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異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
一章 手放せない日常

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クロノス編・義賊になりました

 いや、義賊でもダメだろ。

 ルクアの発言に心の中でツッコミを入れる。

 言い方変えただけでやってることそこまで変わらんよ?

 どっちも泥棒だからな?


「義賊も盗賊も同じです!」


 当然のごとくロノフからツッコミがとぶ。


「同じ?では盗賊は虐げられた民の為に心を痛め悪政を働く領主と闘おうなどと思いますか?虐げられ奴隷にまで身を落とした民を救いますか?本来それをすべき私達にすらできていないことを盗賊がなすことができるとあなたは考えているのですか?」


 だが、それに一切ひるむことなくルクアは訴えるようにそう続けた。


 というか俺そこまで深く考えて行動したわけじゃない……

 ただ、目の前で困ってる奴は助けるし、あいつにこれ以上俺の大事な人に触れないで欲しかったってだけの話なんだけど……


「話になりません!!その男はただ自分の私欲を満たす為だけに奴隷となった者を助けただけでそこに貴女の言ったような慈善の心など皆無です!」


 ……まぁ、否定はしない。

 実際、俺はただ自己満足と自分の偽善を満たしたいだけだったのかもしれないしな。

 自分でもなんで俺が今こんなことやってんのかいまいち分からない。

 あいつらがいるならそれでいいしその理由なんて深く考えなかったから。


「……では……そこにあなたが言うような慈善の心というものがあればアキはアストライアの名を汚すような存在ではないと言うことで良いのですね?」


 薄らと笑みを浮かべ何やら自信ありげにルクアはそう言ってのける。


「何をそんな……そんな見えないものをどうやって証明すると言うのですか!!」


 そんなルクアの様子に一瞬、動揺した様子を見せるロノフだったがすぐに語気を強めそう言い返した。


「では、逆に尋ねますがあなたは何をもってアキのやったことが自らの私欲を満たすためだけのものだと決めつけたのですか?」


 そんなロノフに対し、ルクアは静かに淡々とそう尋ねる。

 まるで誘導して獲物の逃げ道を塞ぐように。


「そ、れは……あの男は盗賊――」


「何度も言わせないで下さい。アキは義賊です。それにあなたのその言い方ではまるで身分だけで彼が私利私欲のためだけに行動する人間だと決めつけたように聞こえますが?」


「――ッ、決してそういうつもりでは……」


「ロノフ、あなたは先代の国王様の頃から私のお父様まで仕えてくれている優秀な臣下で、この国には欠かせない存在です。しかし、そんなあなたも先代の国王様にその才を見つけられるまでは平民だったと聞きます。そんなあなたがまさか身分だけで人を判断するのですか?」 


 言い淀むロノフに追い討ちをかけるようにルクアはそう問う。


「違う……私は……」


「あなたは優秀です。ですがこれ以上私の友人を愚弄し私に恥をかかせるつもりなら……お父様に頼んであなたの処遇を考えて頂く必要があるかもしれませんね?」


「――ッ!」


 何か言葉を返そうとして上手く言葉にならず何も言えないといった様子のロノフにルクアは少し声のトーンを低くしてそう言い放つ。


「……ですが……貴女がその男を擁護する理由も無いはずです……そうだ……仮に私が身分で判断したのだとしてもその男がこの国に仇なす存在ではないという証明にはならない!!一体貴女は何をもってその男がそうではないと言えるのですか!?」


「私はアキの本質を知っている。それ以外に何か必要ですか?」


「――ッ、……そう、ですか……」


 最後のあがきとばかりに捲し立てたロノフだったがルクアのたった二言のそれに押し黙りそれ以降口を開くことはなかった。

 もっとも俺を睨み付け拳を握りしめているところを見ると納得はしていないようだが。


 というか途中から完全に論点がすり替えられてたと思うんだけど気づかなかったのか?


「ロノフ、お前も疲れているのだろう。今日一日ゆっくり休め」


「……はい」


 それまで沈黙を守り何かを考え込むような態度をとっていた国王だったが口を開きロノフを労る言葉をかける。

 そして、ロノフはその言葉に短くそう返すと俯いたまま謁見の間をあとにした。


「ルクア……」


「なんでしょうか?お父様?」


 ロノフが謁見の間を出ていくのを見送り国王は次にルクアに声をかける。


「成長したのだな……余は嬉しさのあまり少し泣いてしまったぞ」


「ありがとうございます!」


 国王の側にいる兵が何やらいくつかのハンカチのような布が乗ったトレーを持って『え?少し?』とでも言いたそうな顔をしているがトラブルに巻き込まれたくないならツッコまないほうがいいだろう。


「……それに比べ余はダメだな。ロノフや兵達にアキを殺せと言われたとき自分の判断に自信が持てなかった」


「お疲れなのです。お父様も今日はお休みになられてはいかがですか?」


「そういうわけにもいかんよ。やることは山のようにある。余はこれでもこの国の王だからな」


 苦笑いを浮かべルクアにそう返す国王。

 言われてみればさっきは気づかなかったが目の下に隈が出来ているし、顔色も少し悪いように見える。

 王ってやっぱり大変なんだろな……

 いや、今はそれより……


「あの……もう帰ってもいいですか?」


 大丈夫だとは思うけどやっぱり本当に大丈夫なのか確認したい。


「あぁ、すまないな今日は。褒美をやるために来させたというのに……」


「いえ、お気になさらず。結果的に何もなかったのとそう変わりませんから。むしろ会いたい人に会えたので得した気分です」


「僕はお前とは会いたくなかったがな」


「俺にとってもお前と会ったことが今日一番の災難だよ」


「あ゛?」


「サクト、止めなさい」


 およそ国で働く人間とは思えないような態度をとるサクトをルクアが嗜める。

 そしてそれに言い返そうとするサクトだったが、ルクアに「約束破るの?」と言われ苦々しげにその整った顔を歪めると押し黙る。

 どんな約束したんだよ……


「アキ、帰る前に一つ提案があるのですがいいですか?」


「ん?すぐ終わる話なら」


「はい、提案というよりはほとんど決定事項に近いのですが……」


「ん?」


 どういうことだ?

 

「本日よりレブルには王国と手を組んでほしいのです」


 ……あぁ、そういうことか。

 まぁそうなるよな。


「……それって俺達を王国に取り込むことであの爺さんから守って俺達を戦力として活用するって考えであってるか?」


「はい、その考えで概ね間違いありません」


 やっぱりそうか。

 ロノフは頭に血が昇ってたのか論点をすり替えられてることに気づいていなかったみたいだけど冷静になればすぐに分かる。

 結局、盗賊だろうが義賊だろうが犯罪集団に変わりはない。

 そのことをロノフが思い出せばグレンのこともあるから十中八九ちょっかいを出してくるのが目に見えてる。

 ルクアの魔法を使って場所を探られたら逃げようがないしな。

 それに今のままではルクアが犯罪者を友人だとしてしまったことになる。

 それが家名に傷をつけ、ルクア本人にも厳しい目が向けられることになる要因をつくることくらいは想像がつく。

 

 だから、その両方を解決するためにレブルという組織そのものを王国に取り込んでしまうというわけだ。

 国が抱えてる戦力ともなればロノフも迂闊に手を出せないし、ルクアに迷惑がかかることもない。

 今の問題を解決する方法としてはかなり良い方法だと思う。

 国王が認めてくれたらの話だけど。


「俺はいいよ」


 けど、奴隷じゃなくなった以上レブルに残るやつはいなくなるかもしれないから実質国が俺を雇うってことになるかもな……

 そうなると寂しくなるな……

 仕方がないことだとは理解してるつもりだけど……


「それではお父様、そういうことでレブルを引き入れてはいただけないでしょうか?強さはサクトから逃げ仰せたことからも申し分ないかと」


 俺の返事を聞いたルクアは国王の方に向き直りそう言った。


「……本当に子供の成長というものは早いものだな。もちろん喜んでそうさせてもらおう」


 国王は堂々としたルクアの言葉を聞き笑みを浮かべるとそう返した。


「それじゃあ今度こそ帰らせてもらいますね。グレンの件、よろしくお願いします」


「あぁ、任せておけ。必ず真実を見つける」 


「また来て下さいね」


「今度来たら殺してやる」


「仲間殺しになりたいの?」


 国王の頼れる言葉、ルクアとサクトの正反対の言葉を背に俺は謁見の間を抜け王城をあとにした。


 そして、この日を境に盗賊団レブルは義賊団レブルと名を改めた。

 もっとも公にできるのは『レブル』という部分だけでそもそも俺にとっては正直どうでもいいことだ。


 そんなことよりも……


「……ヘレナさん……本気で俺の夜食抜きにする気かな……?」


 俺にはこっちのほうがよほど差し迫った問題だからな。


「ふぅ……」


 明日は平和でなんの心配もない一日でありますように……


 柄にもなく空にそんなことを祈りながら俺はアジトへの帰路を急いだ。

一先ずクロノス編はこれで終わりです。

次話で一章も終わりとなります。

読んでいただきありがとうございます。

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