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異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
一章 手放せない日常

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頭になった夜

 何だかんだで俺は盗賊団を率いる頭になった。

 まぁ、この際それはもういい。

 いや、良くはないけど、どのみち避けられないことだっただろうから諦めた。


 それによって俺も安定した生活を得られそうだし仲間と呼べる奴等も得ることができた。

 結果的にはそう悪いことでもない。


 だが、これは解せない。


 俺はなぜ『スープの入っていた皿×20』と『スープの入っていた大鍋』を布切れを使って洗っているのだろうか。


 雑用係になった覚えはないのだが……


★★★★★



 時は一時間ほど前に遡る。




「というか、ここって全員で何人いるんだ?俺何も知らないんだけど……」


 やると言ったはいいが、俺はほとんど何も知らない。


 ならまずはこいつらの事を名前くらいは知っておくところから始めるべきだろう。

 その他のことはこれから少しずつ知っていけばいいとして。


「あ、それなら俺に任せて下さい」


 グレンが手をあげ、そのまま団員を紹介し始める。


「えっと、そもそも俺達は団員のほとんどが血とは無縁の世界で育ってきました。一応、全員に簡単なナイフ術は教えてありますが、人間相手に殺す気でナイフを振れるのは俺を含めて十人です。だから、残りの十人には基本的にアジトの掃除や簡単な治療薬の為の薬草の採取、あとはヘレナのアシストをしてもらっています」


 グレンの言葉と共に団員が二つのグループに分かれる。


 片方は、グレン、メイ、マイ、レイ、彼女ら三人と同世代に見える少年と少女、二十代半ばといった様子の女性が四人、の十人のグループ。


 もう片方は、ヘレナさんと全体的にグレンのグループの女性より大人しい印象が強い女性が九人、の十人のグループ。


 男が一人、女が十四人、男児が一人、女児が四人、の総勢二十人の盗賊団らしい。


「俺たちは戦闘班で、俺、メイ、マイ、レイ、カイ、アイ、アリア、リリエル、リン、リザ、の十人で活動しています」


 グレンが名前を呼びながら一人ずつ指を指していく。

 むぅ、覚えられるだろうか……いや、覚えるしかないな。

 これは、思った以上に大変かもしれない。


 ちなみに年齢はグレンが二十歳。

 メイ、マイ、カイ、アイが十歳。

 レイが十二歳。


 女性の方々は内緒らしい。

 別に隠さなくても十分若くて綺麗だと思うのだが……


「そして、こっちのグループが家事班といったところでしょうか。左からヘレナ、リリー、セラ、エリス、マリー、アネット、ローラ、ソフィ、シャーリー、ハーティ、です」


 先ほどと同じようにグレンが名前を呼びながら一人ずつ指を指していく。

 正直、覚えられた気がしない。

 頑張らないと。

 

 ちなみにグレンが年齢の話に持ち込もうとしてヘレナさんにものすごい目で睨まれていた。

 バカである。


「まぁ……頑張って覚えるよ……」


 お世辞にも出来がいいとは言いづらい記憶力だが何とかしよう。

 そんなことを考えながら俺は皿に入ったスープの最後の一口を口にいれた。


 その時だった。


「さて、全員食べ終わったことですしそろそろはじめますか」


 グレンが言葉と同時に目を細め先ほどまでの落ち着いた雰囲気とは異なる、まるで俺にかかってきた時と同じような雰囲気を纏う。


 それにつられるように周囲の奴等、正しく言えば戦闘班の奴等からも気迫のようなものが漏れ出す。


「……はじめるって…………何を?」


 一体何がどうなっているのか。

 状況の掴めない俺は困惑したまま不敵に笑うグレンに問う。


「俺達戦闘班は基本誰かから金銭を奪うことしかやっていません。それ以外は全て家事班に丸投げしてしまっています。しかし、それではダメだと食後の片付けは俺達が請け負うことになっているのです。故にはじまるのです…………拳と目潰しと平手打ちを駆使した『ジ』ではじまり『ン』で終わる死闘が……」


「…………いや、それただのジャンケンだよな!?」


 なんか勢いにのまれそうになったけど要するに誰が後片付けするかを決めるジャンケンだよな!?


「何を言ってるんですか頭!! ジャンケンを侮っていると死にますよ!?」


「お前らジャンケンにどんだけ命かけてんの!?」


 早速理解できない。

 俺は頭としてやっていけるのだろうか……


「まぁ、やったことがないから分からないんですよ。それじゃあ全員利き手を出して」


 グレンの言葉に戦闘班の面々がそれぞれの利き手を握りしめた状態で前に出す。


「ほら、頭も早く出してくださいよ!」


「え? 俺も!?」


「……頭の強さならてっきり俺達と戦闘班になるのかと思っていたのですが……家事班に入るんですか?」


「え? いや、そりゃ入るなら……戦闘、か」


「まぁ、頭の提案のおかげで今までとはやり方が変わるのでこの二班制も変わると思いますけどね」


 ……ふむ、そうか。


 これからレブルの収入源はギルドの依頼による報酬になる。

 なら、今までのやり方をそのままやるだけでは足りない部分や必要ない部分も出てくるだろう。

 そうなったときのために新しい制度を考えておく必要があるな。


 特に、戦闘班は大きく変わる必要があるよな。

 もう誰かから金品を奪う必要はなくなるわけだから仕事内容が一変する。

 とりあえず、家事班はそのままでいいとして、依頼をこなすための依頼班みたいな感じでいいか。


 いや、戦闘系の依頼以外も報酬や数は少ないだろうけどあるにはあるよな。だとしたら、家事班にもそういう依頼を手伝って貰うか?

 けど、そうすると家事班の仕事が多すぎるよなぁ。

 ん~、難しいな。いっそのこと三班にするか?


 ……まぁ、それはおいおい考えていこう。


 それより今は目の前のことだ。

 とはいえ後片付けではあるが。


「じゃあ、ジャンケンポンのポンで出してくださいね? 後出しはその時点で負けですからね?」


「分かった分かった、そんな本気にならなくても……」


 目に闘志の色を宿しそれぞれの利き手を捻ったり開いたり閉じたりして臨戦態勢の戦闘班の面々。

 一人だけ温度差が激しい。


「ふ~」


 なんか、手の甲にシワ作ったり、組んだ手のなか覗き始めたよ……

 こいつら、どんだけジャンケンにかけてるんだよ……


 願掛けなんて無駄だろ……俺のローブに祈る方がまだ効果がありそうだ。

 というか、早くしてくれ……


「……よし、そろそろ決着をつけるか…」


 各自、満足がいったのかグレンの言葉に頷き再び利き手を前に出す。

 そもそも決着をつける以前にまだ勝負が始まってすらいないのはこれ如何に……


「じゃあ、いくぞ……ジャンケン……」


 はぁ、これでやっと終わる。

 そういやどっかで『パー』を出すと勝ちやすいとか言ってたっけ?

 試してみ――


「ちょっと待ったぁぁ!」


 振り上げられた利き手が降り下ろそうとされたその時、グレンが突然声をあげる。

 なに?早く終わらせたいんだけど……


「全員よく聞いて欲しい…………俺は……チョキを出す!」


「そーゆーのいらねえからっ!!」


 何を言い出すのかと思えば……小学生かよ……

 なんか、こんなのでも頭としてやってこれたなら俺でもいける気がしてきた……


 はぁ……


「よし、じゃあ改めていこう……ジャンケンポン!」


 気合いバッチリで大きく腕を振るう戦闘班の面々。

 その結果は……


「マジか……」


「「「「「ぃよっしゃぁぁぁぁ!!」」」」」


 俺がパー、その他がチョキ。

 きれいな一人負けであった。


「頭! 俺の作戦にまんまと引っ掛かりましたね!」


 うん、とてもいい笑顔だね。ぶん殴ってもいいかな?


 そもそもこいつは誰も自分の言葉を信じて『グー』をださなかったことを嘆くべきだと思う。


「はぁ」


 とはいえ結果は結果。負けは負けだ。

 こうして、俺は後片付けをするはめになったのだった。 


★★★★★



「……まぁ、あれだな。何だかんだで願掛けもバカにはできないな」


 雨がやみ空に満天の星空が広がる下で皿の最後の一枚を洗いながら俺は誰にともなく呟く。


「さて、問題はこいつだよな……」


 後片付けもいよいよ終盤。

 残ったのは全員分のスープが入っていた大鍋だった。

 直接火にかけているからだろうか、底が焦げている。


「これもとらないとダメだよな……まぁ今の俺ならたかが鍋底の焦げくらい簡単に落とせるだろうけど」


 所詮は焦げ。

 身体強化を受けた俺にとっては赤子の手を捻るようなものだろう。

 そう思っていた時期が俺にもありました。


「……やっちゃった」


 現在、鍋の底にこびりついていた焦げはきれいさっぱり取り除かれている。


 ついでに鍋の底もきれいさっぱり取り除かれている。

 赤子の手を捻るどころか引きちぎってしまったらしい。


 ……どうしよ。


「お、落ち着け。今ここにいるのは俺だけ、つまりここで完璧に修復してしまえばこのことがバレることはない!」


 俺は知っているのだ。


 この大鍋がレブルが結成されてから唯一の鍋として団員を支え続けた事を。

 この鍋にヘレナさんが並々ならぬ愛情を注いでいることを。

 だから、このことがもしヘレナさんの耳に入るようなことがあったら……

 考えたくもない。


 あの人は絶対にここで怒らせてはいけない存在だ。


「で、できる……よな? 身体能力が向上されてるならこういう繊細な作業も可能なはず……だよな? とりあえず破損個所の確認を……」


「今日の後片付けは頭ですか? 初日からなんてついてないですね」


 月明かりで破損箇所をもっと詳しく見ようと鍋を持ち上げた俺に今もっとも会いたくなかった人物から声がかけられる。

 誰であろう、ヘレナさんである。

 俺の命運は絶たれたのかもしれない。


「あ、あぁ、そ、そうなんだよ……いやぁ本当についてないなぁ…アハハ…」


「なぜ鍋を持ち上げていたんですか?」


「い、いや、それは、その……あの……」


「なぜ鍋底がないんですか?」


「…………ないほうがオシャレかな~って思って……」


 うん、俺なに言ってるんだろうね。

 それに対してのヘレナさんの反応は、


「明日の食事に毒物が入っていたら残念でしたね」


 満面の笑みでの死刑宣告であった。


「ちょっとそこに座ってくれますか? 正座で」


「え?」


「座れ」


「……はい」


 その後、二時間にも渡る笑顔でのお説教が俺の心に二度とヘレナさんを怒らせることがあってはならないと刻み込んだのは言うまでもない。


 気づけば調理器具一式を新しく買ってくることを約束させられてしまった。

 頭の尊厳なんてものはない。


 ……これはもはや頭と呼べるのだろうか?


★★★★★



「……はぁ、初日から散々だったな……」


 後片付けとお説教を終えた俺は近くを流れる川で水浴びを済ませ一人月を眺めていた。


 綺麗な満月だ。


「満月と色男というのは実に映えますね」


「……お前が言うと嫌みにしか聞こえないな」


 ゆったりとした時間を過ごしていた俺をからかうように話し掛けてきたのはグレンだ。


 そうして笑みを浮かべたまま俺にならうように近くの岩に腰かける。


 川の近くにはいくつもの岩が転がっている。

 その中でも一際大きな岩に腰かけたグレン。


 濡れた髪から流れる水がグレンの頬を伝いそのまま寝巻の中に流れていく姿は満月の月明かりと相まってとても絵になる。


 これが水も滴るいい男という奴か。

 男の敵め。


「で? 何しに来たんだ色男? 用がないならさっさと帰れ色男」


「あれ? なんか冷たくないですか?」


「イケメンが生理的に無理なんだ。許せ」


「ちょっと前まで普通だったのに!?」


「突発性の病なんだよ」


「聞いたことありませんけど!?」


 もう夜なのに元気な奴だ。

 オーバーリアクションでツッコミいれてくるグレンはとりあえず無視して話を戻すか。


「で? 本当に何しに来たんだよ?」


「いや、別にこれと言って用があったわけじゃないんですけど…」


「じゃあ帰れよ」


「さっきから酷くないですか!?」

 

 静かな夜に響くグレンの叫び声。

 風情ぶち壊しだな。

 あ、そういえば……


「やることないなら魔法教えてよ」


「へ? 魔法ですか? 別にいいですけど……」


「ありがと、じゃあ頼む」


「はい。ではまず、頭の適性属性が何か教えて下さい」


「……?」


 ……適性属性って、なに?

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