表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創設の放旅者 ‐‐ 復讐 ‐‐  作者: 滝翔
序章 悉無律の正義
2/21

父と母の国2 共闘の意思


ーーフランバッカスは 私達奴隷が笑って外を歩ける国だった

奴隷と知りながらも笑顔で挨拶してくれる国民達

仕事も優しく教えてくれた 農業を営むおばちゃん達の笑顔 どれほど心が癒されたか


「メルヴァ! こっちの葡萄ももいじゃって!」


「は はい!」


メルヴァだけではなく 他の奴隷達も各々職場に就き精を出す

宮殿から下りて来るハルラもその活気ある奴隷達を見て満面の笑みを浮かべていた



そんなある日 決まった期日に大国の使いが来た 領界内の国の調査だとかだ


「全員! 足の枷は付けたか!!?」


「鎖で繋ぎました」


水平線に顔を出す船がこの行事の合図


「ハルラ様!! 子供等が今山から下りてきてまだ枷を取りつけてません!!」


「えぇい!! 一人二人くらいいいだろ! 枷ごとき!!!」


「大国の方にバレたら事ですぞ 王!!」


ハルラを叱るカリオス その二人の光景をクスクス笑う奴隷達


「こらこらお前等! もっと絶望しろ絶望!! もう未来が無いようなそんな顔をしろ!!」


ーー未来があると信じていいんですね


奴隷の誰もがそう捉え笑いが絶えなかった



港に大型船が錨を海に沈め ファミリアフォードットの役人が船梯子を渡る

国民は当たり前のようにお辞儀をする その奥から国王とハルラがやってくる


「いつ見ても綺麗ですなぁ~ここは! ねぇベルネット様」


「あぁそうだな…………… てか眠い」



「ようこそフランバッカスへ! 本日はご足労いただき 国を挙げて歓迎します」


首都グレイツブリトンの周囲を守る隣国の王達

〝 ルシファード教の七天使 〟と言われる人物達の一つの柱 



〝能天使〟ベルネット・エクスシア 




その若さで大国の直下王制の王位を継いだ

そして 守護神を宿しているとか


「こちらへ… 王宮へ護送しましょう」


ベルネット達は馬車に乗り王宮へと向かう その後ろを国王とハルラが護衛する


「ハハ………! 見ろ 奴隷達が列を作って歩いてやがる!!」


「奴隷を蔑む時だけはその笑顔を作りますねぇ」


「人を人以下の生物に成り下がっている その証拠があの枷と繋がる鎖 実に気分が良い」


馬車の通るすぐ傍で列を作り荷物を運ぶ奴隷達 その絶望しきった顔にベルネットは興奮する



王宮で一晩

その夜はベルネットを囲む宴会が開かれた

高級な酒に高級な食材で出される料理 ステージでは奴隷達が休むことなく踊る


「うん美味い! シャトー・ディオは僕も気に入ったよ!」


「眠気が過ぎたようで…… 楽しんでいただけて満足です」


楽しげに酒を飲み進めるベルネットに酒を注ぐカリオス

その隣で話を聞くハルラ

そんな中ベルネットの側近が近づいてきた


「この国は問題がありませんな…… 十分に大国に貢献されておる」


「有り難きお言葉」


「だから僕は来なくて良いと言ったんだ…… 面倒くさい……」


「そう言うわけにはいきませんベルネット様…… ましてや今が慎重になるときですぞ」


「何かあったんですか?」


カリオスの質問に側近は深刻そうに話す


「奴隷制の廃止運動ですよ……」


「「 ………… 」」


「革命軍問わず 今領界内でその動きが僅かに確認されているんです」


「そんなことが……」


その側近の話にベルネットも食べながら便乗する


「そう言えば~~ あの発展ホヤホヤの国は当たりだったな~~」


「発展ホヤホヤ?」


「そ! アレス王国」


「!!?」


「あそこも奴隷を放し飼いしてて躾が悪かった 最近の流行りにでもしようとしてたのかな~~……

新しいモノを作るのは良いけどさ 逃げたらどうすんの~~って話だよね~~ んっっね!! ハルラ!?」


「そうですね〜 金で買った者なのにですよね~~」


ベルネットとの会話にハルラは顔色変えずに相槌を打つ


「で その国はどうなさったのですか?」


「この前消したよ〜 俺の力で」


「……………そうですか」


「今廃虚で古城みたいになってるから見て来るといいよ!」


「ハハハ! それは楽しそうですね!!」



ーーアレス王国が…………







夜が明け ベルネット等の船は陸を離れる


「またなハルラ! 王位継いだらたまに遊びにこいよ!!」


無邪気に手を振るベルネットにハルラも笑顔で振り返した


その船は水平線を越えて見えなくなり 国民達はまたいつもの生活に戻る


国王も城に戻り

そしてハルラは地下室へと向かった


「間者はいたか?」


「いえ…… 大丈夫です」


地下室に集まる奴隷達がいる部屋に入る そして


「クックック……」


「フフ…… アハハハ!」


そのせせら笑いは次第に大きくなり その笑い声は一つになる


「「「「「 アーハハハハハハハ!!!! 」」」」」


「やりましたねハルラ様」


「あぁ! 皆の絶望顔も良かったぞ!!」


「アバルトなんて緊張で腹下して 普通に絶望顔だったしな!!」


「馬鹿!! 言ってんじゃねぇ!!」


明るくなる地下室の中 ハルラはその笑顔を止め地上に出ようとした


「じゃあ後は任せたぞ 各々部屋へ連れてってあげてくれ」


「…………わかりました」


人知れず地上に出ようとするハルラをカリオスはじっと見つめる

そんな二人を 喜び合う奴隷達の中にいたメルヴァも見ていた


ーー………??




日が沈む頃 ハルラは王都から離れた森に入る

道なき道に足を迷い込ませさらに進む その後ろを人影が後をつける


奥へと進むと 


「わぁ……」


つけてきたその者は自然に声が出てしまった


目の前に湧き出る小さな泉 その美しさと透き通る水の色がその者を不思議な空間へと誘う


「誰だ?」


ハルラは振り向く 


「…………メルヴァ」


「こんな場所あったんだ…… 何かすごい場所なの?」


「いや別に…… ただここがこの国で一番綺麗な聖水だ」


泉の前に座るハルラの隣にメルヴァも座った


「…………良い顔だな」


「は?」


「今 泉を見てるそなたのその顔だよ」


メルヴァは水面に映る自分の顔を見た途端 初めて気付いた


「私は……!!」


「ウォード族……… だったな?」


「……………」


「少し前にお前が話してくれた…… すまないがその種族は聞いたことも無い」


「……………」


「君のことをもっと知りたかったが…… 無理やり聞くような話ではないな」


「……………あなたも楽しい思いでここには来てないよね?」


「っ…………!!」


今度はハルラが黙る そのさっきとは違う彼の表情にメルヴァは視線を泉に向ける



「一つの国が滅んだ……」


「え?」


「アレス王国 その国の国王は俺と同じ歳で 俺と同じ思想を持っていた………」


ハルラの目に涙が溜まる


「俺と同じ想いで 国を立ち上げ 世界を変えようとしていた!!

平和の本当の意味を探したそんな奴だった!!!」








〝 ハルラ様 あなたはこの世界 どうしたいですか? 〟


〝 そうだな…… とりあえず人種平等かな? 〟


〝 ……………とりあえずですか 〟


〝 何か悪いか? 〟


〝 いえ………  俺は 俺の思想は〝 奴隷解放 〟それだけです 〟







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ