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異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
一章 手放せない日常

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クロノス編・闘いは終わる

 ほんとに……たまには俺の命令も聞いてくれよな……


「大丈夫ですか!?頭がここまでやられるなんて……」


「……なんで戻ってきてんだよバカ……『リザレクション』」


 感覚すらあるのか分からなかった体が光に癒され再び体に痛みが戻る。


 全快とはほど遠いけど……闘えるくらいには回復したか……?

 まぁ、あいつが相手だと一撃くらって即死しない程度ってところだろうけど……

 ほんとなんで戻ってくるかな……


 涙を拭いごまかしつつグレンにジト目を向ける。


「帰れとは言われましたけど戻ってきたらダメとは言われてませんから」


「子供の言い訳か!」


 ほんとこのバカは……


「……とりあえずありがとな」


「……いえ、当然のことです」


 視線をそらしながら礼を言う俺に少し間をあけてそう答えるグレン。


 あぁ、ほんとに困る……

 ただでさえ死にたくなかったってのに……余計に死にたくなくなった。

 ……意地でも生きてやる……

 

「アハハッ……獲物が増えタァ……!」


「頭……あいつあんなんでしたっけ?」


「俺も良く分からんけど…たぶんあいつのユニーク魔法の影響……」


 狂戦士……だったか?

 それを使ってからあいつは言動がおかしい。

 控えめに言って関わりたくない人だ。


「ユニーク魔法を使うとあんな風になるのですか?」


「その言い方やめて。俺も一応使えるから」


 苦虫を噛み潰したような顔でそう呟くグレンに俺は脊髄反射の速度でそう答える。


 ユニーク魔法が全部あんなのばっかだと思われるのは心外だ。

 まぁ、あのユニーク魔法が『隠密』よりもよほど高性能な時点で十分心外なのだけど……


「なぁサクト、お前それ意識はあるの?」


 とりあえずは『狂戦士』の分析でもしてみるか。

 どのみちまともにやりあったら一分もかからずに皆殺しにされる。

 そして、逃げるのも『隠密』をあんな風に見破られた時点でまともな方法では不可能。


 だから、逃げるにしても倒すにしてもあいつの動きを止めなければならない。

 ……一応動きを止めるだけなら方法に心当たりがないわけじゃない。

 失敗したらそれで終わりなうえに下手すればその瞬間死ぬけど。


 だからこそ少しでも相手の情報を手に入れたい。

 失敗は許されないから。

 少しでも知らないことは減らさないと……


「意識ぃ?あるに決まってんだろォ?じゃなきゃてめえをぶっ殺せねえだろうが!!」


「ふむ……本人の意識自体はあるが精神に著しい問題ありってところか。……なぁ狂戦士ってどんなユニークなんだ?」


「あ゛ぁ?そんなもん教えるわけねぇだろぉが!」


「なんだ?あんなに一方的に俺のことをボコボコにしたのにビビってるのか?」


「んなわけねぇだろぉが!!ぶっ殺すぞ!?雑魚が!!」


「じゃあ言ってみろよ」


 こんな挑発に乗るくらいには知能が低下してるっぽいな……

 得られるメリットの分デメリットもでかいのか……


「狂戦士はぁ僕の身体能力を更に十倍引き上げるユニーク魔法だぁ!理解したかぁ雑魚が!?お前程度がなぁいくら頭を捻ったところで勝ち目なんてものは一切ありはしねぇんだよ!!」


 目を血走らせ口元を歪めながら愉悦に満ちたような声でサクトはペラペラと俺にユニーク魔法のことを話す。

 

 やっぱり知能は格段に下がってるな。

 別にサクトのことをそこまで知っているわけでもないが、少なくともあいつは油断して自分にとって不利なことをペラペラと喋るような奴ではないだろ。


 どちらにしろとんでもないユニーク魔法なことには変わりないが。

 ただでさえ十倍に上がっている身体能力を更に十倍引き上げるとか……

 そりゃ認識すらできずに殺されかけるわけだ。


 単純に計算して重ねがけで無理矢理上げた俺の身体能力は生きてた時の二十倍。

 あいつは百倍。

 差がでかすぎて泣けてくる。


「たしかに勝ち目がないなこれは」


 まぁ、それははじめから分かってたことだ。

 なんで勝てないのかを再確認しただけで。


 それでも生きることを諦める気は毛頭ない。

 ……むしろやっと少し光明が見えてきたところだ。

 サクトのユニークが『ただの身体強化』で本当に良かった。


 今までで得られた情報を整理すると……


「理解したか!?理解したならそろそろ時間だから死ね!!」


 まず、サクトの攻撃自体はたぶん見えなくても避けられる。

 

「伏せろ!!」


 隣にいるグレンの頭を押さえつけ自分自身も頭を屈める。

 その一瞬あと、自分達の頭の上で轟音が鳴ったと思えばサクトは目の前にいた。


「――ッ!?まぐれかぁ!?」


 サクトがそう言い終わらないうちに次はグレンを掴んで全力で横に飛ぶ。

 その直後、屋敷の床にサクトの剣が叩きつけられる。


「――ッ!?何がっ!?」


「転がれ!!」


 サクトの剣が地面に叩きつけられた次の瞬間に俺はグレンを押し飛ばしながら自分もその勢いに任せて地面を転がる。

 俺達のいた場所は抉られるように屋敷の床ごと削り取られた。


「――ッなんでだぁ!?なんで僕の攻撃が当たらない!?」


 サクトは全く苛立ちを隠そうともせず地面に這いつくばる俺を睨み付けながらそう叫ぶ。


 やっぱりバカだな。

 そのまま攻撃し続けたらいつかは当たるのに。


 とはいえ俺も疲れたしあんまり暴れられて作戦が台無しになったらもうどうしようもないからな。

 説明しつつ逃げる算段を整えるか。


「はじめに言っておくけど俺はお前の動きなんか全く見えてないぞ」


「見えてない!?そんなことがあるかっ!!」


 必要ならば一発は受けるつもりだけど死なないよな?


「それがあるんだよな……」


 俺はもう魔力はすっからかんで身体能力も重ねがけの副作用でいつもの三割程度に下がっている。


「嘘を吐くなっ!!」


 ……不安だ。


「じゃあ逆に聞くがお前は俺がお前の今の動きを目で追えると思うのか?」


 そもそも俺の作戦は運とグレンに頼るところが大きいからな……

 俺がやりたいことをすぐに理解してくれるといいんだけど……


「それは……だったらなんで避けられる!!答えろ!!殺すぞ!!」


「簡単な話だよ……」


 仮にグレンが理解してくれてもうまく逃げられるかは本当に運しだいだ。

 たぶん三分の二くらいの確率で死ぬ。

 

「さっきまでのサクトの攻撃だったら俺はかわせなかった」


「意味の分からないことを言うなっ!!さっきまでの僕より今の僕の方が強いに決まってるだろ!!」


「お前の攻撃は優秀すぎるんだよ」


 それでも俺にはこれしか思いつかなかった。


「どの攻撃も的確に致命傷になるような場所ばかりを狙ったもの。裏を返せば攻撃が読まれれやすいってことだ」


 だから俺はこれに全部かける。


「さっきまでのお前はそれを踏まえてフェイントなんかも交えながら攻めてきてたからうまくかわせなかった。けど、今のお前にそんなものはない。だからお前がどう攻めてくるのかは大体予想ができた。お前は初手は首を狙うことが多かったしな」


 ……俺がサクトの攻撃を躱せた理由の説明は終わった。

 きっと今のサクトなら――


「ご丁寧に言ってくれるじゃねぇかっ!!」


 逆上してまた性懲りもなく首めがけて剣を振るだろう。


 屋敷の壁に俺の首を取り損ねたサクトの剣が突き刺さる。

 いや、そのまま壁はサクトの剣を止めることはできず勢いよく破壊された。


 その破壊を皮切りにひびが壁全体へと広がっていく。

 そして、それはあっという間に屋敷全体を囲い込んでいき……


 屋敷は遂に崩壊した。


「――ッ!?何が!?」


「グレン!!」


 状況の変化についていけず動揺を見せるサクトをよそに俺はグレンに向かって叫ぶ。


 目を合わせることほんの数瞬。

 

「『フライ』!!!」


 グレンはハッとしたような表情をするとそう叫び魔法の効力で浮遊すると一気に速度を上げ俺を掴み崩れ行く屋敷を脱出しようと試みる。


「――ッ!させ――」


「『ライト』!!」


 俺達が逃げようとしているのを見て追いかけようとするサクトにすっからかんの魔力を無理やり絞り出して最後の『ライト』を発動する。


「『ダーク』!」


 そんな俺の渾身の『ライト』はサクトの『ダーク』に相殺され、勝ち誇った顔でこちらに手を伸ばすサクト。

 だが……

 

「上を見ろバカ」


 その頭上には元は天井だったとみられる巨大な瓦礫が迫っていた。

 振ってくる瓦礫をグレンが担ぎながら避けてくれる俺に対してサクトは何も気にせず俺達を捕まえようと歩を進めたのだ。

 そりゃそうもなる。


「――ッ!くっそがぁ!!!」


 悔し気に声を荒げるサクト。

 そして、その声を最後に無理やり魔法を使った代償なのか有無を言わさず俺の意識は闇の中へと沈んでいく。 


 それから次に俺が目を覚ましたのは丸一日が経ったころだった。

読んでいただきありがとうございます!

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