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第3話:うわさ

 隣の部屋では、藤堂平助が黙々と愛刀の手入れを続けていた。

新八はその隣に荒っぽくどかっと座った。

「どうでした?」

「あまりの馬鹿馬鹿しさに声もでん!敬語が上手く使えたかどうかーだと。そんなもんどっちでもいいじゃねえかっ。」

あまりの剣幕に平助は刀を落としそうになる。

「まあまあ。たいしたことなくて良かったじゃないですか?」

「それはそうだが・・・。」

ポンポンポン・・・。平助の刀のさび止めの粉をつける音だけが部屋の中にこだまする。

 しばらくして、新八が口火を切った。

「ああ、そうだ、知ってるか?あの総司に女がいるらしいぞ。」

「ええっ?!それ本当ですか?」

平助は再び刀を取り落としそうになった。

「ああ、この前左之が総司に頼み込まれて買い物に付き合ったらしい。左之の奴、めちゃめちゃ興奮してたぜ。」

「一体何の買い物だったんですか?」

「女物のかんざし、だとよ。」

「えーっ。信じられません。だってあの人、島原行ってもどこも入らずにドロンと消えちゃうじゃないですか。それお姉さん用じゃないんですか?」

「いや、女といるのを斉藤も何度も見ているらしい。あいつ、口が固いから全くそんなそぶりも見せてなかったがな。」

「それにしてもなんで原田さんなんかに同行頼んだんですかねえ。もう組じゅう誰も知らない人がいないほど広まっちゃいますよ〜。」

「他の奴はともかく、近藤さんと土方さんがなんと言うか・・・だな。」

「誰が何を言う―だ?」

まさかの意外な声に思わず振り返る二人。

そこには外から帰ってきたばかりの土方歳三が立っていた。彼は所用で数日屯所に帰っていなかった。

だからますます自分のことが話題に上がったことが不愉快らしかった。

(ああ・・・また眉間にしわがよってるよ・・・。)

 二人は顔を見合わせた。おそるおそる平助が答える。

「あの・・・多分驚かれると思うんですけど、沖田さんに―。」

「女がいるって話だろ。」

ズバッと言い放たれて困惑する平助。

「なんでそのこと知って・・・?」

「さっきそこで原田から聞いた。総司の奴、勝手に・・・許さねえ。」

本気の怒声に新八が慌てる。

「いやちょっと待て、土方さん。総司だって男だし、女の一人や二人いても全然おかしくないだろ?むしろ自然じゃ?」

歳三はキッと鋭い目を新八に向けた。

「俺が怒ってんのはそんなことじゃねえ。女の四、五十人くらいいて当たり前だ!」

(いや・・・それは言いすぎ・・・。)

「あいつ、なんでよりによって原田なんか誘いやがった!」

「は?」

「何で先に俺に一言もない!俺が怒ってんのはそのことだ!

あんのヤロー、帰ってきたらぶっとばしてやる!」

唖然とする二人を尻目に歳三は荒々しく隣の部屋に行ってしまった。

・・・しばらくして隣の部屋から近藤局長の涙声と歳三の怒声が響き渡ったのであった。


「・・・こんなんで、組、大丈夫なんでしょうか?」

「・・・俺に聞くな。」

そして、新八と平助は大きなため息をつくのであった。 

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