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異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
一章 手放せない日常

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なんとも気が行き届きすぎの異世界サポート

「おーい。信道明輝君、聞いてるかい?」


 あぁ、俺あのまま死んだんだなぁとか考えてたら目の前の女に再度声を掛けられた。

 名前はエール。俺のこれからを導く天使だそうだ。


 なぜ信じたか。


 死んだ自覚があって、体からオーラ出しながら頭の上に輪っか浮かせてる少女が自分のこと天使だって言ってるんだから信じるしかない。


「あー、えっと……俺を地獄に落とすって話だったか。靴舐めたら減刑だっけ?」


「それやったらほんとに地獄に落とすからね?」


 さらさらの白銀色のショートヘアに少しうるんだ青い瞳、どこかミステリアスな雰囲気を纏った文句のつけようのない美少女。

 そんな美少女が張り付けたような笑みを浮かべながら背後にどす黒い穴を開けている。


 なんか穴の中から「オマエモコッチニコイ」とか聞こえるんだけどお友達?

 しゃれこうべのフレンズとか斬新だね!ちなみに俺は「しゃれこうべに近づいてはいけない病」だから絶対に近づかないでね!


「……悪い。天使様の話はきちんと聞くべきだったな」


「そうだよ! 僕は天使なんだよ! 君たち人間よりよっぽど優れてるんだよ!」


 俺がしゃれこうべに怖れ慄きながら謝罪の言葉を口にするとエールは「分かればいいんだよ」とでも言いたげに胸を張り、こくりこくりと二度頷いてそう言った。


 審査員が居たら十人中十人が十点満点つけるレベルに可愛い。

 ちなみに胸の発達具合も可愛い。


「……なんか今、失礼なこと考えた?」


「……それでさっきはなんて言ったんだっけ?」


 エールがジト目を向けてきているような気がするが気にしてはいけない。

 ことと次第によっては俺もあのどす黒い穴の中で「オマエモコッチニコイ」って言うためだけの人員になりかねない。


「……まぁいいや。それでえっと、さっき言ってたこと……あぁ、君に異世界に行ってもらうって話かな?」


「……異世界?」


 ……異世界ってあの異世界か?

 ゲームとかであるような剣とか魔法の世界?


「うん」


「俺が?」


「そう! 君にはこれから異世界で新しい人生を過ごしてもらうんだよ。ワクワクするかい? 生活になじめるか不安かい? 大丈夫! この僕、上級天使エールが完璧なガイドで――」


「いや、行きたくない」


「……へ?」


 なんか行く感じになってるけど普通に嫌だ。

 というか無理だ。


 俺は自慢じゃないがそれなりに本を読む。

 家に帰りたくないけど金がないから一時期は一日中図書館に入り浸ることもあった。

 まぁ、一時期からはぱたりと行かなくなったのだけど。


 とまぁ、そんなこともあって俺は人よりよっぽど本を読む機会には恵まれていた。

 だから、俺は結構なレパートリーの本を読んだことがある。

 その中には異世界に召喚された主人公がチート魔法やらスキルやらを使って最終的には英雄だったり国王になるような小説もあった。


 だから正直憧れるよ異世界。

 けど、少し考えてみてほしい。


 ああいう小説の主人公は大概がイケメン、そうでなくても気さくだったり性格が良い奴ばっかりだ。もし俺みたいな人相の悪い奴が行ったらどうなるだろうか?


 犯罪者と勘違いされて殺されるのがオチだ。

 少なくとも姫を助け出して仲良くなんて展開はあり得ない。

 姫を救い出したら誘拐犯と間違えられるとかならありそうだけど。


 ま、要するに俺の人生は生きてる時からこの人相の悪さのせいでハードモードだったんだ。

 それは異世界に行ってもきっと変わらない。考えうるわりとましな展開ですら牢獄で投獄されてる奴と仲良くしてるくらいしか思いつかない。


 そんなところに行きたいと思うか?答えは否だ。何が楽しくて異世界まで行って牢屋で過ごさないといけないんだ。


「行かないなんてダメだって! 今なら洗剤もおまけでついてくるから!」


「新聞の勧誘か」


「とにかく! ダメなんだよ! 君みたいに運命と違った死に方をしてしまった人にはそれぞれに適した異世界で第二の人生を歩んでもらう必要があるんだ!」


「……運命?」


 両肩を掴んで揺さぶりながら説得を試みるエールの言葉に引っ掛かりを覚え首を傾げる。

 するとそれにつられるように真正面のエールもキョトンとした顔をして俺と同様に首を傾げた。


 何この可愛い生き物。

 天使かよ。

 

 あ、天使だったわ。


「……あれ? 言ってなかったかな? 君、本来ならあと80年は生きてるはずだったんだよ?」


「…………は?」


 なんてバカなことに思考を割く俺を置き去りにエールは人差し指をピンと立ててさらりととんでもないことを言ってくれる。


 それ言い忘れたら絶対だめな奴じゃない?

 それがほんとならオリンピックあと20回くらい見れたじゃん。

 いや、夏季と冬季があるからそう考えるともっと多い……?


「君は今日、通り魔に出会う前に小さな迷子の女の子に出会ったよね?」


 くだらないことを考えていると突拍子もなくエールにそんなことを言われた。

 なのでとりあえず記憶をさかのぼってみる。


 ……そういえば会った。

 通り魔のインパクトが強すぎて忘れていたが確かに下校途中にそんな子供と出会った。

 なんか目があって放っておくわけにもいかなくなったから交番まで届けておいたんだけどそれがどうかしたのか?


「その女の子、本来の運命の通りだったら通り魔に刺されて死んでたんだよ」


「……え?」


「けど、偶然にも出会うはずのなかった(・・・・・・・・・・)君と出会い交番に送り届けられることで彼女は死の運命から逃れることができたわけ」


「……ん」


「……けどね、死の運命なんてものは人間の行動一つで消えるほど簡単なものじゃないんだよ」


「……?」


「起こるはずだった死は巡り一人の不幸な少女の身に降りかかるはずだった」


「……まさか」


 嫌な予感、というよりはもはや確信に近い何かが分かった。


「……なのに君はその少女に降りかかるはずだったはずの死の運命すらはねのけてその挙句……死んでしまったという訳さ」


「………人助けなんてろくなもんじゃないな」


 助けてるつもりが他の誰かを殺しかけてるんだから笑えもしない。


「……別に君が悪い訳じゃないさ」


 落ち込む俺を慰めるように手をとるエール。


「……はぁ。まぁ起こったことはもう仕方ないか」


 俺の勝手で無関係の人が死んでないのは不幸中の幸いだ。

 それに関しては本当に良かった。

 なら、あとはこれからのことだ。


「……それで? 異世界に行く以外に何か別の選択肢はないの?」


「うーん、そうだねぇ。あとは魂ごと消滅してこれから先の未来と永遠にさよならするくらいかな……」


「血も涙もない」


 キャラメイクうまくいかなかったキャラ削除する感覚で消滅させないでほしい。

 というかどんだけ転生させたいのさ。

 もはやそれ二択の意味なしてないよね?


「納得いかないかもしれないけど、異世界での第二の人生なんてものが追加されたのは今の全能神様になってからなんだよ」


 感慨深そうに一つ頷くエール。


「それまでは『神々が作成した運命に抗うなどなんと罪深き人間だ!』って問答無用で消滅させられてたからね」


「まじか……」


 それが本当なら俺はもう少しで消されるところだったわけか。

 それの方がどう考えても罪深いだろ。


「……消えるよりはましか? ……行くしか、ないか……」


「まさかこんな嫌々行かれるとは……さすがの僕も予想外だよ……」


 そう言われてもこっちは先行き不安でしょうがないんだから仕方ない。

 心なしかお腹痛いような気がしてきた気がするから延期になったりしないかな。中止でもいいよ。


「……まぁ、向こうで役にたつものとか持っていってもらうから気を取り直してよ」


 そう言ってエールが前に手をかざすと空間に穴が開きそこから何やら色々な物が出てきた。

 今度はしゃれこうべは出てこなかった。

 ノーモアしゃれこうべ。


「……餞別って奴?」


「まぁそういうことになるね」


「なんか気が利いてるんだな」


「今の全能神様がそういう方なんだよ」


 よくわからんけどその全能神とやらには感謝だな。

 話す機会があったらそもそも異世界に行きたいかどうかのアンケートをすることも提案しておこう。


「さて、それじゃあ君には五つ僕から餞別の品を贈らせてもらうよ」


「……多いな」


 こういうのって強い武器一つとかそんな感じじゃないのか?


「まず、一つ目はこの黒ローブ」


 そう言ってエールが見せたのは一着の黒ローブ。

 素材は……何だろうか?

 いや、そもそも俺がそういう服の素材とかにあまり詳しい訳ではないのが原因かもしれないが何を素材に作られているのか全く見当がつかない。


 絹のようなしなやかさがあるようにも見えるけれど、肌触りのよい綿のような印象も受ける。

 それでいてどこか羽毛のような暖かそうな印象をも受ける。


 一体このローブ何で出来ているのだろうか。

 とにかく吸い込まれるような黒が幻想的で綺麗だということは分かるのだけど。


「これは一見ただのローブだけど『隠密』の魔法が付与されているから隠れたいときはこのローブに魔力を通すといいよ」


 素材が何なのかを考えている俺に向かってエールの口から聞き捨てならない言葉が飛び出す。


「やっぱりあるのな魔法……」


 というかここまでよく分からん素材が使われてるローブが『ただのローブ』扱いなんだな……

 俺が知らないだけで割とよく知られた素材でできてるのか?


「その代わり地球と比べると科学はあまり発達していないけどね」


 ふむ、まぁ魔法があれば科学なんていらないってことか?地球はその逆か。


「そして、これは向こうの住人ならだれでも持っているステータスカードというものだよ」


 そう言ったエールの手に握られているのは一枚のカード。


「ステータスカード?」


「君が行く世界ではレベルって概念があってね」


 レベル?……レベル?


「採取や狩りなんかをしたりすると経験値が手に入ってレベルが上がるたびに魔力や体力、他にも記載されてはいないけど筋力や耐久力なんかのステータスがあがるんだよ」


 エールが「面白いでしょ」とでも言いたげにそう語る。

 否定はしないがそれって完全に……


「なに? 俺ゲームの世界に行かされるの?」


「ん~、気持ちは分からなくもないけど別にそういう訳ではないよ」


 苦笑いを浮かべながらエールはそう答える。


「町の外観とかはそれっぽいところも多いけど、地球とかと同じで筋トレや勉強なんかでもステータスは上がるからね」


「まぁ……もうなんでもいいや。続きを頼む」


 『異世界だから』という都合のいい言葉で全部納得してしまおう。じゃないと頭がおかしくなりそうだ。


「えっと、三つめは金貨十枚だね。向こうの通貨で金貨一枚は君のいた世界で十万円くらいの価値があるよ」


「ってことは百万円貰ったって考えればいいのか?」


「まぁ物価の違いなんかもあるけどおおよそはその考えで大丈夫だよ」


「貰いすぎだろ……」


 なんか本当に高待遇だな。ちょっと怖くなるくらいに。

 これあとあととんでもない利子ついてるとかそういうのじゃないよね?

 返せないなら体で払ってもらおうかグヘヘ。とかそういう奴じゃないよね?


「そして、四つ目は……少しかがんでくれるかい?」


 とかなんとか考えているうちにも話は進み、エールにかがむように言い渡される。


「……? これでいいか?」


「あぁ、それでいい。それじゃあ……失礼するよ」


 かがむ俺の額に手を当て前髪を上にあげるエール。

 そしてそのまま前髪の防御を失ったがら空きの額に近づき――優しく唇を当てる程度にキスをした。


「――っ!? んなっ!?」


「ふふ。うぶな反応だね。初めてはまだだったから仕方ないかな?」


 額とは言え突然の美少女(天使)からのキスに動揺を隠せない俺を見て微笑むエール。


「ほっとけ! 俺のでこ処女返せこの淫乱天使!」


 そう、俺はでことはいえいきなりキスされて怒っているのだ。

 いや、ほんとそれだけ。

 ぜ、全然どきっとしたりしてないんだからね!


「むっ。せっかく加護をあげたのに酷い言いぐさだね」


「……加護? どういう意味?」


 でこ処女を奪われ憤慨(?)する俺にエールはまたしてもよく分からないことを言う。


「そのまんまの意味さ。君の身体能力は僕が加護を与えたことでさっきまでの十倍は全ての面で上がってるのさ。さっきのはそのために必要な儀式みたいなものだね。あ、もちろんある程度は意識することで調整が利くようにしてあるよ。そうじゃないと体がもたないからね」


「……他に方法なかったの?」


 いや、だって、ね?

 ちょっと緊張しちゃうでしょ?

 勘違いしちゃったらどうすんの?


「こんな美少女にキスされるなんて男冥利に尽きるってものでしょ? まぁ、僕も君みたいな色男にキスできたんだから文句はないけどね」


「目腐ってんの? 目の前にいる男の顔をよく見てみろよ。色男? 指名手配犯の間違いだろ」


 言いたかないが自分の目つきの悪さは分かってるつもりだ。それを色男なんて冗談にしても質が悪い。

 本気にしたらどうしてくれる。

 惚れちゃうよ?

 ストーカーになるよ?


「いやいや、君は目つきこそ悪いがなかなかの顔立ちだよ。十点中八点はあげてもいいくらいだ。それに僕は君のことならなんでも知ってるよ?」


「そういう無責任な冗談が思春期男子のお花畑な心に大きな傷を背負わせるきっかけを作ることになるんだぞ?」


 『惚れる→告る→怯えられる』まで完全に未来が見える。

 なんならそのあとに『尾ける→捕まる』まで見えるまである。

 捕まっちゃうのかよ。


「いや、冗談では……まぁ言ったところで無駄だね。次の説明に入っていいかい?」


「……あぁ、よろしく頼む」


 なんか釈然としないな……


「僕らからの最後の餞別はいわゆる『ユニーク魔法』だ」


「……は?」


 最後にとんでもない爆弾投下された。

 この子何言ってんの?


「何だい?」


「今ユニーク魔法って言った?」


「あぁ言ったよ」


「それってあれか? なんか小説とかで主人公だけが使えるチート魔法的な感じのあれか?」


「そうだね、それだね」


「そんなもんまで渡してんのか……」


「まぁ具体的には、魔法そのものを一つ使えるようにするか魔法が付与された武器を一つ持って行くかの二択だね。ちなみに武器自体もかなり優れているよ」


 ふむ、なら武器にするのが普通なんじゃないのか?なぜかここまで至れり尽くせりなのに武器はもらえないわけだし。


 と聞いてみると「盗まれない自信があるならそれでいいんじゃない?」とのことだった。


 魔法そのものは持ち主に登録されていないと使えないらしいがそれを除いてもかなり優れた武器なのだ。実際いくつか見せてもらったが凄い奴ばっかりだった。

 一瞬でも気を抜けば盗まれそうだ。


「なら、俺は魔法そのものを使えるようにしてもらおうかな」


「了解。これがリストだよ」


 エールが差し出すユニーク魔法のリストには、『転移』や『心眼』、『未来視』などどう考えてもそれ一つでめちゃくちゃできそうな魔法ばかりが記載されていた。


「ちなみに僕のおすすめは、この『透視』だよ! これ一つで異性の服なんてないも同然さ!」


「それ絶対使い方間違ってるからな!?」


「けど、この魔法を選んだ人間の大半が向こうに着いたらまず通りすがりの異性を透視して歩けなくなるらしいよ」


 ……アホ過ぎる。


 ちなみに大半がそうなって残りの少数は気合いが入りすぎて内臓や骨格を見る羽目になるらしい。

 気持ちが分からないわけではないが、異世界に来てまず最初にやることがそれってどうなんだ?


「まぁ、そもそも向こうで暮らしていく分には身体強化だけで十分だからね」


 ……全能神過保護過ぎない?


「けど、『透視』が気に入らないなら他のを探すしかないね」


「あー、できれば実用性がある奴がいいな」


 生活の中でも使える便利な魔法とかいいよな。


「あ! ならこれなんてどうだい? 魔法名は『夜之野獣』」


「もういいから黙っててくれる?」


 名前聞いただけでどう考えてもろくなもんじゃないだろ。というか誰もそんな実用性求めてねえよ。


 ……本当だからな?

 そんな魔法に頼らなくても俺凄いんだからね!


「もうこの際普通に使えるなら何でもいいか。……っ」


 リストに改めて目を通す俺の体が突然光り出す。


「あ、時間切れだね。とりあえずこれに着替えて!」


「え、ちょ、時間切れ!?」


 言いたいことはいろいろあるがひとまずはエールに促されるままローブに着替え懐にカードと金貨をしまう。


「これほんとなんの素材でできてるんだ?」


「僕の羽を使って作ったのさ」


「――ッ!?」


「冗談だよ」


 笑えない冗談だな……


「というか俺まだ魔法選んでないけど?」


「あー、それなら僕が決めておくよ」


「絶対ろくなの選ばないだろ!」


「大丈夫大丈夫。それより一つ聞いてくれるかい?」


「絶対大丈夫じゃないだろ!」


「――これから旅立つ人の子よ」


「……っ」


 突如今までのふざけた雰囲気がなくなりまさしく天使といった様子で話し始めるエール。

 それに思わず俺は息を呑み黙り込む。


「貴方の行く先に一体何が待っているのでしょう。それは貴方にもまだ分からぬことです。しかし神はお知りになっています。神を崇めなさい。そして祈りなさい。貴方の新しき運命に最良の結果があらんことを…………とまぁこれは異世界に旅立つ全ての人に言ってる言葉を面倒だから端折ったものだよ。要するに神を崇めろって内容だね」


「すごいな。とんでもなくありがたみが薄れたわ」


 というかこの天使のせいで神とか天使に対する評価が既にそこまでは高くない。


「まぁまぁ、そう言わず。僕個人からも君に言っておきたいことがあるからね」


「……なんだよ?」


 まだあるのか、とか思いつつエールの方を向き直る。


「アキ…………ごめんね」


「は? お前何言って――」


 そこで光が一層強さを増し――気付けば俺は見慣れない土地に立っていた。

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