構値段が張るんだよ……」


 嫌な予感しかしない…


「えっと……おいくらほどで?」


「……金貨百枚」


「…………え?」


 聞き間違いかなぁ?ありえない数字が聞こえたような気がするなぁ。


「いや、だからな……金貨百枚だ」


 流れる沈黙。

 誰も口を開かない。

 というか開けない。


 道行く者は同情の視線を向け

 グリザムは苦笑いをこぼし

 店主は世界の終わりのような表情を見せ


 俺はもはや現在の状況に頭が追い付かず

 優男に至っては……おい、こら。なんでお前笑いこらえてんだよ。


「……どうしよ……」


 思わず口をついて出た言葉。

 正直どうしようもない。


 俺の全財産は金貨十枚。

 百枚など到底及ぶものではない。


 というかなんでそんな高いものあんな汚ねえ酒場に置いてんだよ。

 いやまぁ、汚くなった原因の一部は俺にもあるんだけどさ。


 とりあえずさっきから笑いこらえてる優男をぶん殴ってやりたい。

 が、もうそれすらしんどい。

 なんでこうなるかなぁ……


「あ、あの!」


 そんなどうしようもない状況の中一人の少女が声をあげる。


「あの、もしお困りなんでしたら私が払いましょうか?」


 誰であろうルクア姫だ。

 ん?ていうか今なんて?

 払ってくれる?金貨百枚?


「女神様と呼ばせていただいていいですか?」


 気付けば彼女の前で膝を折り祈るようなポーズをとっていた。

 これはきっと彼女の高貴さがなせるものなのだろう。

 決して金に目がくらんだわけではない。違うったら違うのだ。


「へ? 女神? ……えっと、その、あの、ではお友達ということでどうでしょうか?」


 動揺しながらもそんなことを言いながら祈るように掲げられた俺の手に手を重ねるルクア姫。


 というか今更だけどすっごい恥ずかしいんですけど!?

 勢いに任せて俺何やってんの!?


 ほら!周りも何とも言えない表情で俺のこと見てるよ!


 店主とグリザムは呆れたような表情で。

 道行く人は憐れむような表情で。

 優男に至ってはゴミを見るような目だ。


「君にはプライドすらないのか! こんなか弱い少女に君が割った酒代を全て払わせようなんて一体どういう神経をしているんだ!」


 ひどい言われようである。


 まぁ確かにいくら王族で金があるとはいえ全部払ってもらうのはさすがに男としてだめだよな。

 いや、まぁ少しでも払ってもらってる時点でアウトな気もするが。


 とにかく!俺も男なのだということを優男に見せつけてやらねば!


「はぁ!? 全部払ってもらうなんて言ってないしぃ。俺も自分の手持ちでどうにかできる分は払うつもりですぅ」


 ……何とも気持ち悪い感じになってしまった。

 何やってんだ俺は。


 見ろよ。ルクア姫以外もれなく引いてんぞ。

 姫、器でかすぎんだろ。


 とまぁそんなこんなで結局俺が金貨十枚を渡して、手持ちがないルクア姫は後程金貨九十枚を渡すという内容のことを一筆したためていた。 

 男前すぎて惚れるわ。


 ともあれルクア姫のおかげで何とか、本当に何とか今度こそ無事に全て終わった。


 もっとも俺の財布事情は全く無事ではないが。

 やっぱり一枚くらい残しとくべきだったかな?


「おい!」


 みみっちいことを考えている俺に元凶となった男が話しかける。


「……なんだよ」


「今回は君に非がなかったのかもしれない」


「かも、じゃなくて完全に被害者だけどな」


「だが、次に君が何か犯した時、その時が君の最後だ」


「……あぁ……そう……」


 もうヤダ!この優男話聞かない!


「それじゃあ俺は用事があるんで行かせてもらいますね」


 これ以上ここにいてまた何かに巻き込まれたらたまったもんじゃない。


「あっ! 待ってください!」


 可憐な声がそそくさと離れていこうとする俺を呼び止める。

 にしてもこの期に及んで俺まだ何かやらかしたのか?


「えっと、色々と立て込んでて言い出すタイミングがなかったのですけど……助けてくれてありがとうございました」


「……っ」


 面食らったような俺の表情に首をかしげるルクア姫。


「……あ、いえ、俺もお金払ってもらっちゃいましたし。気にしないでください」


「『友達』なんだから当然ですよ」


 悪戯っぽい笑みを浮かべるルクア姫。


 というかあれ適当に言っただけじゃなかったのか。

 いや、まぁ適当に言っただけでも言質とれただけで一年は幸せに過ごせる自信あるけど。


「…………なら、俺のも友達として当然の事ってことでお願いします」


 俺の言葉を聞いてクスリと笑う姫。


 ……まさか、嘘だったのだろうか?

 もしそうだったら俺はもう二度と人と関われなくなるな。

 今日の夜はベッドの中で悔し泣き必須だ。

 なんだ日課じゃないか。


「次に会うときはもっと砕けた感じに話せるといいですね?」


「へ? あ、はい……」


 タメ口で話せってことだろうか?


 後ろでグリザムとか優男が凄い目で見てるのにそれは無理でしょー。

 一国の姫相手に俺みたいなやつが話していることもまず珍しいことだろうし。


 そもそも次に会う機会なんてたぶんない。


「私、人を見る目には自信があるんですよ。だからきっとまた会えます」


 ……まぁ、そうなればいいな。


「……それじゃあ行かせてもらいますね」


「はい。止めてしまってすみません」


「いえ、それでは……」


 ……なんというかあれだ。


 とりあえず、散々な目にあったな。

 絡まれるは、首が飛びかけるは、一文無しになるは、

 何とも悲惨だ。


 ……まぁでもあれだ。

 ありがとうって言葉は…………悪くなかったな。

 

 そんなくだらないことを思いながら俺はギルドへと向かった。


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