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創設の放旅者 ‐‐ 復讐 ‐‐  作者: 滝翔
序章 悉無律の正義
1/21

父と母の国1 人と人


七大国ファミリアフォードット領界内


表向きは葡萄が原料で作られるワインが有名

そしてまた表向きで盛んな奴隷商売は領界内の特権

島から湧き出る清水により造られるワインは七大珍品にも認定されるほど

ここは聖水の都 汚れなどは無いと言われた王国【フランバッカス】 


港から入る町の風景はまさに平和を主張し 国民全員が笑顔で目の前を横切る

それを満足げに見渡しながら一際目立つ王宮に向かって歩く一人の男


「王子!!」


呼ばれたその男は振り向き 笑顔で返す


「報告は聞いた 世界七大珍品に殿堂入りしたそうだな!!」


「はい! 〝シャトー・ディオ〟はこの先 この国の支えになります」


「わかっている 生産費を増やそうではないか」


王子と呼ばれるその男の言葉に国民達は深々と頭を下げて活気良く仕事に戻り

男もまた目の前に建つ王宮に向けて足を運びだした





王都バッカナール 玉座の間


「戻ったかハルラ………」


「えぇ父上…… 何とか」


ハルラは椅子に腰かけ 出されたミルクが入ったコップを手に取る


「して例の密談はどうだった?」


「どうもなにも…… おやじ共の愚痴だけだよ」


「やっぱりか………」


「それに比べて新参のアレス王国の国王は大したもんだ 腐った空気に逆らい戦おうとしてる」


「ゼルか…… 無人の孤島からよくあそこまでの国を立ち上げたものだ」


ミルクを飲み干し ハルラは席を立つ


「部屋に戻るのか?」


「今日はもう休むよ………」


ハルラは玉座を離れ部屋に戻った

そして机の前に置かれた紙を不意に見る


「奴隷輸入リスト……」


ーー人間が商品か……


ベッドに寝転がりしばらく天井を見ていた

これからの国の事 王子として


ーー王子として これからの国の王として何が出来る?



物思いにふけっていると ドアから静かにノック音が鳴る


「ハルラ様 例の奴隷達は指示の通りに……」


「わかった……」






船着き場の倉庫 

その奥の扉を開くと地下に繋がる階段がある 数人しかわからない秘密の場所だ


「準備は整ってるな? カリオス」


「はい……」


階段をゆっくり下り 地下で待っていたのは


「………こんなに集まるとはな」


「一人でも多く集めるのがあなたの思想 私達もがんばっております」


二人の目の前に集まるのは 枷に結ばれ束ねられた奴隷達だった


「よし……… じゃあさっそく」


ハルラは奴隷達に不気味な笑みを見せると同時に 

扉の後ろから数人の男たちが大きな荷物を持って入ってきた


「「「「「 っ………!! 」」」」」


荷物に被せてあった布を取ると共に奴隷たちは絶句する


「食え!!」


全員分あるであろう水と食料が用意されていた


しかし 奴隷たちはすぐに手を伸ばすはずもなく

そんな中ハルラは大声で言った


「お前達はこれからこの国の労働力になるわけだが……

報酬は払うつもりさ 人と同じ扱いもして当然」





「なぜ…… そんなことを……?」



奴隷の一人が問うた



「理由なんてものはない 同じ人間だからだ」



ハルラは満面の笑みでそう答えた

その言葉に奴隷全員が混乱しだす


罵られて当然 下に見られて当然 人として生きることを諦めていた


そんな中で言われた〝 同じ人間 〟


「…………」


一人の奴隷がパンに手を伸ばす

すると ハルラがその手を強く握った


「!?」


「名を言え!」


「え………? ア… アバルト…… バルサモ・アバルト」


「よし!」


キョトンとしたアバルトに屈託ない笑みを見せるハルラ

そして次々と取ろうとする奴隷達一人一人に名前を聞いて回る


「全員の名前を聞いてどうするつもりですか?」


一人の奴隷が聞いた


「お前は確かアルトラ・ティーチだったな?」


「はい……」


「どうもこうも民の名前を聞いて何が悪い?」


「!!?」


「それに自己紹介は常識だぜ?」


ハルラはそう言って名前を聞いてない奴隷のもとへと走っていった


「不思議な人だ」


「私も未だそう思っています」


アルトラの隣にカリオスがやってきた


「この領界内にあのような人格者がいるとは………」


「大国に仇なす行為ですが…… 」


「??」


「私は現国王と同等 あのお方にも未来永劫お仕えしたいと思っています」


「…………器が知れますな」





ハルラは一通り挨拶を交わし終える

しかし 遠くで食べ物を口にしない奴隷がいた


「食べねぇのかい?」


「…………!!!」


差し出された食べ物をその奴隷は拒否し ハルラのその手を弾いた


「…………」


その場にいる全員が二人を見る


そんな中でハルラはその奴隷の頬を引っ叩いた


「ハルラ様!」



「食べ物を捨てていいのか!?」


「………!!!  人殺し……」


「何だと!?」


落ちた食べ物を拾おうとしたハルラの頭をその奴隷は足で踏みつける


「いい気味だ!! 一族の苦しみはこんなもんじゃないけどな!!」


「………」


ハルラはそのまま拾った食べ物を口の中へ入れる


「何っ!?」


「あ~~ 美味い美味い……」


その足を優しくどかしハルラは立つ


「人種は共同 差別も公共 そしてまた一人 また一人と人は忘れ去られていく」


口から出るハルラの言葉に奴隷はさらに怒りを増す


「何が言いたい!?」


「お前らの種族を可哀想と思う…… そなたを〝含めて〟な…… そう思うよ

そしてお前らは形振り構わず俺等を憎む」


「っ…………!!」


「責任を持たなければならない…… 俺だけじゃなくても……

これから俺がすることを我慢して観ててくれないか?」


奴隷は返すことなく黙り込み その場に背を向けながら座る

ため息をつきながらもハルラは他の奴隷達の下へと向かった


「皆にも同じことを言う 俺がこれからすることを観ていてほしい!!」


「何をする気なんですか?」


アルトラが問うた




「 〝奴隷制の廃止〟 自由平等な世界の創設だ!! 」




その場が凍り付く それをしようとする者が目の前に現れたのだから

アルトラ アバルト その場にいる奴隷達全員が微かな希望を秘めた瞬間だった


それは遠くで座る奴隷も同じだった

ハルラはその奴隷に今一度近づく


「名前を聞こう 恥ずかしい名前など付けられていないだろうからな 無理にでも聞くぞ?」


「…………メルヴァ」


「そうか…… しかと覚えたぞ!」






これが俺の父と母 ハルラ・ラウール・カーディオとメルヴァ・ウォードの出会いだった






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― 新着の感想 ―
[良い点] おおなんと!ラウルの父ちゃん母ちゃんか?! 本編連載再開までの間に楽しんどきます(`∇´ゞ
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