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異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
一章 手放せない日常

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クロノス編・八方塞がり

「さすがにこれはまずいな……」


 俺がレイの両親を物理的に説得するといったクズ丸出しの所業を行ってから今日で一週間が経った。


 正直不味い状況だ。


 レブルのメンバーが倍近く増えてしまったこと自体はまぁしょうがないと思う。

 それぞれできることをしてくれているし賑やかになったのは楽しいことだと思う。


 だが金が問題なのだ。

 このままじゃ普通にやりくりできなくなる。


 原因は主に二つだ。


 一つは単純に人が増えて出費が増えたこと。

 そしてもう一つは依頼がろくに受けられなくなったこと。


 一つ目はともかく二つ目はほんとにやばい。

 俺はマギ達に顔バレしてしまっているので迂闊に外を出歩けなくなってしまった。

 見つかれば絶対に面倒なことになるからな。


 そして、それは同時に収入源が絶たれるということで……


 この一週間は買い置きしておいた食材でなんとか乗りきったがそれも尽きた。

 お金はヘレナさんが貯めて置いてくれた分があるから当分はなんとかなるだろうけどそれでも限界ってもんがある。


 稼がないといけない。

 買い物をしに行かなければいけない。


 けど、それには見つかる危険性がある。

 俺が襲われるならともかく、つけられてアジトの場所がバレるようなことがあったら本当に面倒なことになる。


 ただでさえ森をクロノスの関係者と思われる奴がうろついているからいつかバレるんじゃないかと思っているのに。


 昨日、グレンが魔獣を討伐しに行っている時にも見かけたらしい。

 というかこの一週間で魔獣の皮もたまりすぎだ。


 今日は……出るしかなさそうだな。


 魔獣討伐の依頼報酬を極力短時間で受けとりそのあと更に短時間で怪しまれないように買い物を済ませる。


 難易度高いな。


「まぁ、やるしかないか……」


 そう、やるしかないのだ。

 それ以外に選択肢がないくらいには追い詰められた。


 状況を甘く見すぎていたかもしれない。

 はやく何とかしないとな。


「頭、もう食材が尽きてしまっているので――」


「うん、買ってきます」


 渡された買う物リストを手に取りそう答える。


「気を付けてくださいね」


「少なくともここがバレるようなへまはしないように気を付けます」


「いえ、それもですけど頭自身もです」


 少し眉をひそめヘレナさんはそう呟く。


「気づいたら頭は危険なことに首を突っ込んでいることがありますからね。だいたい――」


「……気をつけまーす」


「あ、私の話はまだ――」


 お説教が始まりそうだったので早急に買い物に行くことにした。


 さーて、忙しい忙しい。


_____________________


「これお願いします……!」


 王都に着いて俺が真っ先に向かったのはギルドだ。


 この一週間顔を出してなかったから心配されてるかもしれない。


 されてなかったら普通に泣くかもしれない。


 というかミナにキレられそう……


 とか思いながら行ったところ……


「アキさん!お久しぶりですね!なかなか来ないから何かあったのかと思いましたよ?最後に来た時も様子がおかしかったですし……」


「心配かけてすいません。色々と忙しくて……」


 心配してもらえた。


 普通に泣きそう。


「ちっ、戻ってきやがった!」


「あいつがいない間はエミリちゃんと話せる機会がいつもより多かったのに!」


「ちょっと期待されてるからって甘やかされやがって…そこ代われ!」


「掘ってやろうか」


 ……こいつらとは安全が確保され次第じっくり話し合いたいと思う。


「こちら報酬の金貨一枚と銀貨七枚になります。一週間でこれだけの魔獣を討伐したんですか?」


「……まぁそうですね」


 魔獣百七体。

 

 この一週間、皆で討伐した数だ。

 凄まじいな。

 これを持ってきた俺の腕の痺れも凄まじいな。


 というかこれだけ討伐しても絶滅しないどころか増えているように感じる辺りあいつらの生態が謎過ぎる。


「今日は依頼は?」


「いえ、もう帰るので大丈夫です」


 出来ることなら稼げるやつを受けたいけどそういうわけにもいかないからな。 


「そうですか……ではまたお待ちしてますね」


「はい、その時はまたお願いします」


 さて、次は買い物……


「ちょっとお兄ちゃん待ってくれる?」


「ちょっとお兄ちゃん忙しいから帰らせてくれる?」


「いや」


「えー……」


 ミナに捕まった。

 とはいえ当然連れていくわけにはいかない。


 本当は俺と知り合いだということも隠しておいて欲しいくらいだ。


「もうちょっとだけ我慢して!頼むこの通り!」


 自分で言うのもなんだけど子供相手に平謝りしてる俺って…


「むぅ、じゃあ明日?」


「……あと、一月くらい」


「絶対に嫌!」


 ですよねー。


「そこを何とか!」


 冒険者達の「何やってんだあいつ」って目が凄い痛い。


「んー、じゃあねぇ、一タルトで一週間待ってあげる」


「ぐぬっ…………分かった、それで手を打とう……」


 一体次に会うときには何タルトになっているのだろうか……


「よし、じゃあ今日までのでとりあえず一タルトだよね?」


「今日までのもカウントされるの!?」


明日から(・・・・)なんて私一言も言ってないよ?」


「怖っ!」


 一瞬、ミナの背後に黒い何かが見えた気がした。


 というか今はミナにタルト奢ってる余裕ないぞ……

 あ、そうだ。


「ミナ」


「なに?」


「あそこにちらちらこっちのこと見てる脳みそまで筋肉でできてそうなおっさんがいるだろ?」


「あの無駄にゴツい人?」


「おい!それは俺のことか!?」


「そうそう、あの無駄にゴツくてなんか臭い人」


「おいコラッ!アキ!」


「あの人がどうかしたの?何かうるさいんだけど」


「……なっ……ちょっ、嬢ちゃん……」


 ミナの言葉にドルガが悲壮感溢れる顔をした気がするけどたぶん気のせいだろう。


「今日はあの人にタルト奢って貰ってくれるか?」


「は?」


「え?嫌だよ!なんかついてそう!」


「――ゴパァッ!!」


 なんかドルガが血ヘド吐いて倒れたような気がするけどたぶん気のせいだろう。


「まぁそう言わず!見た目はあれだけどドルガは凄い良いやつなんだよ!俺以外にも仲の良い冒険者を作っといてもいいと思うよ?」


 まぁこれに関しては本気で思ってる。


 ギルドなんてミナみたいな子供が来る場所じゃないから余計なトラブルに巻き込まれる可能性がある。


 その時にドルガがミナを助けてくれるとありがたい。


 あとお金ないから今日のぶんのタルトは奢っといて欲しい。


「うーん、お兄ちゃんみたいな感じなんだね」


「よし、それに関してはじっくり……話してる暇は無いからまた今度な」


「……うん、残念だけど今日はあのおじさんにタルト食べさせてもらうね」


「おう!そうしろ!」


「おいコラ何を勝手に……」


「じゃあ頼んだぞドルガ!」


「おい待てアキ!」


 ドルガの叫び声を背に俺はギルドをあとにした。


______________________


「頼まれてたのはこれで全部だな」


 すべての項目にチェックの入った買い物リストを見て俺は呟く。

 これだけあればたぶん今の人数でも二週間は持つだろう。


 腕もげそう。


 というか最速で買い物済ませたは良いけどこれ逆に目立つだろ。


「次に買い物に来る時はそういうことも――ッ!」


 一瞬、ほんの一瞬だが体中を舐め回すような不快な視線を感じた。


「……どこだ?……見られてる……よな?」


 辺りを見渡すが分からない。

 というか人がこんだけいると誰が見てても分からんよな。


 もしかしたら俺に想いを寄せてる子の熱烈なアピールかもしれない。


 だとしてもあんな舐め回すような視線は勘弁だが。


「さすがに気配を隠さず視線を向けたら勘づくくらいはできるか…」


 唐突に一人の男がそんなことを言いながら俺に近づいてきた。


 いや、状況から考えてまず間違いなく……


「さっき気持ち悪い視線浴びせたのはお前か?気分が悪くなったから慰謝料よこせ」


「えー……そこは『お前は誰だ!?』とか言うところだろ……」


「知るか、とりあえず金貨十枚よこせ。話はそれからだ」


「なんなのお前!?何で俺カツアゲされそうになってんの!?状況分かってる!?」


「状況って……お前あれだろ?クロノスから俺の事探して跡をつけるようにとか依頼受けた冒険者だろ?お前らのせいで生活が大変なんだぞ!」


 考えるまでもない。


 この状況で俺の事をつける奴なんて他にはいないだろう。


「だとしたら何で俺が姿を現したと思う?」


「は?俺の口止めでもしに来たんだろ?相手してやるからついて来いよ。ここは人が多すぎるだろ」


 アジトまでつけて来られなかったのは運が良かったな。

 どのみちそこら中全力で走り回ってからアジトに戻る予定だったからほとんど誰もついてこれないとは思うが。


「口止め?バカかお前?」


 ……ん?なんだ?違うのか?


「もし、お前を殺すならそれこそお前がのんきに見られてるのにも気づかず買い物してたときにでも殺せば良かっただろ?」


「――ッ!……お前……どっから見てた?」


 俺はこいつを侮っていたかもしれない。

 見られていたのか?

 だとしたらいつから見られてた?


「あの、女の子……随分仲が良さそうだったじゃないか」 


 ――ッ最悪だ!


「おっと、あの子の命が大事なら動くなよ?」


 男が何やら右腕に刻まれたタトゥーのようなものを見せながらそう言う。


「これは俺の魔力に反応して向こうにいる仲間に合図を送るものでな。要するに俺が魔力を込めるか俺が死んだ時点で俺の仲間に合図が送られるわけだ……」


 そう言って男は一度口を閉ざしもう一度口を開くとこう言った。


「子供を殺せって合図がな」


 ……やられた。

 完全に後手に回った…


「……それで?そんなふざけたことをする理由は?大人しく殺されろとでも言うつもりか?」


 落ち着け……

 とにかく今はこの状況をどうやって打破するかだ。


 たぶん今頃ミナはいつもの喫茶店にいるはず。

 全力でとばせばそう時間はかからない。


 かからないけど…

 ……それでも間に合うか怪しい。


「いや、取り引きだよ取り引き」


「……取り引き?」


「あぁ、取り引きだ」


 男は一度息を吸うような動作をしたあと再び口を開いた。


「お前が匿っている奴隷を全部よこせ」

読んでくださっている皆様!ありがとうございます!

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