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創設の放旅者 ‐‐ 復讐 ‐‐  作者: 滝翔
序章 悉無律の正義
3/21

父と母の国3 あなたの思想


メルヴァがここに来て ハルラが初めて涙を流した

その今までに見せない姿をじっと見つめる


「これから仲良くなれると思ってたのに……… なんで……」


「……………」


メルヴァはそっとハルラを抱きしめる


「辛かったね……」


「っ………!!」


「ごめんなさいね…… こんな奴隷が…… でも 私達でもわかる 

あなたはこの国の為にいつも泣かなかった」


「うぅ…… うぅぅ……!」


「今ならあなたを信じれる…… だって こんなにも温かいんだから……」



ーーメルヴァの手の温もりを感じる メルヴァの頬の温もりを感じる


ハルラも抱き返し 二人の時間を泉から湧き上がる魔蛍達が見届ける


「…………綺麗」


何種類もの魔蛍が宙を舞う


「あぁ…… いつ見ても綺麗だ」


「ここが争いの無い場所なのですね……… 魔蛍が言っている ここには憎しみが無いって」


「!!? 魔蛍がそう言っているのか?」


「えぇ…… 魔蛍もちゃんとした生き物ですよ」



日の出と共に二人は国へ戻った

ハルラは王宮へ メルヴァはそのまま職場へと


ーー体力のあるお人だ


去り際にメルヴァはこっちを向き そしてハルラに向けて満面の笑みを見せた


ーー!!?


ハルラの中に今までなかった何かが胸をざわつかせる 瞬間だった







そしてまた日常が始まる


「おい! アバルトはどこいった!!」


仕事をほったらかすアバルトは職人達の目を盗んでよく逃げ出していた


「あの野郎~~!! まったく!」



農園が一望できる草原にアバルトは寝転がる


「よっ! どうした?」


「っ!! ハルラ様!!?」


国の見回りに来たハルラは寝転がるアバルトの隣に座る


「仕事が辛いか?」


「…………この国は居心地悪い」


「…………そうか すまない」


落ち込むハルラに アバルトは慌てて起き上がる


「ちっ…… 違うんだ!!」


「え…?」


「……………何て言うかさ 俺がこうやって逃げてる時 面倒見てもらってる奴等が噂するんだ

〝 アバルトの野郎…… いつも逃げやがって 〟

〝 困った奴だ…… もっと俺がしつけねーと自立出来ねーぞ! 〟

〝 そういやあんた あいつを跡継ぎにするとか言ってたね!! 〟」


アバルトは顔を隠し ハルラはその心情を悟り農園をただ見る


「あいつら……… 俺を奴隷だと思ってねぇんだ……!! なんで…… なんで……!!」


「そうか……」


「心が痛ぇよ! 変人ばっかじゃねーか!! あなたの国は!!」


「そうだな………」


アバルトを連れ 職場に戻る

怒られながらもアバルトはまた親方の後を追う


ハルラは見送った後 国の見回りを続行する


街中を歩くと 裏路地にある酒場に行きつく

ウェスタンドアを手前に引き中へと入る


「おや王子……… 真昼間からお酒ですか?」


「昼から店を開くアルトラも人が悪い…」


ハルラは国産の茶葉でブレンドした紅茶ミルクを頼み 店内を見渡す


「すまないな…… ここのマスターが死んで… あなたが店を継いでくれて良かった」


「酒場などこの国に数多くあるのに…… 思い入れでもありましたのかな?」


「フッ…… ここに来ては何度も語るがな…」


「シャトー・ディオを生み出した張本人ですよね…… しかしこの国の人達ですら誰も知らない」


「事情が事情だからな…… 仕方ないさ」


ハルラは紅茶ミルクを飲みを干し おかわりを頼む


「まぁ私は折良く本を読むのが好きでして…… こうして客がいようがいまいようが退屈はしておりませんので…」


「ほう! それは感心だな!!」


ハルラに褒められたアルトラは密かに照れ隠す動作をとる


「歳のせいかもしれませんが…… 奴隷の時からやりたこともあったんです」


「なんだ? 言ってみろ」


「人に知識を与える人になりたい…… 狭い世界を見てきた私は

〝君達は不自由の無い場所に生まれてきたんだ〟と子供達に実体験などを交えて

たくさんの事を伝えたいですな」


「良いじゃないか…… 教育ってやつだな! 

この国の幼児達にもそういうのが必要だと前から思っていたところなのだ!!」


「それは有り難い! ぜひ私に教員の資格を」


二人だけの店内に明るい空気が流れ ハルラは紅茶ミルクをおかわりする


「して…… そなたはどういうのを教えたい?」


「…………そうですな~ 言語もそうですが…… 歴史も伝えていきたいです」


「歴史………」


「えぇ…… 遥昔に活躍したとある〝騎士団〟の話とかですかね」


「!!?」


ハルラはその話に驚きを隠せずにいた


「なぜそなたがその話を知る?」


「ここのマスターがその本を残していました」


「………あぁ そうか……」


何かを隠すハルラに アルトラは疑問を持つ


「数ある本は私を魅了した 本は全部ここの亡くなったマスターがお書きになったんですよね?」


「あぁ…… だが全部妄想なのだ…」


「そうでしたか…… なら尚更興味深い」


「なんだと?」


「妄想にしては今の時代に繋がる辻褄が合っている とても合理的な話だ」


「…………」


ハルラは飲み進む紅茶を止める


「人は…… 何かを隠したがる生き物だ 今の俺のようにな」


「…………そうですな」


「アルトラ…… お前の言うその夢 絶対諦めるなよ……」


「え?」


止まった腕を動かし 紅茶ミルクを一気に飲み干す

カップを置く皿の隣に代金を置き 立ち上がる


「俺が隠しているのは この世界全ての隠し事だ それだけ触れてはならないという意に抑え込まれる」


「……………」


「だが歴史を失ってはいけない…… それは俺も思う

だから…… お前の夢は俺の夢だ! ついて来いアルトラ!!」


「言われなくても この命はあなた様のものです」


ハルラはアルトラと握手を交わし 気分良く店を出た



ーー各々に思想や夢 願いがある それが俺も背負う…… か……

我ながら重いモノを数多く背負ってしまったな……


アレス王国 あの国の未来図だった世界をも私が実現しなければ









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